立花裕美子さん

移住コーディネーター立花祐美子。最高の「つなぎ屋」が下川を強くしなやかなまちに

2021.06.23

近年、20~40歳代の働き盛りを中心に、地方への移住に大きな関心が寄せられています。

しかし、移住に対する不安や情報不足が多いのも事実。そこで今回は、北海道北部に位置する下川町で移住コーディネーターとして活動する立花祐美子さんにスポットを当て、下川町の魅力をご紹介するとともに、立花さんの想いをお届けします。

立花祐美子(たちばな・ゆみこ) 北海道出身。2児の母。趣味はコケ玉づくり。道内各地で金融機関や大手メーカー等で勤務。複数の職業を経験し、豊富なキャリア経験を持つ。結婚を機に、2003年に下川町に移住。移住スカウトサービスSMOUT(スマウト)では、さまざまなプロジェクトを企画している。移住コーディネーターとして、絶賛活躍中。

やりがいのある仕事を求めて

移住定住コーディネーター 立花祐美子さん オンライン取材の様子

今回の取材はオンラインで行いました

北海道LikersライターTatsuya.K:立花さんはさまざまなご職業を経験されたあと、現在は北海道下川町を拠点にされています。下川町へ移住するに至ったきっかけを教えてください。

立花さん:実に普通のきっかけで、結婚を機に移住しました。もっとドラマチックなきっかけが良かったのですが(笑)

北海道LikersライターTatsuya.K:そうなんですね。移住する前はどのようなお仕事をされていたんですか?

立花さん:金融機関や大手メーカーに勤務していました。給料はいいけれど、個人の裁量権がなく、“大きな組織のいち歯車”という感じで、面白みが感じられなかったんです。もっとやりがいのある仕事がしたいと思っていました。

それからは、下川町の近郊でいくつかの職業を経験しました。観光関係や小さな印刷屋さんでも働きましたが、大手企業じゃあり得ないくらい裁量権があって、責任は重大だけど、やりがいは半端じゃなかったです。今では、そんなやりがいを感じられる仕事しかできない体になってしまいましたね(笑)

北海道LikersライターTatsuya.K:下川町の移住コーディネーターのお仕事はいかがですか?

立花さん:下川町には面白いなと思ったことに挑戦できる風土や環境があるので、どんどんチャレンジできるこの仕事はとてもやりがいがありますよ。下川町に移住する前は、やりたいことがたくさんで……というタイプではなかったのですが下川町に来てやりたいことが増えたと感じています。すべてやるには、体が足りないくらいです!

「日本一なじみやすいまち」下川町の魅力と課題

針葉樹の伐採を行う林業の現場

針葉樹の伐採を行う林業の現場

北海道LikersライターTatsuya.K:下川町に移住されてから18年とのことでしたが、立花さんが感じる下川町の魅力と現在抱えている課題について教えてください。

立花さん:下川町を語る上では“サステナブル(持続可能性)”がキーになってきます。たとえば、計画的に木を切っては植えて育てる“循環型森林経営”は約70年前から行われています。これにより、はげ山をつくらないというだけでなく、安定的な木材の供給や雇用の確保が実現されます。また、SDGs(持続可能な開発目標)を取り入れたまちづくりにもいち早く取り組み、『第1回ジャパンSDGsアワード』では、最高賞である内閣総理大臣賞を受賞しています。町民が主体となり下川町版SDGs(2030年の下川町のありたい姿)を策定するなど、まち全体で取り組みを進めています。

下川町の風景

下川町の風景。まちのスキージャンプ台から

そして、私が一押しする下川町の魅力は、町外から集まってきた人たちを“受け入れる土壌”ができていることです。これは昔から移住者が多いことも関係していて、“日本一なじみやすいまち”といえるくらいです。田舎町では「よそ者を受け入れない」という風潮がありますが、下川町はその反対。移住してきた人に対して「来てくれてうれしいよ」「何かやりたいことがあるなら応援するよ」などの声掛けをしているシーンをたびたび目にします。ハード面では即日入居できるような家があり余っているわけでもないし、移住したら〇〇万円などの補助があるわけでもないけれど、町民の精神面では受け入れの態勢が万全なんです!

一方で、下川町は、人口減少によってプレイヤーが不足しています。町内にも仕事はたくさんありますが、働き手や後継者がいないことが課題。解決すべき地域課題もゴロゴロころがっているけど、それらを解決するプレイヤーが足りないのです。まちのポテンシャルは高いので、プレイヤーがいればできることはまだまだたくさんあるし、もっと面白いまちになっていけると思います。

移住者と町民、下川町と外をつなぐ「つなぎ屋」

北海道LikersライターTatsuya.K:プレイヤー不足を解消するのが、立花さんの仕事なんですね。移住コーディネーターとしてどのような活動をされているか教えてください。

立花さん:主に、移住のお手伝いとアフターフォロー、まちのPRや起業家の伴走支援、最近は北海道全体の移住を盛り上げるイベントを企画しています。

北海道LikersライターTatsuya.K:幅広い活動をされているんですね。“アフターフォロー”というのは具体的にどのようなことをされていますか?

町民交流会『タノシモカフェ』の様子

町民交流会『タノシモカフェ』の様子。一番右の宴会部長が立花さん

立花さん:月1回のペースで町民交流会『タノシモカフェ』を開催しています。平均30人、多いときでは50人を超える参加者が集まります。移住してくる人も、まずは『タノシモカフェ』を利用する流れができあがってきました。

それから、町民交流会とはいうものの移住検討者や旅行者も参加可能なので、移住者と町民のみならず、町外の人と町民がつながる場にもなっています。

北海道LikersライターTatsuya.K:『タノシモカフェ』をつくったきっかけはありますか?

立花さん:私がこの仕事についたばかりのころ、小さな子どもを連れた家族が目の前でまちを出ていきました。その家族は移住してきてからまちになじもうと頑張っていたのですが、当時の下川町には移住者が気軽に参加しやすい場がなかったんです。町民が意地悪だったわけではなく、移住者に開かれた場があまりなかった。そこで、「ないなら作るしかない」と思い町民交流会を作ることにしたんです。

年度途中かつ私の思い付きではじめたから、もちろん予算はゼロ。お金がなくても持続可能な形を模索して企画書を作り上司に交渉しました。そこで考えたのが、各自が食べ物・飲み物を持ち寄るポットラック形式です。また、はじめましての人同士でも交流がはかれるように、共通点のある人同士が近くに座れるような席替えをしたり、ときにはワークショップのようなものを組み合わせたりしながら、4年以上継続的に開催してきました。最初のころは参加者が7人くらいってこともありましたね。私の友達に参加をお願いしたこともありました(笑)

北海道LikersライターTatsuya.K:そのような取り組みもあり、下川町の受け入れる土壌が育ってきたのですね。移住コーディネーターとして活動するうえで、大切にしていることを教えてください。

町民のみなさんと

町民のみなさんと

立花さん:一番大切にしているのは“つなぎ屋”になることです。移住者が暮らしやすくなるように、やりたいことを実現できるように、町民とつなげる。ときには町外の人と町民をつなげる。そのためには、まず自分が多くの人とつながっている必要があるので、自分自身のつながりも大切にしています。

私のつないだ人たちが私のいないところで仲良くしていることを耳にすると、何ともいえない喜びがありますね。今後もそれぞれが活躍するために必要なフィールドをつくるためのサポートをしていきたいです。

思い描く下川町の未来図

町民主催の朝ごはんイベントの様子。立花さんお気に入りの一枚。

町民主催の朝ごはんイベントの様子。立花さんお気に入りの一枚。

北海道LikersライターTatsuya.K:最後に、立花さんが思い描く下川町の未来を教えてください。

立花さん:下川町はさらに面白いまちに成長していくのではないかと思っています。まちを動かすプレイヤーが増えていき、時代の変化に対応していけるまちでいつづける。新しく来るプレイヤーがどんどん活躍できるフィールドを作りながら、これまでのプレイヤーたち自身も変化・成長していく。今は私の世代がその中心にいるのかもしれませんね。柔軟でありたいです(笑)

将来的には周りの町に通じる道が寸断されても、生きていけるようなまちになったらいいですね。もちろん、町外との関係は切っては切れないものですし、壁をつくりたいわけではありませんが、そのくらいに人もお金も食もすべてにおいて自立した“強くしなやかなまち”になれたら怖いものなしだと思っています。そのために今私にできることはプレイヤーを呼び込むこと、それに尽きますね。

 

―――下川町内と町外を“つなぐ”活動を続ける立花さん。取材中、終始笑顔を絶やさないその姿に、立花さんのまちづくりへの自信と希望を感じました。最高の“つなぎ屋”立花さんとその仲間たちがつくる“強くしなやかなまち”下川町。そこにはどんな景色が広がっているのでしょうか。

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