「ばんスタ」MCの大学生3人に聞く、伝える仕事の難しさと目指すもの
世界で唯一、ばん馬たちが重いソリを曳いてレースを行うばんえい競馬。予想が大きな楽しみであることは平地競馬と変わらず、競馬場内及び中継では解説者の方を交えて予想やばんえい競馬の情報発信を行う番組、『ばんスタ』が放映されています。
今回は『ばんスタ』でMCを務める大学生の3人にお話を伺いました。
徳田新之介(とくだ・しんのすけ)。2001年生まれ、埼玉県出身。帯広畜産大学在学中。2022年3月から『ばんスタ』のMCを務め、番組内では「上様」という愛称で親しまれている。岩見沢記念で重賞初制覇を果たしたインビクタ号に心を奪われている。
飯田依未(いいだ・えみ)。2002年生まれ、北海道出身。帯広畜産大学在学中。2022年5月から『ばんスタ』のMCを務める。昆虫が好きなことから、好きなばん馬はフンコロガシ号。
近藤菜々穂(こんどう・ななほ)。2002年生まれ、長野県出身。帯広畜産大学在学中。2022年5月から『ばんスタ』のMCを務める。馬が大好き。パドックでお客さんの方を見ながら周回する2歳馬・アバシリモミジ号が気になっている。
「ばんスタ」のMCになったきっかけは…
北海道Likersライターりゅうと:ばんえい競馬のスタジオ業務に携わろうと思ったきっかけを教えてください。
徳田さん:大学の部活動が同じで以前『ばんスタ』のMCをしていた江畑咲良(えばた・さくら)さんに誘っていただきスタジオの見学に行きました。実際にMCの仕事を見て「すごいな」「やってみたいな」と思ったのがきっかけです。
飯田さん:私も江畑さんから「こんなアルバイトがあるよ」「向いているよ」と言っていただき、当時ばん馬のことは何もわからなかったのですがスタジオ見学に行きました。とても楽しそうだったのでチャレンジすることにしました。
近藤さん:私は以前、ばん馬を生産している農家さんでアルバイトをしていました。その方が『ばんスタ』のMC業務を行う『OProject(オープロジェクト)』の太田裕士(おおた・ゆうじ)代表と知り合いで『ばんスタ』MCのアルバイトを知ったのがきっかけです。その後、スタジオ見学に行き「面白そうだな」「なかなかできない経験だな」と感じスタートしました。
北海道Likersライターりゅうと:普段はどのように仕事をしていますか。
徳田さん:自分の出番の1時間ほど前にスタジオに行き、担当するレースの出走馬や協賛コメントを確認。本番でミスをしないように出走馬の発音練習などを行います。また、競馬新聞を読んで出走馬やレース、天気などからその日話すことなどをある程度考えておきます。本番では自分の話すことに加え、解説者の方の話を受けてコメントしたり、もう1人のMCへ話を振ったり、お知らせなどを視聴者の方に伝えるのが主な役割です。
北海道Likersライターりゅうと:徳田さんの話を聞いて放送前の準備を入念に行っている印象を受けたのですが、近藤さんと飯田さんは気を付けていることはありますか?
近藤さん:注目馬を挙げる際は、事前に新聞を読んでその馬に注目する理由をしっかりと言えるよう考えています。
飯田さん:私は事前に解説者の方にどの馬がいいか相談しながら準備することが多いです。予想の相談に乗ってくださるだけではなく、番組内で便乗するとツッコんでくれたり、「対立したり競争したりすると面白いんじゃない?」と番組を盛り上げるためのアドバイスをいただくこともあります。
徳田さん:解説者の方がフランクに話してくださるのでありがたいです。放送中もよく助けていただいています。
北海道Likersライターりゅうと:何か印象に残っているエピソードはありますか?
徳田さん:今思い出しても失礼ですが、デビュー間もないころ解説の木本さんと定政さん(ともに競馬ブックトラックマン)の名前を何度も間違えてしまって……。それでも木本さんは優しく、本番では流して、放送後に茶化して和ませてくれました。最近では、僕が嚙んだときに定政さんがいじるようにこちらを見てきます(笑) お茶目で楽しい方々です!
近藤さん:一度放送で定政さんのことをいじるような発言をしたときに「全然いいんだよ!それで番組が面白くなるなら全然いいから!」と言っていただいたことが印象的です。
人に伝える仕事の難しさとやりがい
北海道Likersライターりゅうと:MCの際に心がけていることがあれば教えてください。
近藤さん:以前、お知らせの原稿を読む際にダラダラ長く話してしまったことがあり、太田さんに「ポイントを意識して抑揚をつけて読むといいよ」とアドバイスをいただきました。それからはただ読むのではなく、視聴者の方に伝えることを意識するようになりました。
徳田さん:放送を見返すと緊張していて自分でも何を言っているのかわからないことがあったので、できるだけ落ち着いて話すようにしています。正確に伝える必要のある仕事ですので、焦ってしまいそうになるときこそ周りの話をよく聞いたり、あえて準備してきたことを忘れたりして、いっぱいいっぱいにならないようにしています。
北海道Likersライターりゅうと:仕事を通じてどんなことを伝えていきたいですか。
飯田さん:私は、ばんえい競馬を全く知らない状態から『ばんスタ』のMCを始めたのですが、過去の放送やばんえい競馬のレースを観て「楽しいな」と感じ、今でも仕事を続けています。私のように初めてばんえい競馬を観た人に「楽しいな」「またばんえい競馬を見たいな」と思ってもらえるようなMCがしたいと思っています。
徳田さん:僕はばんえい競馬を観て競馬にはまったので、最初に感じた迫力やドラマ性、馬の魅力を先頭に立って伝えていきたいですね。
近藤さん:レースを観るハードルを下げ、ばんえい競馬をあまり知らない人にも気軽に楽しんでもらえるようにしたいです。
北海道Likersライターりゅうと:これまで大変だったことや印象に残っていることがあれば教えてください。
徳田さん:カメラを向けられ喋ることへの緊張が大きく、慣れるのに時間がかかりました。最近では人に伝える役割であることを意識しているものの、まだまだ番組内で解説者の方に話を聞く際に主観が入りすぎないようにすることは難しいです。
近藤さん:緊張して早口になってしまいそうになることがあるので、そんなときにどう読めば人に伝わりやすいかを考えながら話すのに慣れるまでが大変でしたね。自分ではまだまだだと思っています。
飯田さん:私はたくさんある中でも発音やイントネーションを正しく発音するのに慣れるのが大変でした。正しい発音を教わるのですが、「3番」「ばん馬」など普段使う言葉にも正しい発音と異なることがあり難しかったです。
北海道Likersライターりゅうと:MCを始めてから今までに成長したなと思うことはありますか。
近藤さん:最初は情報が多すぎて何が何だかわからなかった競馬新聞の読み方がわかってきました。解説の方が何をおっしゃっているのかもわかるようになって、よりばんえい競馬を楽しめている気がします。
徳田さん・飯田さん:わかる(笑)
飯田さん:私は馬を見る機会が全然なかったので、馬のことを少し理解できたのがうれしいです。
徳田さん:緊張せずに喋れるようになってきましたね。出演者の方の話を理解して、さらに被せた質問をできるようになってきたと思います。
自分の感じたばんえい競馬の魅力を伝えるために
北海道Likersライターりゅうと:3人の考えるばんえい競馬の魅力を教えてください。
近藤さん:とにかく馬がかわいいということが1番大きいですね。大きい、ごついというイメージに対して、よく見るととてもかわいいということを知ってもらいたいです。
徳田さん:ばん馬の持つギャップに魅力を感じます。体重1トン前後の巨体を持つばん馬ですが、性格は繊細で臆病。『ばんえい十勝』の公式YouTubeに掲載されていた、じっと削蹄をされる様子はかわいくてずっと見ていられます(笑) 北海道内では草ばん馬なども行われていますが、競馬場では世界で唯一、帯広でのみ開催されている点にとても魅力を感じています。
飯田さん:私はコースの横を一緒に歩いて観戦できるのが大きな魅力だと思います。私自身もよく馬を追いかけているんです(笑) 障害があるので最後まで何が起こるかわからずワクワクさせてくれますよね。
北海道Likersライターりゅうと:今後どのようなMCになりたいと考えていますか。また、どのような形でばんえい競馬を盛り上げていきたいと考えていますか。
飯田さん:私自身まだまだばんえい競馬について知らないことが多いので、まずは自分自身がもっとばんえい競馬を楽しめるようになって、それを周りの人に伝えていけるようになりたいと思っています。
近藤さん:『ばんスタ』のMCを始めてからばんえい競馬を本格的に見始めたので、解説者の方が話してくれるような馬一頭一頭の性格など知らないことがまだまだあります。今後は各馬にさらに愛着を持っていきたいです。そして『ばんスタ』を通じてばんえい競馬に踏み出す一歩目のハードルを低くしたいと思っています。
徳田さん:太田さんのMCを見ていると、和気あいあいとしたスタジオの雰囲気はもちろん、ニコニコ動画のコメント欄でも視聴者の方が楽しんでいることが伝わってきます。僕も自分自身が楽しんで、見ている人も楽しませるようなMCになりたいです。そのうえで、自分たちはばんえい競馬を最近知った人と同じ目線で情報を伝えることができるので、ばんえい競馬ビギナーの方にも伝わりやすいMCをしていけたらと思っています。
ーーーばんえい競馬の楽しさを知ってもらうために、まずは自分たちが楽しんで番組を作る。インタビュー中も仲が良く、楽しい雰囲気でお話を聞けたのが印象的で、3人が伝えたいそれぞれのばんえい競馬の魅力が少しでも多くの人に伝わるといいなと感じました。まだまだ成長していく3人の姿に注目です!
<企業情報>
■企業名:OProject株式会社
■公式HP:http://oproject.jp/
連載「ばんえい競馬の未来をつくる人」では、ばんえい競馬で活躍する若者たちに迫ります。伝統文化を次の世代へつなげる彼・彼女たちの想いとは。連載記事一覧はこちらから。
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