
【世界で帯広だけ】1トン級の大迫力! 「ばんえい競馬」の魅力とは~入門編~
世界で唯一、北海道帯広市でしか開催されていない特別な競技があるのをご存じでしょうか? それは『帯広競馬場』で行われている『ばんえい競馬』です。
『帯広競馬場』を舞台に繰り広げられている『ばんえい競馬』とは、巨大な馬が鉄ソリを曳きゴールを目指す、まさに“馬の力強さ”競う、他にはない迫力のレースです。
今回は、世界で唯一無二の『ばんえい競馬』の魅力についてご紹介します。
目次
1:世界で唯一!ばんえい競馬とは

木材を運ぶばん馬
画像:ばんえい十勝
「なぜ帯広だけ?」「どうしてソリを引くレース?」と、そんなふうに思った方も多いかもしれません。
実は『ばんえい競馬』は、北海道開拓時代を支えた“農耕馬”の文化と深く関係しています。
当時、畑を耕したり木材を運んだりする労働力として活躍を見せた“農耕馬”は、ばん馬”という愛称で呼ばれ、北海道の人々と苦労をともにしながら、生活に欠かせない家族のような存在となっていました。

農耕馬として活躍するばん馬
画像:ばんえい十勝
そんな中、人々はばん馬を力自慢の“誇り”として農民のお祭りで力比べを行うようになり、次第に荷物を引く競走へと変化する流れに。それこそが現在の『ばんえい競馬』の始まりです。
『ばんえい』とは『輓曳(ばんえい)』と書き、“物をひく”という意味が込められています。
その後、農業の機械化が進むにつれて農耕馬の役目は終わりを迎え、馬たちは競走馬へと役割を変えていきました。道内各地で『ばんえい競馬』が開催されるようになり、盛り上がりを見せましたが、バブル崩壊後には経営難により各地で撤退が相次ぎ、ついには廃止の危機に直面します。
しかし、ファンや地元民の強い思いが存続運動を生み、帯広市が単独で開催を続けることを決断。現在では、“曳き馬”競馬として、世界で唯一、帯広だけで見ることができる特別な競馬となっています。
このようにして、人と馬がともに築き上げてきた北海道の馬文化は、レース競技という形に姿を変えました。けれども、力強く走るばん馬と、それを育て、応援し続ける人々の“絆”は、今もなお『ばんえい競馬』に息づいているのです。
2:超重量級! ばん馬ってどんな馬?

画像:ばんえい十勝
『ばんえい競馬』を走る競走馬“ばん馬”は、馬の中でも特に体格が大きい“重種”という大型馬に当たります。高さが約170cm前後、体重は1,000kg を超える馬も多く、なんと一般的な競馬を走る“サラブレッド”の約2倍の大きさを誇ります。
首や胴ががっしりとして長く、太くたくましい脚は荷物を牽引するにうってつけの体つきをしており、その姿はまさにパワーファイター。レースでは500キロ前後から最大1トンのソリを曳くことができます。
初めて目にする方は、その大きさ、迫力に圧倒されるかもしれませんが、実は性格はとても温厚で、おとなしい馬が多いのも特徴です。
3:坂を越えろ! 感動が生まれる熱闘の舞台“ばんえいコース”

画像:ばんえい十勝
『ばんえい競馬』のコースは、直線200メートル、幅1.8メートル、砂が敷きつめられたセパレートコースに2つの『障害』と呼ばれる坂が設けられています。
第1障害は高さ1.0メートル、そして第2障害は高さ1.6メートルで、この第2障害が『ばんえいポイント』とも呼ばれる、ばん馬たちにとって最大の勝負所。最大1トンもの鉄ソリを曳いて、そんな急坂を一歩一歩登っていく姿は、まさに“エベレスト登頂”ともいえる挑戦で、圧巻の見ごたえです。
そのため、第1障害と第2障害の間では、騎手が戦略として馬を一度止めて呼吸を整えさせたり、第2障害に備えてスタミナを温存させたりする場面もあり、馬が止まっては進むといった独特のレース展開になります。
第2障害を越えても、その先のゴール直前には、高さ0.5メートルの傾斜がつけられた『砂障害』が待ち受けており、最後の最後で繰り広げられる接戦に、観客の熱気もピークに達します。
※冬期間はヒーティングの稼働により、砂障害は設置されません。

画像:ばんえい十勝
また、ゴールの判定基準も『ばんえい競馬』では、馬の鼻先ではなく、ソリの後端がゴールラインを越えた時点でゴールと見なされます。たとえ馬体やソリの半分がラインを越えていても、最後尾が通過していなければゴールとはなりません。
このルールは、“荷物を運びきる”という農耕馬の役割が背景にあり、力強さを競う『ばんえい競馬』ならではの面白さのひとつです
4:勝敗の鍵は“技”と“読み”! 勝利に導く“ばんえい騎手”

画像:ばんえい十勝
ばん馬の“力強さ”とともに欠かせないのが、騎手の“手腕”や“展開力”です。
まず、『ばんえい競馬』の騎手は馬の背には乗りません。騎手が乗るのは、馬が曳く“ソリ”の上。そこから長い手綱を操り、馬に指示を送ります。手綱を通じて伝わるわずかな感覚を頼りに進めるためには、高い技術と繊細な判断力が求められます。
そして、気になるのが“馬が立ち止まる”という場面。これは、騎手が意図的に馬を止めて、呼吸を整えさせる“休憩”と“息入れ”のための動作で、第1障害と第2障害のあいだでのみ許可された戦略的な行為です。この行為は『ばんえい競馬』独自の用語で『刻む(きざむ)』と呼ばれており、適切なタイミングで“刻む”ことで、最後までソリを曳ききるためのスタミナを温存し、結果的に好タイムへとつながることもあります。
どのくらい“刻む”かは、レース展開における重要なテクニックの一つであり、馬の調子やコースコンデション、周りのペースなどを見極めて判断する、騎手の展開力と腕の見せ所ともいえるでしょう。
5:ばんえい競馬の観戦ポイント

画像:ばんえい十勝
レースではコース脇から馬の歩みに合わせて、スタートからゴールまで歩きながら観戦することができます。
『ばんえい競馬』はスタンドとコースの距離が近いため、特に最大の見どころである第2障害の登坂シーンでは、観客も一緒に歩きながら声援を送ることで『ばんえい競馬』ならではの臨場感を体験することができます。
大きな体で力強く坂を登るばん馬と、そんなばん馬たちの体力を見極めながら戦略を練る騎手が一体となり、障害を乗り越えていく姿は迫力満点! そんな圧巻のレースはやはり現地へ行き、間近で観戦するのがおすすめです。
『ばんえい競馬』は、世界にここ帯広だけにしかない珍しい競馬。サラブレッドの競馬とは全く違う、迫力満点の『ばんえい競馬』をあなたもぜひ楽しんでくださいね!
【画像】ばんえい十勝/北海道Likers
文/ながたたけし、Joki
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