加藤室長とばん馬

世界で唯一!ばんえい競馬・開催執務委員長が教える「帯広競馬場」の楽しみ方

北海道帯広市にある帯広競馬場をご存知ですか。ここでは体重が1トンもある大きな馬が迫力あるレースを見せる世界唯一の競馬・ばんえい競馬が開催されています。

馬たちが活躍する舞台として古くから地域で親しまれている帯広競馬場ですが、最近は北海道の観光スポットとしても人気を集めています。なぜ、帯広競馬場は観光客を引きつけるのでしょうか。今回は、ばんえい競馬の開催執務委員長を務める帯広市の農政部、加藤参事に帯広競馬場の魅力を伺いました。

加藤帝(かとうみかど)。今年4月より帯広市農政部参事・ばんえい振興室長としてばんえい競馬を担当。前年度までは帯広市の観光・空港部門などを長く歴任され観光のエキスパート。

開拓の歴史や馬文化が継承されている「ばんえい競馬」

『ばんえい振興室長』加藤帝さん

『ばんえい振興室』室長 加藤帝さん
画像:北海道Likers

帯広市にとってばんえい競馬はどのような存在でしょうか。

この十勝・帯広と呼ばれる地域は今から142年前に開拓が始まりました。原生林から木を切って運び出したり、太い切り株を除去して取り払ったり、力仕事で活躍をしたのが、“ばん馬” になります。

加藤室長とばん馬

加藤帝さんとばん馬
画像:北海道Likers

その後、農業が盛んになるのですが、昭和30~40年代ぐらいまではトラクターがまだ普及していなかったため、農業をするにあたっては畑を耕す農耕馬が必要でした。

この『ばん馬』と呼ばれる馬たちは、荷物等を引いて仕事をするだけでなく、地域の開拓と農業の歴史にとって欠かすことのできない存在でした。

現在は、農業の機械化により農耕馬はいなくなりましたが、当時のばん馬の活躍を体感できる空間として残っているのが帯広の『ばんえい競馬』なのかなと思っています。

迫力ある「ばん馬」の臨場感あふれるレースを目前で

ユニークなばんえい競馬ならではの魅力を教えてください。

ばん馬の迫力が魅力のひとつです。よく知られているサラブレッドの競馬は、『平地競馬』と言い、馬の体重は500kgほどです。

ばんえい競馬のばん馬は1,000kgを超えているため、サラブレッドの約2倍の大きさになります。そのため、初めて見る方はまず馬の大きさに圧倒されるのではないでしょうか。

ばんえい競馬

画像:北海道Likers

ばんえい競馬はこの大きな「ばん馬」たちが、直線200mのコースの途中に2つの障害と呼ばれる坂を乗り越えゴールまで走る、パワーとスピードを競うレースです。

サラブレッドの場合は速さのみを競うため馬は全力で走りきりますが、ばんえい競馬は途中で馬が止まります。特に1.6mの高さがある第2障害を越えるために坂の手前で1度止まり、馬の呼吸を整えてから騎手との息を合わせて一気に登るためです。知らないと驚きますよね。

画像:ばんえい十勝

レースでは、騎手がソリの上に騎乗します。他の馬との駆け引きや手綱さばき、馬の息づかいや騎手の掛け声などがすぐ目の前で繰り広げられるので、その臨場感と迫力さが帯広競馬場でレースを観戦する醍醐味だと思います。

また、ゴールを決める場所も平地競馬と違います。ばんえい競馬の場合は馬の鼻先ではなくソリの一番後ろの部分がゴールラインを越えたところで決まります。馬体やソリの半分がラインを越えていてもゴールではないのが独特で面白いポイントだと思います。これは、荷物を運ぶ仕事の名残だと言われています。

ますます地域の方に愛される「帯広競馬場」に

帯広競馬場を訪れた際の“おすすめのレース観戦方法”を教えてください。

まずはじめにパドックへ行って、レース前の馬の様子を見て応援する馬を選んでみてください。その後、レースが始まる時にはスタートゲート付近に行って、馬の出走と同時に並んで歩いていくことをおすすめします。

一番の見せ場の第二障害を登るところも間近で馬に声援を送って、ゴールまで一緒に歩いていくのは、ばんえい競馬ならではの楽しみ方ですね。レースに挑む馬たちと同じ気持ちになれますよ。

ばんえい競馬 見る人

画像:北海道Likers

レース以外で楽しんでいただくポイントとしては、観戦スタンド席の裏側にある『ふれあい動物園』です。

ふれあい動物園 来場者

画像:北海道Likers

大きなばん馬やポニー、西部劇に出てくる馬のクォーターホースなどがいます。馬に触ってみたり、ニンジンの餌をあげたり、そういったふれあい体験ができます。ばん馬の背中に乗せてもらえることもありますので、親子や友人と楽しんでいってほしいですね。

馬たちがみんなに愛されていて、本当に可愛いのでいつ行っても楽しめますよね。

そうですね。帯広市の単独開催は今年18年目なのですが、以前は北海道の4市で『ばんえい競馬』を開催していました。平成19年に帯広市の単独開催になって以降、帯広でしか見ることができない競馬として“帯広随一の観光スポット”になりました。

そういった背景もあり、“地域のばんえい競馬”として愛されるようになり、昔と比べて家族連れや小さな子どもたちが馬と一緒に走っていたり、笑い声が聞こえたりするなど、「客層が全然違う。場内の雰囲気が明るくなった」と全国の競馬関係者からの驚いた声も耳にします。

帯広競馬場の再出発のときは、市長を含めて市役所の方や競馬場の現場の方々が復活に努力されたんですよね。何よりも地域の方々が大応援を送っていた光景が印象的です。

地域の方々が改めて、「競馬場は私たちのとても大切な場所だ」というふうに捉えるようになったのでは、と感じています。最近では、帯広競馬場で催されるイベントもたくさん増えましたよね。

競馬開催日の週末にはキッチンカーがならぶイベントもよく行っています。帯広に来たら必ず立ち寄りたい旅の目的地にもなってきました。

画像:ばんえい十勝

毎年、秋には『とかちばん馬まつり』(帯広商工会青年部主催)が帯広競馬場で開催されるのですが、目玉の企画に『ワールド人間ばん馬チャンピオンシップ』があります。馬が曳いているソリよりも軽い特製のソリ(150㎏)を用意して、そこに騎手となる女性が乗ります。

それを5人で曳いてレースを行います。実際のコース内に入ることができる特別なレースですので、全国の方に参加してもらいたいと思いますし、見に来てもらいたいですね。

10,000円でレース名を付けることも!帯広競馬場ならではの体験を

帯広競馬場では『協賛レース』というものがあります。例えば“ながたさん誕生日記念”など、そのレースに名前をつけることができます。

注目ポイントとしては、当日の出走表や競馬新聞へのレース名の掲載、実況放送でレース名がアナウンスされるほか、競馬場に来て馬券を買うと協賛レース名が馬券に載り、記念日や特別なメッセージを伝えたい方におすすめです。

協賛レース ばんえい競馬

画像:北海道Likers

個人協賛レースは10,000円から行えますが、人気が高く全国から応募があるため、2~3ヶ月前など早めに申し込まれた方がいいと思います。誰かと一緒に来てサプライズでプレゼントするのも楽しいですよ。帯広市のふるさと納税の返礼品にもなっていますので、こちらからのお申込みもおすすめします。

私も協賛させていただいたことがありますが、素敵な企画ですよね。

本来、競馬場は入場料を取るのですが、帯広競馬場は国から許可を得て特別に入場料を無料にしています。「ばんえい競馬を見てみたい」「競馬場ってこういうものなんだ」と、地域の人や観光客など、どなたでも気軽に見に来てもらえればなと思っています。

馬券も100円から買えますよね。まず100円で買って遊んでみるというのも楽しいかなと思います。

本日はありがとうございました。最後に記事を見ている方々へ一言、お願いします。

帯広競馬場 馬券を買う様子

画像:北海道Likers

世界にここ帯広だけにしかない珍しい競馬です。そのため、多くの方に直に見てもらわないとわからない迫力を感じてもらい、ばんえい競馬のファンになっていただき、さらに多くの人に魅力を広めてほしいと思っていますので、どうぞ皆様で遊びにお越しください。

ーーー帯広市役所で長く観光の担当をされていた加藤室長に、4月から帯広競馬場に異動されてからのことをお聞きすると「ここが観光の場所だと改めて感じた」と話されたのが印象的でした。ばんえい競馬は昨年度の馬券売り上げが過去最高額になるなど、ますます帯広市の人気スポットになっています。ぜひ帯広競馬場へ遊びに行ってみませんか。ここだけの体験が楽しめますよ。

文/ながたたけし

【画像】北海道Likers

連載「ばんえい競馬ではたらく人」では、ばんえい競馬を支える仕事に就くさまざまな人の魅力に迫ります。お仕事と記事の一覧はこちらから。

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