「臨場感を届けたい」異色の経歴を持つ競馬実況アナウンサー・大滝翔が語るレースの楽しみ方
帯広市で開催されているばん馬のレースばんえい競馬。ばん馬の歴史は古く、明治初期にはじまる開拓時代の労働力として活躍しました。
砂煙を立てながらソリを曳き進む強靭な馬体、圧倒的な存在感、そして共に生活をする人間たちとの信頼関係の深さ。それらは当時の面影を残す北海道遺産として、今もその文化が継承されています。
今回お話を伺ったのは、ばんえい競馬の実況アナウンサー大滝翔さん。大滝さんが感じるばんえい競馬の魅力や楽しみ方についてお聞きしました。
大滝翔(おおたき・かける)。1983年生、札幌市出身。北海道工業大学(現北海道科学大学)工学部建築学科卒。会社員や司会業を経て2015年よりばんえい競馬・ホッカイドウ競馬の実況アナウンサーとなる。北海道内の競馬実況アナウンサーで代表的存在の太田裕士さんとともに、ばんえい競馬をダイナミックに発信するアナウンサーである。
理系大卒の建設マンから実況アナウンサーへ
北海道LikersライターKawahara:ばんえい競馬の実況アナウンサーになられたきっかけをお聞かせください。
大滝さん:実はもともと話す仕事をするとは思っていなかったんです。大学時代は興味があった建築を学び、2006年に新卒で建設会社に入社しました。しかし2008年頃に起きたリーマンショックの影響で会社は倒産してしまい、その後転職サイトを検索して一番時給が高かったグランドキャバレーの司会業に就きました。当時はとにかく話す仕事をしたいというよりはお金が欲しいという感じでしたね(笑) その後グランドキャバレーも閉店することになり、ハローワークで求人を探していたところばんえい競馬の実況アナウンサーの職に目が留まり晴れて合格、現在に至っています。
北海道LikersライターKawahara:もともと競馬はお好きでしたか?
大滝さん:サラブレッドの競馬では1990年代後半に活躍したエアグルーヴが好きでした。日本競馬史を変えた歴史的名牝です。1998年の札幌記念で実馬を初めて見た時の感動は今でもはっきりと覚えています。
当時はゴールデンウィークになると札幌競馬場でホッカイドウ競馬があり、競馬の生のレースが見たいと両親に頼んで競馬場へ出かけていました。その時、今一緒に働いている太田裕士アナウンサーのレース実況を聞いていたことを記憶しています。
そんな私のばんえい競馬との出会いは2006年のサラリーマン時代。岩見沢競馬場で初めて生のレースを観戦しました。あの頃はまさか今こうしてばんえい競馬の実況アナウンサーになっているとは夢にも思いませんでした(笑)
臨場感あふれるレース実況で競馬を楽しんでほしい!
北海道LikersライターKawahara:ばんえい競馬を実況する際に心がけていることはなんですか?
大滝さん:競馬場に来られない方、映像で見ている方にもその場の臨場感をお伝えすることを常に心がけています。ばんえい競馬は、ばん馬の“力強さ”を競うレースです。一般のサラブレッドの競馬では、馬の“スピード”を競うので全く違うものになります。おのずと実況をするうえでのリズム感や盛り上げ方も変わってきます。
ばんえい競馬では2つの大きさの違う障害(山のような坂道のこと)があり、勝敗が決まってくる2つ目の障害の後は飛ぶようなスピードでソリを曳く馬もいれば、疲れてスピードダウンする馬もいます。実況をする際もその場の状況に合わせて、テンポを速めたりゆっくりと落としたりと変えています。イメージはビートルズの『We Can Work it Out』です。
北海道LikersライターKawahara:大滝さんはばんえい競馬ファンの間では有名な「ばんえいフルゲート」という言葉を初めて実況で使われました。どんな思いから出てきた言葉なのでしょう?
大滝さん:この言葉を使いだした5年ほど前、たまたま十勝清水町で開催されていた草ばん馬大会を観に行きました。草ばん馬はばんえい競馬に比べると1レースに出走する馬が少なく、4頭ほどで行うことが多いようです。ばんえい競馬とは異なるお祭りのような雰囲気を楽しめる一方で、“10頭フルゲート”のレースの面白さに改めて気づく機会でもありました。
そして当時は特にばん馬の生産頭数が減少していて、ばんえい競馬でも全レースを10頭で行うのが難しい時期でした。10頭フルゲートのレースがこれからも続くようにという願いも込めて使い始めました。
表情を間近で見られるのはここだけ
北海道LikersライターKawahara:読者の方に伝えたいばんえい競馬の魅力をお聞かせください。
大滝さん:ばん馬に携わる人たちの表情が間近で見られるのが大きな魅力ですね。ばんえい競馬はレースが終わった後、ゴールした馬たちがレースで使用した大きなソリをはずしてもらうために立ち止まって待っています。そこに厩務員さんたちが歩み寄り馬をなで「がんばったね!おつかれさま!」とねぎらう姿を見ることができます。
そのやさしい表情を見ていたら、「この人が毎日毎日この馬のお世話をしているのだ」と実感します。騎手がポンと触って「おつかれさま」と言うかのように馬に寄り添う姿を目にすることも。このような表情まで見えるのは、ばんえい競馬ならではなのでぜひ注目していただきたいです。
大滝アナウンサーがおすすめする帯広情報!
北海道LikersライターKawahara:大滝さんが住む帯広には魅力がいっぱいあると思います。ぜひおすすめを教えてください!
大滝さん:「オベリベリ温泉 水光園(すいこうえん)」が好きで良く行きます。帯広近郊は十勝川温泉街に行かずともモール泉が銭湯価格で楽しめるので嬉しい限りです。「水光園」で提供しているソフトクリームがとてもおいしいです! しかも200円! ぜひ行ってみてくださいね。
北海道LikersライターKawahara:では最後に、読者にメッセージをお願いします。
大滝さん:ばんえい競馬のレース中に放送している『ばんスタ』はメンバーも増え、華やかに楽しい番組をお届けしています。女性アシスタントが登場してから、以前より女性の競馬ファンの方からメッセージを多くいただけるようにもなりました。コロナ禍でなかなか自由に競馬場へ来ることができない状況がまだ続いていますので、番組を観ながら一緒に競馬を楽しんでいただけるといいなと思っています。
ばんえい競馬実況中継『ばんスタ』は楽天競馬の『地方競馬 ライブ動画』やYouTube『ばんえい十勝LIVE』、『ニコ
【大滝アナウンサーからの帯広おすすめ情報】
■店舗名:オベリベリ温泉 水光園
■住所:北海道帯広市東10条南5-6
■電話番号:0155-23-4700
■営業時間:月~日 11:00~23:00
■利用料金:大人450円、小学生140円、幼児70円
【画像】KA-HIRO,Daikegoro / PIXTA(ピクスタ)