看板

営業は夕方から!? オープン前から行列ができる「夜のパン屋さん」の正体(札幌市)

札幌に毎月1回、夜だけオープンするパン屋さんがあります。

市内の人気店のパンを取り揃えていますが、売れ残り品が持ち寄られるため、どんな商品が販売されるのかわかりません。ホームレス状態にある人の自立を支援する「ビッグイシューさっぽろ」が運営しており、就労の機会の創設と食品ロス削減が目的。2023年1月26日に開催された『夜のパン屋さん』を紹介します。

イギリス発祥「ビッグイシュー」の取り組み

『ビッグイシュー』は、1991年9月にイギリスの化粧品製造会社創業者、ゴードン・ロディックと、知人でホームレス経験がある、ジョン・バードによって創刊されたストリートペーパーです。ホームレスや生活困窮者が販売することで1冊につき一定額が収入となり、社会復帰への支援を目的としています。

日本では2003年に創刊。2007年9月に「ビッグイシューさっぽろ」が活動を開始しました。

「夜のパン屋さん」はこうして生まれた

料理研究家で「NPO法人ビッグイシュー基金」の共同理事を務める枝元なほみさんは、友人から「帯広で7店舗を展開するパン屋が、売れ残ったパンを1店舗に集めて夜に販売している」という話を聞いて感銘を受けました。

それをヒントに「東京にはたくさんパン屋さんがあるし、夜に軒先などでパンを販売すれば店舗もいらない。寄付金で循環できる環境を作れるかもしれない」とひらめき、紆余曲折の末、2020年10月16日の世界食料デーに、東京都神楽坂の書店の軒先に『夜のパン屋さん』がオープン。話題性も十分で大盛況となりました。

「ビッグイシューさっぽろ」設立15周年の企画としてスタート

2022年11月に札幌でも「ビッグイシューさっぽろ」設立15周年を記念して、北海道大学の近くにある書店「Seesaw Books」の敷地内で『夜のパン屋さん』が開催されました。

ボランティアがパン屋さんを訪れて協力を依頼するゼロからのスタートでしたが、「売れ残りそうなパンを安く買い取り販売することで食品ロスを削減すると同時に、ホームレス状態などの生活困窮者の支援になる」という趣旨に7店舗が理解を示し、約150個を確保しました。

当日は枝元さんのトークショーも行われ、多くの人たちでにぎわったそう。

その後も毎月1回のペースで『夜のパン屋さん』が開催されています。2回目となる12月開催では、6店舗から約170個のパンが提供されました。トークショーは行われないため集客が心配されましたが、なんと90分で完売。

評判を聞きつけた人たちが「夜のパン屋さん」に集まる

年が明けた2023年1月の開催では、協力店が8店舗に増えました。今回は3名を雇用。大寒波にも拘わらず開店前から並ぶ人が見られる盛況ぶりで、16時30分のオープンに伴い行列はどんどん長くなり、売り場はお客さんで埋め尽くされました。人気店のパンが1か所に揃っていることが好評を得ているようです。

美唄市に本店がある「すぎうらベーカリー」は、道産米『おぼろづき』を使った米粉パンが評判のお店です。社長の奥様が福祉関係の仕事をしており、すぐに活動に理解を示してくれたそう。

「障がい者支援施設あっぷ」は、『夜のパン屋さん』のために、ふわふわ食感のシフォンケーキを作ってくれました。

「夜のパン屋さん」継続のために協力店を探しています

3回目の開催は、好評につき約211個(セット含む)が1時間を待たずに完売しました。「ビッグイシューさっぽろ」は、「今後は隔週開催、毎週開催と開催回数を増やし、食品ロスのさらなる削減と雇用者数の拡大を図っていくことが当面の目標」と話しています。

 

次回は2023年2月24日に開催を予定しており、協力してくれるパン屋さんを探しています。毎月1回のペースで開催予定なので、日程はSNS等でご確認ください。

<団体情報>
■ビッグイシューさっぽろ
■住所:北海道札幌市中央区南8条西2丁目5-74 市民活動プラザ星園305号室
⇒SNSなど詳細はこちら