アイキャッチ 時計台

「札幌市時計台」は本当にガッカリスポットなのか?札幌市民が調査してみた

「札幌市時計台」は、今から144年前の1878(明治11)年に、明治政府により北海道大学の前身である札幌農学校の校舎として建設されました。1時間ごとに鐘が鳴り響き、市民に時を伝えています。

「札幌市時計台」には毎日観光客が立ち止まり、記念写真を撮影しています。市内随一の観光スポットながら、一部では「ガッカリスポット」と揶揄されており、館内を見学することなく立ち去る人も少なくありません。「札幌市時計台は本当にガッカリスポットなのか」真相を調査してみました。

高層ビルに囲まれた環境が期待を裏切る!?

「札幌市時計台」は、大通公園や札幌駅、札幌市役所にも近く、多くの市民や観光客が往来する道路に面しています。敷地内には撮影用のステージが設置されており、そこでシャッターを切れば、時計台と人物を一緒に撮ることができます。

正面のホテル2階には誰でも利用できるテラスが設けられており、ここから撮影すると時計台全体が写ります。しかし、ビルに囲まれて窮屈そう。高い建物のおかげで、とても小さく見えることも「ガッカリスポット」といわれる理由の一つかもしれません。

では、館内はどうなっているのでしょうか。札幌市民ながら初めて中に入ります。入館料は大人200円。高校生以下は無料。思っていた以上に安いことに驚きました。

最初は時計が設置されていなかった!

「札幌市時計台」は、1878(明治11)年10月に、旧札幌農学校の演武場として建設されました。敷地内に気象観測棟、講堂、学生の宿舎などが時計台を囲むように建っていました。当時の札幌の人口は3千人程度と少なく、これほど大きな街に発展することは誰も予想していなかったでしょう。

落成当時の写真を見ると、現在と大きく違うことに気づきませんか?

実は落成段階では時計が設置されておらず、小さな鐘楼が取り付けられていました。これを見た黒田清隆開拓使長官は「西洋文明の象徴である時計を設置するように」と指示し、アメリカのハワード社に時計が発注されました。しかし送られてきた時計は思ったよりも大きく、開拓使との話し合いの末、大改修が行われ、1881(明治14)年に時計塔が完成しました。

約140年間にわたって時を刻み、鐘を鳴らし続ける

かつて演武場だった2階ホールには、兄弟時計が展示されています。鳩時計と同様の振り子時計で、動力にはおもりを使用しています。おもりは小石を木箱に詰めたもので、運針用が約50kg、打鐘用が約150kg。おもりの巻上げは人力で週2回行っています。

メンテナンスも欠かせません。昭和初期に手入れが不十分なため、止まりかけたことがありました。

近所で時計店を構えていた時計師の井上清さんが修理を申し出たところ、財政的な理由で断られます。「死にそうな人を黙って見て居られるか」と、井上さんは強引に時計塔に登って修理をすることを決断。何週間もかけて分解修理が行われ、再び針が動き始めました。その後は息子の和雄さんが後を継ぎ、現在は和雄さんの指導を受けた2人の職員が保守を行っています。

1872(明治5)年に太陰暦から太陽暦に変更されたのを機に、明治の終わりまで全国に72もの西洋時計塔が建設されましたが、現在も時を刻んでいるのは札幌市時計台だけ。市民には聞き慣れた鐘の音ですが、人々の努力によって約140年も前から時を刻み、鐘を鳴らし続けていると思うと、とても感慨深いですね。

時計台は多彩なカラーバリエーション

時計台は赤い屋根に白い壁のイメージですが、塗装の化学分析によって、これまでに何度も塗り替えられていることが分かりました。

現在の色になったのは1949(昭和24)年以降のことで、最初は茶色い屋根にグレーの外壁、クリーム色や緑のときもあったようです。塗装はすべて上塗りですので、外壁の下に隠されている色に想いを巡らせてください。

時計台は「ガッカリ」ではなく「ビックリ」

札幌農学校といえば、「Boys, be ambitious(少年よ、大志を抱け)」という名言を残したといわれる“クラーク博士”が有名です。館内にはクラーク博士の銅像がベンチに座り、演武場だったホールを見つめています。

クラーク博士は1877(明治10)年に帰国しているので、1878(明治11)年に落成した札幌農学校演武場を訪れたことがありません。長い期間滞在したように思われていますが、着任していたのは9か月間だけ。しかも校長ではなく、教頭という立場でした。

後世までに名を残しているクラーク博士の功績は、時間や役職では計り知れないものだったのでしょうね。

 

時計台はガッカリどころか、知れば知るほど“目からウロコ”なことばかり。これまで疑問に思わなかった事実をたくさん知ることができました。

それでも「ビルに囲まれている姿がガッカリ」という人は、時計台敷地内右側から見上げるように撮影してみてください。たちまち明治時代にタイムスリップ。木立の中に静かにたたずむ時計台が姿を見せてくれますよ。

<施設情報>
■札幌市時計台
■住所:北海道札幌市中央区北1条西2丁目
■電話番号:011-231-0838
⇒開館時間など詳細はこちら

【画像】札幌市時計台

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