フェリー外観

【乗船レポート】計19時間!北海道から東京をフェリーで移動してみた【気になる電波・食事・寝床事情】

2022.05.22

北海道と首都圏を結ぶフェリー『さんふらわあ』。19時間にも及ぶ船旅の魅力を徹底レポートします。これを読めばあなたも今すぐ乗船したくなる!?

フェリー使ってます?

みなさんは、「北海道と首都圏の移動手段は?」と聞かれてなんと答えますか。きっと、ほとんどの方が“飛行機”もしくは“新幹線”を挙げると思います。首都圏~北海道は新千歳空港が北の玄関口として名をはせるほか、青函トンネルを介して鉄路でも結ばれています。しかし首都圏~北海道の移動手段はそれだけではありません。“フェリー”は思い浮かんだでしょうか?

首都圏~北海道の移動手段として、茨城県・大洗港~北海道・苫小牧港を結ぶフェリー航路が「商船三井フェリー」の『さんふらわあ』によって運航されています。今回筆者はゴールデンウィークを利用し、東京への帰省にフェリーを利用してみました。船旅の魅力をとことんお伝えしていきますよ!

旅のはじまりは苫小牧駅から

さて、こちらは“苫小牧駅”です。『さんふらわあ』の発着する苫小牧港へは苫小牧駅が最寄りで、公共交通機関を利用する場合は、駅から路線バスに乗車してフェリーターミナルに向かうのが一般的です。今回筆者は路線バスの出発時刻よりかなり早めに到着したので、徒歩で向かうことにしました。駅からフェリーターミナルまで徒歩で約1時間。意外と歩きますので覚悟が必要です。

さすがは物流の拠点、苫小牧。幹線道路沿いを歩いていると、大型トラックの多さに目がいきます。歩いているとたくさんの発見があるので時間があっという間に過ぎていきますね。

そんなこんなで到着したのが「苫小牧フェリーターミナル」。あまりにも早く着きすぎて、乗船受付時間にもまだ余裕がありますから、ターミナルのそばにある公園で時間を潰すこととします。

実はこの公園にきたのはただ時間潰しのためだけではありません。

どうでしょう? この壮大な建造物。こちらが今夜の移動手段兼宿である『さんふらわあ ふらの』です。ターミナル近くの公園からは出航前の『さんふらわあ』を間近に見ることができるんです。白い船体に青いラインと太陽のロゴが大変美しいですね。船旅への期待感がより一層高まります。

「苫小牧発の夜行フェリーおりた時から~」

さて、フェリーターミナルへ戻り内部を探索してみます。個人的に興奮したのが電光掲示板です。往年の上野駅を思わせるような遠距離の行先表示が、夜行列車時代を知らない筆者の心にグッときました。苫小牧から名古屋なんて行先表示、ここ以外で見ることは叶わないでしょう。

乗船手続きを済ませると、このようなカードキーをいただけます。このカードキーに、宿泊する客室等級や部屋番号などが記されていますので、大切に保管しておきましょう。また、乗船時にもこのカードを係員の方に提示する必要があります。

ちなみに、今回筆者が宿泊する客室は「スーペリアインサイド」という等級で、窓のない個室タイプの客室です。客室については後ほど詳しくご紹介します。

フェリー?豪華客船?

乗船可能時間になったので、船内へと移動していきます。長い長いタラップを歩いていくと、いつの間にか船内にといった感じで、待たされることもなく大変シームレスに乗船できます。

船内に設けられた乗船口からエスカレーターに乗っていくと、写真のような景色が広がります。この時点でフェリーの印象が大きく変わりますよね。大きな窓が並ぶこの開放的な空間は「プロムナード」と呼ばれるエリアで、フランス語で“散歩道”という意味があります。フェリー内で散歩道が用意できてしまうなんて、もう豪華客船といっても差し支えないのではないでしょうか。

そのまま客室へと向かいましょう。見てください、ホテルを思わせるようなずらっと客室ドアの並ぶこの廊下。出航前で、揺れも音もありませんからなおさら船の中ということを忘れてしまいます。

それでは客室へ入りましょう。客室には乗船前に配布されたカードキーを使用します。

靴を脱いで上がるタイプの客室。こちらが本日の宿「スーペリアインサイド」です。ベッドが1台、チェアベッドが1台、ベッドの上にプルマンベッドが収納されており、2段ベッド形式の最大3名定員の個室となっています。

フェリーの客室というと、大広間形式を思い浮かべる方が多いと思いますが、『さんふらわあ ふらの』では個室や半個室タイプの客室が多く設置されており、プライベート性や昨今のコロナウイルスのリスクを考慮した旅行が可能です。

ちなみに、写真の丸窓に見える部分はダミー。「スーペリアインサイド」という名からもわかるように、窓のない内側の部屋となっています。

客室はそこまで広いわけではありませんが、エアコン完備でテレビにトイレやシャワーも設置されており、19時間の船旅では十分快適に過ごせます。ビジネスホテルの客室をそのまま船に持ってきたという感じで、さすがは“動くホテル”ですね。

個人的に嬉しかったのが、充実のアメニティです。なんといっても『さんふらわあ』のロゴが記載されたフェイスタオルをいただけるのが嬉しいですね。これだけで乗船記念のお土産になります。そのほかのアメニティも石けん類、歯ブラシ、ボディータオルなど充実の内容。使うのがもったいないとすら思ってしまいます(笑)

まもなく時刻は18時、夕食の時間になるのでレストランへ向かうことにします。

「レストランさんふらわあ」陸地出店希望!

レストランはバイキング形式となっており、まず券売機で食券を購入します。夕食が大人2,000円、朝食は1,200円ですが、夕食と朝食のセット券が2,700円で販売されており、それを購入すれば500円お得になります。

お店の方に食券を渡したら、まずは座席を決めましょう。座席数も多く、座れないということはないと思いますが、筆者のお目当てであったオーシャンビューの座席はすでに埋まっていました。人気の座席に座りたければ早めにいく必要がありそうです。

バイキングはメニューが豊富で、よりどりみどり。何にしようかと迷っている時間が一番楽しかったりします。

季節の品も提供されており、北海道富良野産のアスパラガスを使用した天ぷらは大変美味でした。マグロユッケや鴨ローストなど豪華なラインナップが食べ放題となると、興奮しますね。バイキング形式だと、個人的にお皿がどうしても揚げ物など茶色系メニューに統一されがちですが、なけなしのサラダでなんとか体裁を保てたのではないでしょうか。少し大人になった気がします。

出航の時刻も迫っており、そこまでゆっくり食べている時間はないのですが(出航の様子をデッキから見学したいので)、お箸が止まりません。フェリーはあくまで移動手段なので、レストランのクオリティにそこまで期待していなかったのですが、いかんせん美味しすぎる! “レストランさんふらわあ”として陸地に出店してほしいと思うくらいです!

そんなこんなで、豪勢な夕食を味わっていると“ドドドドドド”と軽い揺れを感じました。どうやら出航してしまったようです。このような旅行記を執筆している以上、出航シーンは何としても見届けたいと思っていたのですが、あっけなく食欲に屈することとなりました。思い通りにいかないのが旅の醍醐味。ということにさせてください。

充実しすぎの船内設備

さて、おなかも満たされたところで次はひとっ風呂浴びましょう。

『さんふらわあ ふらの』には展望浴場が設けられているので、大海原を眺めながら入浴できます。筆者は夜と朝の2回利用したのですが、明るい時間帯は大きな窓からの眺望を満喫できますよ。なんとサウナも設置されており、サウナブームの昨今、船上でも“整う”ことができちゃうなんてたまりませんね。

身体も温まったところで、少し船内を散策してみます。船内には写真のようなパブリックスペースが何か所も設置されており、落ち着いた雰囲気の中、読書や物思いにふけるのもフェリー旅ならではの素敵な時間の使い方です。

こちらは売店です。船の中にしては広めの店内では、お酒やおつまみ、お土産類、『さんふらわあ』オリジナル商品などバラエティに富んだ商品展開となっており、眺めているだけでも楽しいです。そのほかにも、何かと便利なコインランドリーや給湯室、スロットマシンやクレーンゲームが設けられたゲームコーナーなど、船の中だということを忘れてしまうような充実の設備となっております。

ちなみに、船の中だということを感じたくなった方は24時間開放(荒天時などを除く)されている展望デッキに出て潮風を浴びることができます。筆者は22時ごろに展望デッキを訪れましたが、夜の海は真っ暗でおどろおどろしさがありました。

最高の「初」日の出

一通り散策できたところで、自分の船室へと戻ります。明日の起床時刻は午前4時ごろ。なぜそんなに早いのか、察しのいい方ならもうおわかりかもしれません。日の出を拝むためです! 遥か東の向こうから顔を出す太陽を、洋上の『さんふらわあ』から眺める。なんとも粋ですねえ。出航シーンをリポートできなかった罪滅ぼしでもあります。これで寝坊しては恥の上塗りですから、今夜は早めに床に就くとしましょう。

時刻は午前4時10分。おはようございます。ちゃんと起きることができました。早速、展望デッキに出て日の出を見にいきましょう!

展望デッキに到着。東の方から明るくなりつつあるのですが、雲があるのか太陽の姿が見えません。せっかく早起きしたのに曇りで見えないとは、日ごろの行いが悪いからでしょうか。

おや?

おおおお!!! 齢20年。はじめてこの目で日の出を拝むことができました。海から球形の物体がゆっくりゆっくりと上昇してくる感覚がこんなにもエキサイティングなものだとは存じませんでした。今まで、元日から山に登って初日の出を見にいく人を「太陽なんていつでも見られるんだから、元日くらい家でゆっくりすればいいのに」と斜に構えた見方をしていた自分を叱責しました。ただの日の出でこんなにも感動できるのですから、初日の出となるとより一層こみあげるものがありそうです。

自分にとっての“初”日の出を満喫したところで、朝食の時間まで2度寝します。

時刻は午前7時30分。再びおはようございます。朝食の時間になったので、レストランへと向かいます。食券は昨夜、夕食とのセット券を購入しているのでそれを提示します。朝食もバイキング形式。パン派の筆者ですが、味噌汁は欠かせません。そしてこのウインナー、中にチーズが入っていて嬉しい誤算。ただ、筆者のお腹に2本はヘビーでした。老いを感じます。

もっと乗っていたい

食後は軽い散歩をということで、明るくなった展望デッキにいってみます。天気があまりよくないですね。日の出が見られたのは実は奇跡なんじゃないかとおごっています。

それにしても明るくなってはじめてわかったのですが、航行速度が非常に速いです。フェリー=のんびり、といったイメージをもたれがちですが、速力は24ノット(時速約44km)。全長200m近い巨体がこの速度ですから、フェリーは決して遅い乗り物ではないのですね。

潮風にあたって肌がべたついたので、展望浴場に入ってから3度寝とします。

時刻は13時30分。大洗港への着岸が迫ってきました。早速展望デッキに出てその様子を見届けましょう。と思いきや天気はあいにくの雨。さすがにびしょびしょになってはまずいので、写真を1枚撮って部屋に戻ります。

しばらくすると、もうまもなく着岸するとのアナウンスがあり、下船時の流れについて説明があります。『さんふらわあ ふらの』は自家用車やバイクをフェリーに乗せて車両ごと移動することもできるので、徒歩の乗船客とは異なる下船方法となります。

徒歩客の下船は、乗船時の逆という感じでこれといって難しいことはありません。長い長いタラップを進むと、いつの間にかフェリーターミナル内にいたという感じです。ここからはバスに乗って大洗駅を目指します。19時間の船旅、長いなぁと思いきや本当に一瞬でした。快適すぎて「まだ到着してほしくない」と思うような移動手段はなかなかありません。

気になるスマホの電波ですが、基本的に陸地に沿って航行するので微弱ながら電波が入ることが多く、圏外になる時間はそこまで多くありませんでした。緊急時の連絡など圏外だと何かと不便ですが、その点もほぼ問題なしといっていいでしょう。

移動手段の域を出た、旅としてのフェリー

フェリーはたしかに飛行機や新幹線と比べると時間はかかりますが、それ以上のスペシャルな体験ができるのは折り紙付きです。価格面でも、幅広い等級やキャンペーンが用意されているので、片道1万円台で乗船できることも珍しくありません。

“移動も旅行の楽しみ”だと考える方にはぜひともおすすめできる北海道~首都圏の移動手段だと思いますよ。

余談ですが、大洗駅に到着したところ大変奇抜なモニュメントを見かけたので記しておきます。どうやらこれは、大洗沖がカジキマグロの好漁場となっていることに由来するものだそうですが、リアルな造形がとにかく目を引きました。

 

移動手段の域を出た、ホスピタリティにあふれる船旅。みなさんもぜひ体感してみてください。

【取材協力・画像提供】商船三井フェリー株式会社

【画像】BluezAce / PIXTA(ピクスタ)

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