偶然見たレースが本気にさせてくれた。厩務員・岩田わかな「馬と心を通わせる」未来の騎手
世界で唯一、ばんえい競馬を開催している帯広競馬場。そこでヘルメットをかぶり、馬たちの健康と勝利を祈りながら伴走している騎手を目指す厩務(きゅうむ)員、それが岩田わかなさんです。
厩務員になろうと思ったきっかけや、実際の厩務員の仕事内容、そして騎手を目指すその志についてお話を伺ってきました。
岩田わかな(いわた・わかな)。2000年生まれ。北海道帯広市出身。ばんえい競馬の小林勝二厩舎所属し、日々厩務員として働きながら騎手を目指して勉強中。
衝撃的な出会いだったオルフェーヴルの引退レース
北海道Likersライター木登りアフロ:オルフェーヴルの引退レースを見て感動したことから競馬に興味を持ったと伺いました。騎手を目指すことになったきっかけを教えてください。
岩田さん:中学生の時にたまたま友人宅でテレビをつけたらちょうどやっていたのがオルフェーヴルの引退レースでした。どんどん差をつけて勝っていく姿がめちゃくちゃかっこよくて、一気に惚れ込んでしまいました。
それまでも母に連れられて帯広競馬場に来ていて馬と触れ合ったことはあったのですが、あのレースを見て改めて馬ってこんなに速くて、力強くて、かっこいい姿を見せられるんだと気づいて、私やっぱり馬が好きなんだと再認識しました。そこから「もっとかっこいい姿が見られるかも」と、馬と関わる仕事に就きたいと思うようになったんです。
最初は騎手というよりは厩務員になりたいと思って、ばんえいの世界に入りました。「馬の隣にいられるだけでいい」、「一緒に暮らせるだけでいい」と思っていたのですが、私の世話をしている馬を勝たせてくれた騎手さんを間近で見た時に「かっこいい!」「騎手ってすごい!」と感じて。自分でも騎手になれるんだろうかと考え始めました。調べてみたら騎手試験というものがあることを知り、もし騎手になれたら違う形で馬と関われるのかなと思って目指すことにしました。
でっかいのに可愛い!そんなばん馬に首ったけ
北海道Likesライター木登りアフロ:ばん馬とサラブレッドは全然姿かたちが違いますが、岩田さん目線で見たそれぞれの魅力をお話していただけますか。
岩田さん:サラブレッドは細さや身体のしなやかさ、走っている姿のかっこよさが魅力です。毛並みの流れや前だけ見て走っているところも断然かっこいいなと思います。ばん馬は大きくて怖いと言われがちなんですけど、関わってみるとめちゃくちゃ優しいんですね。気性も大人しいし顔を寄せても何もしてこないし、そういったところがばん馬の魅力だなと思います。
サラブレッドは遠くからあの走りを見てそのかっこよさを堪能してもらいたいし、ばん馬は怖がらず一歩踏み出してその優しさに触れてほしいという気持ちがあります。ぜひ『ふれあい動物園』でにんじん一本でもあげてそのかわいさに触れてみてください。
自分のことより馬のこと
北海道Likersライター木登りアフロ:ばん馬のお世話をしていて日々感じている大変だと思うことや辛いことはありますか。
岩田さん:やっぱり自分が担当している馬が怪我をした時は本当に辛いです。自分のせいで足を痛めてしまったり体調を崩してしまったりしたことがあるんですけど、その時は「本当にごめんね」と毎日何度も心の中で繰り返していました。寒さも早起きも辛い時はありますが、それよりも何よりもやっぱり馬が辛いことが私にとって辛いです。
北海道Likersライター木登りアフロ:一方で、楽しいことややりがいを感じていることはありますか?
毎日作業が終わると今度は馬たちのお手入れをします。私がお手入れ道具を持つと手入れしてほしいとアピールしてくる姿が本当にかわいくて楽しいです。意外と馬って厩務員たちのことを見ているので、レースをゴールした馬に近寄ると「早く帰ろう」って顔をしたり「疲れたんだけど~!」とアピールしてきたりするんです。それがまたかわいくて「お疲れ、頑張ったね~!」「お帰り」と撫でてあげられることが何よりうれしいです。一着じゃなくてもあの瞬間を無事に迎えられることが何よりやりがいを感じます。
好きならとことんやってみて
北海道Likersライター木登りアフロ:今現在、騎手を目指すにあたって特別取り組んでいることはありますか?
岩田さん:去年受けた騎手試験*では学科試験で落ちてしまったので、毎日テキストを読んだり、法律の冊子を見たりするようにしています。あとはテレビを観たりして時事問題にも備えています。
実技面では、なるべく朝の運動の時に立って乗るようにしています。やはり座って見る景色と、立って見る景色では全然違います。あとは、できるだけ馬の耳を気にしながら声をかけるようにしています。高校の時、先生に馬の耳が前を見ていたら後ろにいる自分に関心を持っていない証拠だから、馬の耳がちゃんと後ろを向いている状態を常に意識しなさいと教えてもらいました。今年も夏に試験を受ける予定なので、まずは学科をクリアできるように頑張ります!
*騎手試験事項には「身体」「学力」「面接」「実技」がある
北海道Likersライター木登りアフロ:応援しています! では最後にこれから岩田さんのようにばんえい競馬に関わるお仕事がしたいと思っている方へメッセージをお願いします。
岩田さん:「私大丈夫かな」、「資格いるのかな」とかは思わず、馬が好きやってみたいという想いがあるのであれば、とにかく中の人に声をかけてみてほしいです。やはりこの世界はつながりが大切なので、どんどんトライしていってほしいなと思います。必ず手を差し伸べてくれる人はいます。私もそうでした。周りの「難しいのでは」という声で諦めることなく、どんな小さなきっかけでもいいので自分から行動してみてほしいです。
―――馬に対する熱い想いがほとばしる岩田さん。彼女の猪突猛進な姿は筆者の心を震わせてくれました。厩務員として、そして未来の騎手として大好きな時間を楽しみながらばんえい競馬を盛り上がっていってほしいです。
ばんえい女子とは:
世界で唯一、帯広競馬場でしか見ることができないばん馬によるレース“ばんえい競馬”。大きな馬と騎手が生み出す、力強い迫力は見る者を圧倒します。そんな「ばんえい競馬(ばんえい十勝)」を主催する北海道帯広市と、インターネット勝馬投票券(馬券)購入サイト『楽天競馬』を運営する楽天グループの競馬モール株式会社が実施する「ばんえい十勝応援企画」は、ばんえい競馬を通じた地域振興の取り組み。本企画では、騎手や調教師など、ばんえい競馬を盛り上げ、支える女性たちの活躍に迫ります。彼女たちだからこそ知っている、ばんえい競馬の魅力とは?
【画像】ばんえい十勝
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