これ、なんていう?どこか懐かしい「冬の必需品」の呼び名は…【北海道弁講座】
北海道では10月ともなると初雪が降ることもあり、冬の訪れを感じ始めます。そんな冬には手に“あるもの”を装着しますよね。「えっ、手袋じゃないの?」そのとおりです。しかし、北海道ではある手袋のことを、標準語とは違う名前で呼びます。
【こちらもおすすめ!】
本州では通じないかも!? 実は方言だった、北海道弁の挨拶や頻出フレーズ3つ
これ、なんていう?
親指とほかの指の2つに分かれている手袋。さて、これをなんといいますか?
いわゆる“ミトン”です。道外の方でもイメージしやすいものでいうと、鍋つかみと同じ形ですね。
これを北海道では「ぼっこ手袋」といいます。
筆者がぼっこ手袋を使っていたのは幼い頃。幼稚園や保育園での雪遊び、小学校低学年でのスキー授業などでは、ぼっこ手袋をしていました。その後は5本指の手袋をするようになったため、ぼっこ手袋を思い浮かべると懐かしい気持ちになります。
「ぼっこ」は「棒」が由来?
「ぼっこ手袋」の由来について調べてみましたが、残念ながらくわしいことはわかりませんでした。そこで言葉から推察! まずは「ぼっこ」=「棒」説。
北海道弁で「棒」を「ぼっこ」といいます。「いい木の棒、見つけた!」であれば、「いい木のぼっこ、見つけた!」というのが道産子流です。
人差し指から小指までがつながったぼっこ手袋は、棒のように細長く見えなくもない……? 「ぼっこ」=「棒」のような手袋、という意味なのかもしれません。
【関連記事】方言だと気がつかず使いがち!北海道民が言う「ぼっこ」の意味とは
それとも「ぼろ布」から?
冬の装備として、ぼっこ手袋以外にも「ぼっこ」とつくものがあります。それが「ぼっこ足袋」。ぼろ布を何枚も縫い合わせて作った防寒用の履き物で、「ぼっこ靴」ともいうそうです。
この場合の「ぼっこ」は「ぼろ布」の意味。岐阜県や山梨県、静岡県では「ぼっこ」=「ぼろ布」、新潟県や長野県、山形県、三重県では「ぼっこ」=「ぼろ着物」の意味で用いるのだとか。
もしかすると、使い古したぼろ布や着古したぼろ着物で作られた手袋のことを「ぼっこ手袋」と呼んでいたのかもしれませんね。
道産子は手袋を「はく」
ここでもうひとつ、“手袋”にまつわる北海道弁をご紹介します。寒い冬はぼっこ手袋を“はきます”。そう、「手袋を“はく”」というのが北海道弁です。
標準語では「手袋をつける」、「手袋をはめる」、「手袋を装着する」などといいますよね。“はく”と表現するのはパンツやスカート、靴下、靴など下半身で身につけるものだけです。しかし、北海道民にとって、手袋は“はく”もの。もちろん「ぼっこ手袋」も“はきます”。
筆者は「手袋を“はく”」が方言だと知ったとき、「“はく”以外で代わりになんというの?」と思ってしまったくらい、自然に使っていました。“つける”でも“はめる”でも“装着する”でもなく、“はく”がしっくりとくる表現なのです。
【関連記事】北海道民は手袋をはめずに「はく」!手袋の発祥に理由が…
ぼっこ手袋は寒いときでも手をあたためてくれる冬の必需品です。北海道の厳しい冬を乗り越えられるよう、防寒はお忘れなく。
【参考】
三省堂 現代新国語辞典 第六版、長万部町、小樽市役所、帯広大谷短期大学紀要 開学50周年記念号(第48号)2011年3月
暮らしコーナー / 長万部町
おたる坂まち散歩 港を見つめる船見坂 後編 / 小樽市役所
北海道語について(Ⅱ)-十勝の方言を中心にして- 池添 博彦 / 帯広大谷短期大学紀要 開学50周年記念号(第48号)2011年3月
【画像】5 second Studio、Olga Danylenko、ustun ibisoglu、Vasilii_ko / shutterstock、ハル / PIXTA(ピクスタ)