ばんえい競馬の走路整備

「雪でも雨でもレースを開催するために」北海道の大自然とばん馬に寄り添う走路整備の仕事とは

2023.01.13

帯広市では、世界で唯一“ばんえい競馬”が行われています。サラブレッドが“スピード”を競い合う競馬とは違い、ばん馬とよばれる体重1トン余りもあるとても大きな馬達が、500キロ以上もあるソリを曳き進み、その“馬力”を競い合うとてもパワフルな競馬です。

ばん馬たちの歴史は古く、明治初期にはじまる開拓時代の労働力として活躍しました。ばんえい競馬が開催されている「帯広競馬場」は、ばん馬たちの迫力ある豪快な動きに開拓の歴史を垣間見ることもでき、十勝地方を代表する観光スポットとしても有名です。

今回お話を伺ったのは、ばんえい競馬で走路整備を担当する柴田昂輝さん。ばん馬たちがソリを曳くコースの整備をされています。柴田さんにお仕事内容やばんえい競馬で働くやりがいをお聞きしました。

柴田昂輝(しばた・こうき)。1990生まれ、帯広市出身。2017年より現職。走路整備担当として公正なばんえい競馬の運営に携わる一人である。

ばんえい競馬ではたらく人

レースに出走する全てのばん馬たちが公正に力を発揮できるように

北海道LikersライターKawahara:走路整備の方々はどのようなお仕事をされているのでしょうか。

ばんえい競馬走路整備柴田さん

今回の取材はオンラインにて行いました。 出典: 北海道Likers

柴田さん:ばんえい競馬の走路は大量の砂利が敷いてある全長200メートルのコースに、第1障害、第2障害と呼ばれる2つの台形の坂があります。そのコースを毎回レースが終わるたびに平らに整地する作業を行っています。最終的にはトラクターが入りますが、その前に野球場の整備などでよく見かける“トンボ”を使い人力で整える仕事です。ちなみに私たちはトンボのことを「いぶり」と呼んでいます。

馬がソリを曳いてレースを行った後は、さまざまなソリの跡や馬の足跡が残っています。そのまま使用すると競馬開催に支障を来たすので、公正を期すために必ず行う大事な作業です。

北海道LikersライターKawahara:人力で整備されるのはかなりの重労働ですね!

柴田さん:いぶりを使って砂利を押したり、引っ張って平らにしたり……坂の途中での作業となるので、いろいろな姿勢で力を入れながら行っています。台形の坂道を登る方を「表面(おもてめん)」、下っていく方を「裏面(うらめん)」と呼んでいますが、どちらも跡が違います。また重量の重い馬が通過した跡はより深く跡が残りますので、かなりの重労働になりますね。

北海道LikersライターKawahara:ばんえい競馬は春先の一時期を除き、どの季節でも開催されていますよね。冬場などは特に大変そうに見えますが、どんな作業をされているのでしょうか。

ばんえい競馬雪の日のレース

去年の雪の日のレース 出典: ばんえい十勝

柴田さん:冬の時期の開催は、降雪があると障害の部分が凍ってしまうことがあります。走路の平らな部分にはロードヒーティングが入っていますが、障害部分にはありません。まずスコップで氷を砕きながら、いぶりで整地をしています。次のレースまでの限られた時間の中で、出走する全ての馬がしっかりと登っていけるような走路づくりを心掛けています。

北海道Likers ライターKawahara:走路整備は何人で担当されているのですか?

柴田さん:第1障害は4人、「ばんえいポイント」とも呼ばれている第2障害は大きいので8人の総勢12人で行っています。メンバーの年齢層は広く、セカンドキャリアとして70代のスタッフも在籍しています。元々大工や土木の作業をされていた方など、体力自慢が多いですね。もしかしたら30代の私より体力があるのではと思っています(笑)

ばんえい競馬を裏方で支えるやりがい

走路整備の様子

走路整備の様子 出典: ばんえい十勝

北海道LikersライターKawahara:柴田さんはどのようないきさつで、今のお仕事に就くことになったのですか?

柴田さん:私が勤める会社は清掃と設備管理を行っており、その契約先のひとつが帯広競馬場です。就職した当初は帯広市内のビジネスホテルで清掃などの担当をしていましたが、帯広競馬場へ異動になり走路整備に配属されました。まもなく7年目になります。体力勝負の仕事なので私に声がかかったようですが、今までとは全く畑違いの職場でしたので最初は驚きの連続でしたね(笑)

北海道Likers ライターKawahara:お仕事をされる上で、どんなことを心がけていますか。

柴田さん:ばんえい競馬はどんな悪天候でもほぼ予定通り開催されています。外での作業になりますので体調管理には気を付けています。冬場や大雨の開催日は、待機している時間にストーブでしっかり体を温めて万全の態勢で整備するようにしています。

走路整備

チームのメンバーたちと 出典: ばんえい十勝

北海道LikersライターKawahara:どんな時にやりがいを感じますか?

柴田さん:走路整備は体力勝負の厳しい仕事なので、特に夏場などどうしても人手不足になってしまう時があります。チームワークをいかしながら限られたメンバーでどう対応していくか相談しながら作業を進め、最終レースまでしっかりとスムーズにやり遂げられた時に、無事にレースが催行できた安堵感と達成感があります。私たちが担当する走路整備は裏方の仕事になりますので、滞りなく競馬開催ができることが一番だと思います。

北海道Likers ライターKawahara:最後に、ばんえい競馬に興味のある方へメッセージをお願いします。

柴田さん:最近は某アプリゲームの効果もあり、競馬全体に人気が出ているように感じます。「帯広競馬場」で開催されるばんえい競馬は、圧倒的な迫力を感じられるはずです。まだ映像でしか観たことが無いという方がいらしたら、ぜひ「帯広競馬場」にも足を運んでみてほしいです。帯広には美味しい食べ物もたくさんありますのでぜひ遊びにいらしてください。

ーーー柴田さんのお話をお聞きして、ばんえい競馬の開催運営には多くの人が携わっていて、厳しい北海道の自然と向き合いながら、公正に運営するためにそれぞれの役目をしっかりと果たされていることがわかりました。

「帯広競馬場」へ行くと、レースの合間に柴田さんをはじめ走路整備担当の方々が手際よく的確に整備されている姿を見ることができます。ばんえい競馬のディープな楽しみ方の一つとしてもおすすめです!

連載「ばんえい競馬ではたらく人」では、ばんえい競馬を支える仕事に就くさまざまな人の魅力に迫ります。連載記事一覧はこちらから。

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