ノースコンチネント 川畑さん

有限会社北大陸・川畑智裕。ここでしか味わえない「道産肉の美味しさ」を札幌から根付かせる

2022.07.10

灼熱の鉄板の上でじゅわ~と焼きあがる肉厚のハンバーグ。その日の気分に合わせて選べるお肉とソースのバリエーション。

ここ、北海道には選んで楽しい、食べておいしいハンバーグ屋さんがあるんです。その名も『North Continent(ノースコンチネント)』。札幌市内に2店舗を構えるハンバーグの専門店です。“お肉の個性で北海道を旅する”をコンセプトに、北海道産の厳選したお肉を使用したハンバーグを提供しています。

今回は、札幌市民にはもちろん、観光客にも人気があるハンバーグ専門店『North Continent(ノースコンチネント)』を展開する『有限会社北大陸』代表取締役社長の川畑智裕さんにお話を伺いました。

川畑智裕(かわはた・ともひろ)。1976年生まれ。札幌市出身。『有限会社北大陸』代表取締役社長。札幌市内のホテル勤務後、複数の飲食店を経て2006年に『有限会社北大陸』を設立。趣味はキャンピングカー。

「お肉の個性で北海道を旅する」北海道産ハンバーグ専門店は時代のうねりと気づきから生まれた

北海道LikersライターTatsuya.K:『North Continent』は“お肉の個性で北海道を旅する”をコンセプトに掲げる北海道産ハンバーグ専門店です。お店の特徴を教えてください。

川畑さん:こだわっていることはたくさんありますが、“オーダーメイドにカスタムできるハンバーグ”であることです。季節によって異なる5種類のお肉と8種類のソースのなかから、お肉とソースの相性や季節を感じるソース、好みの食感やお腹の減り具合に合わせて、自分好みのハンバーグをつくれます。

北海道LikersライターTatsuya.K:ハンバーグのお店でもお肉の種類を選べるのはなかなかありませんね。

川畑さん:あとはもちろん“ハンバーグの味わい”です。ハンバーグには牛、豚、鶏、鹿、羊といった北海道で育ったブランド肉を使用しており、店舗の営業から独立した自社工房で衛生的に・長年培った食肉加工技術でていねいに仕上げています。

北海道LikersライターTatsuya.K:いろいろな種類のお肉を扱いながらもブランド肉を使用することにはこだわりがあるのでしょうか。また、実際にいただきましたが、目の前の鉄板でお肉を焼き上げる演出も他のハンバーグ店にはあまりないように思えました。こういったスタイルを採用した理由を教えてください。

川畑さん:ハンバーグのお店をやろうと思ったときに、自分ひとりで最大限の価値を提供できる方法は鉄板焼きだと思いました。鉄板は場所によって異なる温度になっているので、それらを使い分けることで多くの調理工程を目の前の鉄板のみで完結できるんですよね。最初に取り組んだ、“生産性の向上”が鉄板焼きスタイルの営業です。

ブランド肉を使用することにしたのは、鉄板焼きについて学ぶため、鉄板焼き屋で働いていたときがきっかけです。鉄板焼き屋ではお肉の中でもスジの少ない良い部位(ヒレ、サーロインなど)のみを提供します。これは全体のお肉の16%ほどと言われているんです。一方で、1頭400kgにもなる牛のかなりの重量分が、他の牛肉と混ぜられ、国産牛ひき肉として市場に出回ることが多かったんです。でも、試しにブランド牛の裾もの(モモやスネなど)のみのひき肉を食べてみると、一般的に出回っているひき肉よりもはるかにおいしくて。そのとき、これで勝負しよう!と思いました。

加えて当時、BSE(牛海綿状脳症。狂牛病と呼ばれることもある)や食肉偽装の問題が起こり、世の中全体としてお肉の信用が揺らぎ始めていました。そこで広まったのがワインではお馴染みの“原産地呼称”の考え方です。生産者が想いを込めて育てた牛に地域の名前をつけた高付加価値のブランド牛が重視されるようになりました。こういったことがきっかけとなり、今のスタイルができあがっています。

当時、ハンバーグはごちそうだった。お肉で勝負する理由

北海道LikersライターTatsuya.K:そもそも、どうしてハンバーグのお店を開こうと思ったのでしょうか。会社設立の背景を教えてください。

川畑さん:設立以前はホテル勤務を経て、創作和食のお店で働いていました。飲食店ではどのメニューが人気なのか知るため、売り上げを分析します。分析の結果、売り上げの上位は常にお肉料理が占めていることがわかったんです。和食の店なのでお肉料理は全46品中たった5品しかないにもかかわらずこの結果ですから、「外食って肉だな」と思いました。

あとは、幼少期の経験もあるかもしれないですね。父が留萌の魚屋の息子で、家の食事では魚しか出ないような家庭でした。たまに食卓に出てくるハンバーグがごちそうだったんです。子どものころは、牛肉を塊で食べる文化が北海道ではまだ希薄だったので、40年前に焼肉で牛肉を食べたときは感動しましたね。

北海道LikersライターTatsuya.K:続いて会社名と店名の由来を教えてください。北海道にありながら“大陸(Continent)”というのが気になります。

川畑さん 旅行の様子

自転車で旅をしたときの一枚 出典: (有)北大陸

川畑さん:社名と店名はどちらも造語です。きっかけは高校生のとき、札幌から函館まで10泊11日かけてロードバイクで目指した経験でした。

親の車だと近く感じた片道300km弱の道のりが途方もなく遠く、こいでもこいでも目的地にたどり着かない。旅の途中で「これ大陸じゃん……!」とへこたれてしまいました。これが社名と店名の由来です。北海道はとにかく広くて、でかいことを身をもって感じました。

北海道LikersライターTatsuya.K:高校生のときの経験が由来だったんですね。

川畑さん:旅の中で印象的だったのは、途中でお腹が減って動けなくなったことでしょうか。激しいカロリー消費を補うため1日5食も食べていたのですが、礼文華峠(静狩峠かも?)あたりでダウンしてしまいました。そのときに「お腹が減って動けなくなるというのはこういうことなのか、人間は燃費が悪い」と実感しましたね。

北海道とともに歩む「North Continent」の未来。愛され続けるお店であるために

ノースコンチネント宮の森本店 夏の外観

North Continent 宮の森本店 出典: (有)北大陸

北海道LikersライターTatsuya.K:北海道の飲食店や食肉加工業の魅力と課題について教えてください。

川畑さん:北海道の魅力は土地が広く、お肉の種類が豊富なことです。また、良質なお肉をつくりたい人、消費者に届けたい人たちがいます。だからこそ、いい部位ばかり売れてその他の部位は売れないとなると苦しいですよね。

また、近年では北海道ですらお肉の種類が少なくなっている現状もあります。TPPなどの影響で安価な輸入牛が大量に入ってくることで、中間層に位置していたホルス牛の玉抜き(乳用種の雄)などの需要が減り、安い輸入牛か至高の黒毛和牛しかない状態になりつつあります。中間層の乳用種や歩留まり(ぶどまり)*の悪い他の和種などがお肉のバリエーションを担保しているため、肉の多様性が失われつつあるんです。何かの情勢で輸入が滞ったら、大変なことになりますね。

*原料の投入量に対して実際に得られた出来高の割合のこと

北海道LikersライターTatsuya.K:なるほど。そんな課題に対して『North Continent』は、高級部位以外の想いのこもったお肉をおいしくカジュアルに消費し、和牛やジビエなど多様なお肉のニーズを生み出しているというわけですね。

北海道の食に携わる企業として、今後どのような価値を届けたいとお考えでしょうか?

川畑さん:まず、飲食店の根幹である“おいしいものを提供する”という役割を追求していきたいです。加えて、“食事の簡素化”ということに対する役割も重要になると考えています。家庭全体で労働にかける時間が増える分、1食の食事にかける時間は減ります。そうした中で、食事をより楽にすることが求められるはずです。昨今の冷凍食品ブームなどもその一例かもしれません。すでに冷凍ハンバーグの販売もしていますが、これからも“おいしい食事をより手頃に”届けたいですね。

北海道LikersライターTatsuya.K:最後に、北海道でどんな存在のお店になりたいですか?

川畑さん:「札幌、北海道のハンバーグと言えば『North Continent』だよね」と言われるようになりたいですね。帯広の『カレーショップインデアン』さんのような地域や人に愛されるお店を目指していきます。

 

———『有限会社北大陸』が設立された2006年は、有限会社を新設できる最後の年。以降、新たに設立された会社は株式会社に一本化されることになりました。お店が長く続き、屋号を見たお客さまに歴史ある会社だと思ってもらえるように。『有限会社北大陸』の旅はまだまだ続きます。

【画像】(有)北大陸

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