白い背景に編み上げた赤い手袋

これ、なんていう?どこか懐かしい「冬の必需品」の呼び名は…【北海道弁講座】

2021.10.06

北海道では10月ともなると初雪が降ることもあり、冬の訪れを感じ始めます。そんな冬には手に“あるもの”を装着しますよね。「えっ、手袋じゃないの?」そのとおりです。しかし、北海道ではある手袋のことを、標準語とは違う名前で呼びます。

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これ、なんていう?

親指とほかの指の2つに分かれている手袋。さて、これをなんといいますか?

いわゆる“ミトン”です。道外の方でもイメージしやすいものでいうと、鍋つかみと同じ形ですね。

これを北海道では「ぼっこ手袋」といいます。

筆者がぼっこ手袋を使っていたのは幼い頃。幼稚園や保育園での雪遊び、小学校低学年でのスキー授業などでは、ぼっこ手袋をしていました。その後は5本指の手袋をするようになったため、ぼっこ手袋を思い浮かべると懐かしい気持ちになります。

「ぼっこ」は「棒」が由来?

「ぼっこ手袋」の由来について調べてみましたが、残念ながらくわしいことはわかりませんでした。そこで言葉から推察! まずは「ぼっこ」=「棒」説。

北海道弁で「棒」を「ぼっこ」といいます。「いい木の棒、見つけた!」であれば、「いい木のぼっこ、見つけた!」というのが道産子流です。

人差し指から小指までがつながったぼっこ手袋は、棒のように細長く見えなくもない……? 「ぼっこ」=「棒」のような手袋、という意味なのかもしれません。

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それとも「ぼろ布」から?

冬の装備として、ぼっこ手袋以外にも「ぼっこ」とつくものがあります。それが「ぼっこ足袋」。ぼろ布を何枚も縫い合わせて作った防寒用の履き物で、「ぼっこ靴」ともいうそうです。

この場合の「ぼっこ」は「ぼろ布」の意味。岐阜県や山梨県、静岡県では「ぼっこ」=「ぼろ布」、新潟県や長野県、山形県、三重県では「ぼっこ」=「ぼろ着物」の意味で用いるのだとか。

もしかすると、使い古したぼろ布や着古したぼろ着物で作られた手袋のことを「ぼっこ手袋」と呼んでいたのかもしれませんね。

道産子は手袋を「はく」

ここでもうひとつ、“手袋”にまつわる北海道弁をご紹介します。寒い冬はぼっこ手袋を“はきます”。そう、「手袋を“はく”」というのが北海道弁です。

標準語では「手袋をつける」、「手袋をはめる」、「手袋を装着する」などといいますよね。“はく”と表現するのはパンツやスカート、靴下、靴など下半身で身につけるものだけです。しかし、北海道民にとって、手袋は“はく”もの。もちろん「ぼっこ手袋」も“はきます”。

筆者は「手袋を“はく”」が方言だと知ったとき、「“はく”以外で代わりになんというの?」と思ってしまったくらい、自然に使っていました。“つける”でも“はめる”でも“装着する”でもなく、“はく”がしっくりとくる表現なのです。

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ぼっこ手袋は寒いときでも手をあたためてくれる冬の必需品です。北海道の厳しい冬を乗り越えられるよう、防寒はお忘れなく。

【参考】
三省堂 現代新国語辞典 第六版、長万部町、小樽市役所、帯広大谷短期大学紀要 開学50周年記念号(第48号)2011年3月
暮らしコーナー / 長万部町
おたる坂まち散歩 港を見つめる船見坂 後編 / 小樽市役所
北海道語について(Ⅱ)-十勝の方言を中心にして- 池添 博彦 / 帯広大谷短期大学紀要 開学50周年記念号(第48号)2011年3月

【画像】5 second Studio、Olga Danylenko、ustun ibisoglu、Vasilii_ko / shutterstock、ハル / PIXTA(ピクスタ)