どうやって予想しているの?「ばんえい競馬」予想紙編集長・板垣さん【この春の注目馬も】

北海道帯広市で開催されている世界唯一の競馬・ばんえい競馬。『帯広競馬場』でほぼ毎週土・日・月の3日間行われ、ばん馬たちの臨場感あふれるレースに多くの人々が夢中になっています。

そんなばんえい競馬のレース予想に役立つ一助になるのが予想紙。

今回は、ばんえい競馬の専門予想紙『ねっとばんばキンタロー』の編集長、板垣雅己(いたがき・まさみ)さんにお話を伺いました。

板垣雅己(いたがき・まさみ)。1969年生まれ、北海道旭川市出身。ばんえい競馬の専門予想紙『ねっとばんばキンタロー』の編集長。読みやすい紙面として定評のあったばんえい競馬名門新聞『ばんえい金太郎』の2017年3月休刊を機に、『ねっとばんばキンタロー』を立ち上げた。ばんえい競馬・馬場管理の職員から転身した経験、人脈を活かした予想を提供する。

偶然とご縁が重なってたどり着いた「ねっとばんばキンタロー」の編集長

ねっとばんばキンタロー」編集長 板垣雅己さん

『ねっとばんばキンタロー』編集長 板垣雅己さん
画像:北海道Likers

『ばんえい金太郎』休刊のタイミングで、なぜばんえい競馬・馬場管理の職員から転身しようと思ったのでしょうか。

転身はたまたまでした。もともと競馬は好きだったのですが、実はばんえい競馬関連の仕事に3回就職しているんです。

20年ほど前になりますが、1回目は競馬場のゲート関連の仕事をする民間企業で働いていました。業務のなかで厩舎の方とも知り合いになり、「競馬関係の仕事って楽しいな」と思いながら仕事を続けていたのですが、帯広市のばんえい競馬の廃止が検討されていた時期※1(2006年頃)の煽りを受けた会社の業績不振により退職することになりました。

2回目はご縁あって、2006年からブロードバンド放送されていた『BANBA王』と呼ばれる競馬番組の手伝いで復帰。1年ほど仕事をしたのですが、番組終了に伴い退職しました。

そして3回目が馬場管理の職員です。当時、旭川市内に本社がある株式会社コンピュータービジネスが帯広市から委託を受け、帯広競馬場での業務に携わっていた頃に声をかけてもらいました。そこから馬場管理の仕事をしているなかで、ばんえい競馬名門新聞の『ばんえい金太郎』の編集長が亡くなってしまい……。当時は後継者がいなかったため、私に声がかかりました。

※1:ばんえい競馬はかつて道内4市(旭川市、北見市、岩見沢市)で開催していたが、売上げの低迷により2006年11月27日時点で3市の撤退が決定的となり、帯広1市で存続か廃止かの瀬戸際に立たされた。

そういった経緯があったのですね。なぜ声をかけていただいたのでしょうか。

過去に自身の予想をネットで公表していた時期があり、それを知っていた競馬場の職員を通じて声をかけてもらいました。

『ばんえい金太郎』を引き継いだ当初は編集者が別におり、私は馬柱※2を担当し共にやっていましたが、そこから1年ほど経ちその編集者が退職されたため、せっかくここまでやってきたなら続けたいと思い、ネット上でも予想が見られる『ねっとばんばキンタロー』を立ち上げました。

※2:競馬で、各レースに出走する馬の情報を記載したもの。

レースを見る際に「馬の個性」を見極める

馬場管理の現場で培った経験はどのようなものでしょうか。また、それらの経験は予想紙作成にどのように影響を与えているのでしょうか。

一番初めの仕事がゲート関連の仕事だったので、その際に騎手の会話を聞いて、勉強していました。なかでも、旭川の実家の近所にいた鈴木勝堤(すずきしょうてい)騎手には乗り方を始め、いろいろなことを教えていただきました。

鈴木勝提騎手とナリタボブサップ

鈴木勝提騎手とナリタボブサップ
画像:ばんえい十勝

次第に騎手の知り合いも増えていき、騎手の気持ちがわかるようになったのは勝堤さんのおかげです。その後、馬の気持ちもなんとなくわかるようになっていったことも、予想紙作成に活かされているのかもしれません。

競馬予想紙を作成するうえで、活用している情報源や手法はなにかありますか。

前のレースを見て、次のレースにどう活かせるか予想しますね。

インターネットの普及前は自分の記憶だけが頼りだったのですが、今は過去のレースや馬の調子を後から見られるので、予想が立てやすくなりました。

画像:ばんえい十勝

また、レースを見る際に何よりも大事にしている点は、“馬の個性”を見ること。さまざまな気性の馬がいるので、各馬の持ち味が発揮できているのかをまずは見ますね。本当に人間と同じです。

情報収集の際に特に注意を払っている点があれば教えてください。

特にないですね(笑) ただ、レースでの調子が良いかどうかは過去の動画から見ているので、馬の様子は実際に自分の目で判断するようにしています。

画像:ばんえい十勝

最終的に信じられるのは自分の目なのでしょうか。

そうですね。はじめは馬柱だけ担当していたのですが、今では馬柱を作るところからレース予想、印刷まで全ての作業を1人で完結しています。

過信はしすぎないようにしていますが、長年予想を立てていることもあり、馬の調子は自分の目で見て判断するようにしています。

予想が外れたときにお怒りの声をもらうこともあると想像するのですが、予想が外れてしまったときにはどのように対処されていますか。

良いお客様ばかりなので、いやな思いをしたことがないんです。自分で店頭販売していた時期もあったのですが、その際も同様ですね。

自分で予想することが好きなお客様が多いこともあるのかもしれないです。だからこそ、私は“望んで予想してもらえるような紙面作り”を心がけています。

通常の競馬にはない「ばんえい競馬」ならではの面白さ

ばんえい競馬と通常の競馬だと予想の立て方にどのような違いがあるのでしょうか。

通常の競馬だと距離適性やスピードが重要になってきますが、ばんえい競馬に関しては“天候”が重要な要素になってきます。

雨でコースが濡れていれば摩擦が少なくなるのでソリが進みやすくなるんです。晴れだとタイムが2分以上かかりなかなか勝てない馬が、雨が降ると一変して勝てるといったばん馬も過去にいました。そういった天候条件なども踏まえた得意、不得意を見極める面白さがばんえい競馬にはあると思います。

基本的には、枠順が発表されるレース2日前の時点で当日の天気を予想して、予想紙の作成をしていきます。特に最近だと冬場は天候が急に変わることも多かったので、読みに難しさを感じるレースはありましたね。

『ねっとばんばキンタロー』編集長として、これからどういった発信を考えているのか教えていただきたいです。

インターネットの普及によって誰でも予想できる、見ることができるようになったので、競馬場に来て新聞を買うという文化が減っているなとは感じています。『ねっとばんばキンタロー』を立ち上げた経緯にも、「インターネットを通じた予想紙があれば」という思いがありました。

画像:ばんえい十勝

競馬場で買う紙の予想紙ならではの良さがある一方で、インターネットを通じて届けられる情報や読者の方々がいると思うので、今後もインターネットならではの良さを活かしたうえで『ねっとばんばキンタロー』を作っていけたらなと思っています。

後継者についてなにか考えられていますか。

そうですね。今は1人で対応しているので、そういった方が現れたらぜひ引き継いでいけたらなと思っています。

春の注目馬は……?

板垣さんがこの春注目している馬について教えてください!

年度が変わって重量も軽くなりスピードがある4歳のマルホンリョウユウに注目しています。

画像:ばんえい十勝

なんと前のレース(2024年4月21日)で降級してきた古馬が相手の中で2着! 昨年度から確実に成長しているので、今後も注目していきたいです。

春に若い馬が勝つことはよくあるのでしょうか。

春先は特に3~4歳が成長している時期なので、重量が軽くスピードがある馬が前に出てきやすい時期ではあります。そのため、春のレースでは“成長力”を重視したうえで予想していますね。

画像:ばんえい十勝

あとは、ライジンサンという3歳の馬。3~4歳のなかでも注目したいです。

本日はありがとうございました。最後に記事を見ている方々へ一言、お願いします。

自分で予想ができるようになればばんえい競馬をもっと楽しめると思います。ぜひばんえい競馬に遊びに来てください!

ばんえい競馬をさらに楽しむために欠かせない、専門予想紙『ねっとばんばキンタロー』編集長である板垣さんの「ばんえい競馬が好きで仕事をしている」という熱い思いを垣間見ることができました。

『ねっとばんばキンタロー』を見ながら予想を立てつつ、ぜひばんえい競馬にも遊びに行ってみてくださいね。

文/北海道Likers編集部

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