競馬ライター小久保友香さん

「独特な魅力にハマる」競馬ライター・小久保友香が語るばんえい競馬、唯一無二の面白さとは

2022.02.08

北海道・帯広市で行われているばんえい競馬。現在の開催地は世界で唯一帯広だけですが、2006年までは旭川・帯広・北見・岩見沢の道内4箇所で開催されていました。

今回は2006年のばんえい競馬の存続運動にも関わり、ばんえい競馬を中心とする競馬ライターとして活躍中の小久保友香さんにお話を伺いました。

小久保友香(こくぼ・ゆか)。1974年生まれ、北海道札幌市出身、帯広市在住。ばんえい競馬を中心とした競馬ライターで北海道新聞HotMediaに所属し、ばんえい競馬やグルメ、イベント等の情報を発信している。Twitterにはばん馬専用アカウントも。

競馬情報から十勝の馬文化まで

小久保さんおすすめの「マテナ珈琲」

とかちむらのラウンジにて 出典: 北海道Likers

北海道Likersライターたてかわ:競馬ライターとしての主な仕事内容を教えてください。

小久保さん:競馬の媒体、特に地方競馬のウェブメディアのばんえいを担当することが多いです。インタビューやレース回顧、牧場に行った時の記事をまとめて出すことが今の主な仕事です。それ以外にはホッカイドウ競馬について書くこともあります。

そのほかには、北海道新聞帯広支社の地域面を担当しています。『サタデーBANBA』でばんえい関連の情報と、グルメ、イベント関係の記事を書いていますが、北海道新聞の記者ではないんです。現在は北海道新聞HotMediaという会社に所属しています。

記事では積極的に馬を取り上げるのが私のモットーです。十勝に根付く馬文化は他にはない魅力があるので、ばんえい以外にも幅広く馬文化を取り上げていきたいと思っています。

競馬の情報を載せられる媒体は限られていますが、取材したいことはたくさんあります。そこで、ほぼライフワークとしてInstagramTwitterの更新をしています。私はライターとして、写真はフォトグラファーの夫に撮ってもらうことが多いです。

野球好きから馬の虜に

北海道Likersライターたてかわ:小久保さんの競馬との出会いを教えてください。

小久保さん:学生時代は野球が好きで、もともとスポーツ記者を目指していたんです。記者になるために他にもスポーツを覚えようと、競馬を見るようになり、1997年に初めて札幌競馬場を訪れました。中央競馬を見ているうちに、地方競馬も好きになっていきました。そこから色々な馬を知りたくなり、乗馬をやってみたり、馬産地で写真を撮ったりするようにもなりました。

ばんえい競馬でサカノタイソンが連勝しているらしいということを知り、行くなら「ばんえい記念」だということで、2001年に見に行きました。そこで1トンを曳く「ばんえい記念」の力強さに魅せられ、帯広競馬場に行って写真を撮るようになりました。

2001年ばんえい記念サカノタイソン

初「ばんえい記念」にて、当時活躍していたサカノタイソン(画像提供:小久保友香さん)

当時はまだ記者ではなくファンという立場でしたが、札幌で働きながら「ばんえいを知ってもらえたらいいな」と趣味のブログで写真をアップしていました。インターネットの登場で自分の文章を簡単に世に出すことができるようになったので、競馬の記事は趣味として書ければいいと思っていたんです。

そして2006年。「今年はばんえいについて勉強する年にしよう」と思い、調べて楽しくなってきた時、ばんえい競馬の存続危機に直面。まだまだSNSの時代ではありませんでしたが、他の人と協力して署名運動を行なったり、ばんえい競馬の存続について書いている人のブログに「まだ道はあるからみんなで応援していきましょう」とコメントを残すなど存続に向けた活動をしていました。

北海道Likersライターたてかわ:どのようなきっかけで競馬ライターのお仕事を始めることになったのでしょうか。

小久保さん:存続運動を通じて、騎手などばんえい競馬の関係者の知り合いができました。ある時、地方競馬雑誌の編集長から声がかかり、「ばんえいの騎手のインタビューをやってみないか」という依頼をいただいて「自信はないけどやってみよう!」と始めたのが最初です。そこからだんだんレース回顧などを頼まれるようになりました。

その後、当時就いていた仕事を辞めて就職活動をしていた時に、知り合いから「今の会社辞めるんだけど、受けてみない?」と声がかかりました。それが今働いている会社です。地域に根ざした記事を書く部署なので、1週間くらいですぐに帯広に移住しました。スポーツ新聞記者を諦めた過去があるので、夢が叶ったという言い方は少し違うかもしれないけれど、ばんえいと出会ったことで人生が変わったのは間違いありません。

北海道Likersライターたてかわ:これまでで特に印象に残っているお仕事はありますか。

ウンカイ

大種牡馬として知られるウンカイ(画像提供:小久保友香さん)

小久保さん:これだと絞れるものではなく色々な仕事が印象に残っていますが、やはり取材ではなく、存続運動のことが印象に残りすぎていますね。今でも何かあったらばんえい競馬はなくなってしまうかもしれないと、2006年11月北見競馬の最終日に感じた思いと同じ危機感を持って取材を続けています。

その他には、歴史や普段は見えない裏側で支える人々の取材もとても印象に残っています。ウンカイが種牡馬として過ごしていた牧場や、調教師、主戦騎手の話を伝えられたことがうれしかったです。また、ばんえい競馬では、調教師が主体となって学校訪問や幼稚園での馬車やふれあい体験などが行われているのですが、ギャンブルだったものが馬文化として地域に根付いてきていることを紹介できたこともよかったなと思っていることのひとつです。

競馬としての面白さを伝えたい

北海道Likersライターたてかわ:ばんえい競馬の情報を発信していく中で大変なことはありますか。

小久保さん:今が一番大変ですね。新型コロナウイルスの影響で厩舎の中に入ることができません。一番は馬と人のドラマを伝えたいんです。厩務員さんに話を聞きたい、馬を紹介したい。でもそれは厩舎の中でしかできないこと。やりたいけどできないことが一番辛いです。伝えきれないこの間に引退してしまう馬もいるので、理想と現実のギャップに苦しんでいます。

北海道Likersライターたてかわ:現在力を入れていること、そして今後の展望を教えてください。

小久保さん:ばんえい競馬の歴史や馬産地、働く馬、軍馬について調べたいと思っています。ばん馬の根っこの部分を紐解き、ばんえい競馬の紹介につなげたいです。

“競馬としてのばんえい”を紹介したいという思いもあります。ばん馬はかわいいけど、競走馬であり、日々勝つためにトレーニングをしていて、勝つことが誉です。そうやって頂点に立った馬たちを紹介することが大事だと考えています。アスリートとしての紹介、スポーツ目線を個人的には大事にしていきたいです。騎手が考えていること、ちょっとの差で変わること……そんな競馬としての面白さを伝えていけたらと思っています。

そして今後は、ばんえい競馬のメディアでの存在意義を上げていきたいです。スポーツとしてばんえい競馬を取り上げるメディアが少ないんです。競馬としての楽しさを伝えるメディアが少ないので、文字媒体で伝える機会や伝えられる人を増やしていきたいです。だから今回の『北海道Likers』の地元の発信者増やす企画*にはとても期待しています! ぜひどんどんばんえい競馬の面白さを取材していただきたいです。

* 『北海道Likers』では、楽天競馬協賛のもと、帯広・十勝の情報発信を担う人材を育成するライター講座を実施した

存続危機の時、ばんえいを盛り上げるために写真を無償で配っていたんです。しかし、ある騎手の方から「ばんえいを盛り上げるには、お金をもらって経済を回さないといけない」と言われハッとしました。そこからちゃんとお金をもらって、メディアを経済活動として回していかなければならないと感じています。

もちろんお金をもらってプロとしてやっていても、“ファン目線”はとても大切にしています。ファンとして見えるもの大事にしながら伝えていきたいと思っています。

北海道Likersライターたてかわ:では最後に、ばんえい競馬の好きなところを一言で教えてください。

小久保さん:「馬と人とのつながり」です。ばんえい競馬に関わる人たちには独特の魅力があります。存続危機の時もこの人たちを悲しませたくないと思ったのが一番でした。平地競馬も見てきたなかで、ばんえいの良さは人だと言えます。だからこそ、ばんえい競馬のスタイルから誤解されてしまうことは辛く感じます。競馬自体の存在意義という部分も含めて、この誤解を解くことは永遠のテーマです。

―――筆者にとってはライターの大先輩である小久保さん。小久保さんだからこそ知る歴史や、ばんえい競馬への願いを伺うことができました。これまでも、そしてこれからもばんえい競馬の魅力を伝え続ける小久保さんの活動に注目です。

ばんえい女子とは:
世界で唯一、帯広競馬場でしか見ることができないばん馬によるレース“ばんえい競馬”。大きな馬と騎手が生み出す、力強い迫力は見る者を圧倒します。そんな「ばんえい競馬(ばんえい十勝)」を主催する北海道帯広市と、インターネット勝馬投票券(馬券)購入サイト『楽天競馬』を運営する楽天グループの競馬モール株式会社が実施する「ばんえい十勝応援企画」は、ばんえい競馬を通じた地域振興の取り組み。本企画では、騎手や調教師など、ばんえい競馬を盛り上げ、支える女性たちの活躍に迫ります。彼女たちだからこそ知っている、ばんえい競馬の魅力とは?

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ばんえい十勝応援企画とは?

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