槻舘調教師とフクスケ

「馬を好きになって」ばんえい競馬の名伯楽、服部義幸調教師が語る!ふれあい動物園の魅力

2022.01.31

北海道民の宝物として選ばれた北海道遺産の中に、『北海道の馬文化』があります。現在、帯広市で開催されているばんえい競馬で活躍するばん馬もそのひとつです。ばん馬たちの多くは、明治の開拓時代に労働力として活躍した農耕馬の子孫にあたります。

現在もばん馬にたずさわる人々との距離はとても近く、馬たちの住むきゅう舎と同じ建物に住み、1年中ともに生活をしています。

今回お話を伺ったのはばんえい競馬調教師の服部義幸さん。帯広競馬場内にある『ふれあい動物園』の園長でもあります。競馬とはひと味違う『ふれあい動物園』の魅力をお聞きしました。

服部義幸(はっとり・よしゆき)。1947年生、北海道川上郡弟子屈町出身。会社員を経験後27歳でばんえい競馬の世界に入る。9年間の騎手生活を経て1985年に調教師に転身。

通算勝利数2,611は、ばんえい競馬調教師として最多であり、現在も自身の記録を更新中(2022年1月17日現在)。『ふれあい動物園』の園長も兼任し、ばんえい競馬の発展に尽力をつくす調教師である。

ばん馬とふれあって馬のことをもっと知ってほしい

服部調教師

今回の取材はオンラインで行いました。

北海道LikersライターKawahara:競馬場内に『ふれあい動物園』を作られたいきさつを教えてください。ばんえい競馬が道内4市で開催*されていた時代にもあったのでしょうか。

旭川で開催されたイベント 出典: ばんえい十勝

服部調教師:イベントがあったときにばん馬のリッキー*が馬車を引いたりすることはありましたが、4市で開催している時代には動物園はありませんでした。『ふれあい動物園』が設立されたのは2007年にばんえい競馬が帯広市単独開催になってからです。

競馬場には700頭あまりのばん馬たちがいるのに、お客さんから近いところで見てもらったり、ふれてもらったりする機会がないのは何だか不自然なような気がしていました。そこで当時の委員長に相談したところ、話はとんとん拍子で進み設立となりました。

*ばんえい競馬は2006年度まで帯広市、旭川市、岩見沢市、北見市の4市で開催されており、2007年度からは帯広市単独での開催が続いています。
*ばん馬のリッキー:ばんえい競馬の初代PR馬。2006年の存廃問題時から2019年までばんえい競馬のPRのために全国をかけめぐりました。温厚な性格からたくさんの人々に愛されました。

北海道LikersライターKawahara:『ふれあい動物園』ができあがるまでの思い出に残るエピソードを教えてください。

リッキー

リッキーと馬小屋(2014年当時) 出典: ばんえい十勝

服部調教師:最初はリッキーの馬小屋を手作りで建てました。調教師さんや騎手さんやらが一生懸命やってくれてね。その後(同じPR馬の)ミルキー号の馬小屋を作り、ポニーも1頭2頭と増やしました。そんな感じでだんだんと動物園らしくなっていきました。

馬を好きになって本当のばんえい競馬を知ってもらいたい

北海道LikersライターKawahara:帯広競馬場にあるからこその良さはどんなところでしょうか。

服部調教師:来場されたお客さんに、大きなばん馬達と間近でふれあってもらえるようになったことです。最初のころは大きな馬が怖くて恐ろしいという印象があったようですが、そばに行ってみたらそれほど恐ろしくないし、おとなしくてやさしい馬たちだとお客さんに伝わったのだと思います。みなさんずいぶんと楽しんでくれるようになりました。

北海道LikersライターKawahara:『ふれあい動物園』の存在は今後どうあってほしいと思いますか。

服部調教師:競馬場の印象は賭けごとをする場所という感覚の人が多いのだと思います。けれども『ふれあい動物園』に来てくれたお客さんには「馬券売り場はあちらですよ」などとは極力言わないようにしています。

それは、『ふれあい動物園』では競馬とはまるっきり別なものとして、純粋にばん馬を近くで見てもらったり、馬と遊んでもらったりしたいからです。来てくれたお客さんにばん馬を好きになってもらえるような場所になったらいいなと思います。賭けごととは関係なく、「だれでも来てもらって馬とふれあう場所であってほしい」それが本来自分たちのやりたかったことです。

まずは馬を好きになってもらいたい。好きになってくれた人の中には、次第に競馬にも興味を持つようになり今では馬券を買うようになった人たちもいます。『ふれあい動物園』を作ったころ子どもだったたくさんの子たちが大人になってから帯広競馬場に馬券を買いに来てくれています。それはうれしいことです。『ふれあい動物園』を通じて、競馬場のイメージを変えることができたような気がします。

馬とふれあうことの楽しさを体感してほしい

北海道LikersライターKawahara:『ふれあい動物園』を作ってよかったと思うのはどんなことでしょうか。地域の方々ともたくさんの交流があるようですね。

2008年 ふれあい動物園2

『ふれあい動物園』には笑顔があふれる(2008年頃) 出典: ばんえい十勝

服部調教師:保育所の園児たちや小学校の授業の一環として『ふれあい動物園』に来てくれたときや、障害を持つ子どもたちが馬に乗ってくれたときに「作ってよかった」と感じました。そうやってばん馬とふれあってくれることがとてもうれしいです。

馬にはとても乗れないだろうという障害を持った子どもが来たときに、「がんばって乗ってみな」と声を掛け乗せてみたら、その子が馬を大好きになってくれました。きっと馬が持つ優しさをわかってくれたのだろうと思います。その子は現在札幌に住んでいるのですが、今も手紙をくれたり、帯広に来たときは必ず『ふれあい動物園』に立ち寄ってくれます。

また、『ふれあい動物園』では、地元の方向けに乗馬サークルをやっているのですが、一番驚いたのは70歳くらいの女性の方がサークルに入ってくれて、「我先に!」といった感じで馬にまたがって楽しんで乗馬をしていたことです。そんな姿を見ると、『ふれあい動物園』をやっていてよかったなと思います。

北海道LikersライターKawahara:これから『ふれあい動物園』に足を運びたいと考えている方やまだ訪れたことのない方に向けてメッセージをお願いします。

服部調教師:たくさんの馬たちが、笑顔で優しく来てくれるお客さんを迎えてくれますので、ぜひ一度馬に会いに来てください。

―――馬券の売上減少による累積赤字の増大のため一度は廃止の危機に瀕したばんえい競馬も、2007年度の帯広市単独開催で再スタートをきってから今年で16年目を迎えます。

この15年間は継続困難でやむなく廃止された地方競馬場もあった過酷な時代で、ばんえい競馬にとっても決して平坦な道のりではなかったと思います。

そんな中でもこうしてばんえい競馬が続けられていること、『ふれあい動物園』がたくさんの人々に愛されていること、それはひとえに服部調教師をはじめ、ばんえい競馬を支える人々が「一人でも多くの人にばんえい競馬を好きになってもらいたい」という小さな努力の積み重ねの上にあることをあらためて感じました。

『ふれあい動物園』では、ばん馬たち以外にも、うさぎやあの十勝を舞台にした朝ドラのポスターにも載ったニワトリたちにも会えます! 帯広競馬場は帯広駅からも近くアクセス良好。ぜひ帯広競馬場の『ふれあい動物園』でばん馬やかわいい動物達とふれあってみてくださいね。

<施設情報>
■施設名:ばんえい十勝 ふれあい動物園
■住所:北海道帯広市西13条南9丁目
■営業日:土・日・月の競馬開催日、水曜・木曜・金曜(火曜定休日)
※レース開催時間などは公式HPをご確認ください。
■営業時間:開門~17時
■公式HP:https://banei-keiba.or.jp/

【画像】ばんえい十勝