「りゅうたん」じゃないよ、なんて読む？漢方薬にも使われる、北海道で秋に咲く紫の花は…

2023.09.04

aoikara

本州と比べて早くから紅葉が始まり、冬には葉が散って雪が降る北海道では、9月が美しい花を見られるラストチャンス。そんな9月に開花する「蝦夷竜胆」という花があります。

「えぞりゅうたん」という読み方ではありません。さて、なんと読むでしょうか？

「蝦夷竜胆」はなんて読む？
竜の胆のように苦いから「竜胆」
リンドウは漢方薬
エゾリンドウは中標津町の町花
エゾリンドウが見られるスポット1：サロベツ原生花園
エゾリンドウが見られるスポット2：日和山原生野草園

「蝦夷竜胆」はなんて読む？

「蝦夷」は名前の通り、“北海道”の昔の呼び名を示します。「竜胆」は北海道以外の地域にも生えている、青や紫など美しく高貴な色の花。敬老の日にプレゼントされることもあるようなので、9月には花屋で見かける機会も増えるかもしれません。

どの花なのか、そして読み方はわかったでしょうか？

出典: barman / PIXTA(ピクスタ)

正解は「エゾリンドウ」

「蝦夷竜胆」は「エゾリンドウ」と読みます。リンドウ科の花です。北海道各地、さらには本州の北側の山地や湿地に生えています。開花は9～10月頃。一部の地域では、冬前に咲く最後の花でもあります。

茎の上部から根元までの茎の間に、1個から数個の花を咲かせるのが特徴。花は釣り鐘のような形で、青みがかったような紫色をしています。

竜の胆のように苦いから「竜胆」

出典: dejiys / PIXTA(ピクスタ)

「リンドウ」に「竜胆」という漢字が使われているのには、味に理由があります。

リンドウの根は漢方薬の原料である生薬として利用されますが、味はものすごく苦いそうです。漢方薬として、熊の胆汁を乾燥させて作る「熊胆（ゆうたん）」がありますが、リンドウはもっと苦いのだとか。熊よりも強いとされる竜にちなみ、「竜の胆のように苦い」という意味から「竜胆」と名づけられたのだそうです。

またリンドウには、笑いが止まるほど苦いという理由で「笑止草（えやみぐさ）」という別名もあります。

リンドウは漢方薬

出典: IYO / PIXTA(ピクスタ)

先ほどもご紹介したように、リンドウの根は漢方薬にも用いられています。苦味健胃薬（くみけんいやく）として苦みでお腹の調子を整えてくれるほか、泌尿器科系や目の炎症などにも用いられる漢方薬です。エゾリンドウも、リンドウと同様に薬用として使われています。

エゾリンドウは中標津町の町花

出典: i-flower / PIXTA(ピクスタ)

国花や都道府県の花があるように、各市町村にも代表する花があります。エゾリンドウは中標津町の町花でもあるのです。

中標津町は北海道の東側、根室管内の中部に位置する町。かつて多くのエゾリンドウが自生していたことから、昭和52年に町花として指定されました。漢方薬としての買い付けや宅地開発などの影響で、エゾリンドウの自生が減ってしまったため、平成19年度からは保護増殖事業が進められています。

JAなかしべつの牛乳のパッケージにもエゾリンドウが描かれており、中標津町では親しみのある花のようです。

エゾリンドウが見られるスポット1：サロベツ原生花園

出典: denkei / PIXTA(ピクスタ)

北海道のエゾリンドウが見てみたいという人に向けたスポットもご紹介します。

1つ目は、道北の宗谷管内にある豊富町の『サロベツ原生花園』。ラムサール条約が締結され、日本国内の湿原で3番目の規模を誇る『サロベツ湿原』にある花園です。木道を歩くとエゾリンドウが見られますよ。開花時期は8月中旬から9月下旬まで。

エゾリンドウが見られるスポット2：日和山原生野草園

出典: YsPhoto / PIXTA(ピクスタ)

2つ目は道央の胆振管内にある、登別市の『日和山原生野草園』。登別温泉の近くにある『日和山』は、現在も活動を続ける活火山です。標高は337mとそれほど高さはなく、高山植物が見られます。

エゾリンドウの見ごろは8月下旬から9月上旬。涼しくなってより気持ちよく感じられる温泉に浸かりつつ、美しい花を見て癒されるスポットに足を運んでみてはいかがでしょうか。

冬を前に、北海道で見られるラストシーズンになりそうなエゾリンドウの花。秋の心地よさを感じながら、ぜひ花の美しさにも目を向けてみてくださいね。

＜スポット情報＞
■サロベツ原生花園
■住所：北海道天塩郡豊富町字上サロベツ8662番
■開園期間：通年
■開園時間：8時30分～17時30分（6、7月）、9～17時（5、8、9、10月）、10～16時（11~4月）
■休園日：月曜（11~4月）、12/29～1/3　※月曜が祝日の場合は開園、火曜に振替休園
■入園料：無料
■駐車場：無料（100台）
■アクセス：JR豊富駅からバスで15分

■日和山原生野草園
■住所：北海道登別市登別温泉日和山周辺
■開園期間：4～11月（車両通行可能期間）
■開園時間：終日
■休園日：なし
■入園料：無料
■アクセス：日和山展望台から徒歩約10分、登別温泉バスターミナルから徒歩約30分