まるでそこはパラダイス。地元職人に聞いた、オホーツクの知られざる3つの魅力【流氷硝子館工房長・軍司昇】
「オホーツクは海も畑も自然も豊かで、僕にとってはパラダイスのような場所」と笑顔で語るのは、網走市内に工房を置く流氷硝子館・工房長の軍司昇さん。硝子づくりのほかにオホーツクの観光も手掛ける軍司さんの“HOKKAIDO LOVE! ”に迫りました。
軍司昇(ぐんじ・のぼる)1979年生まれ。北海道・網走市出身で、同市の流氷硝子館・工房長。オホーツクの流氷や雪を表現する硝子作家。地域観光の新たな拠点施設『Connectrip(コネクトリップ)』を立ち上げ、自身もカヤックツアーなどのインストラクターを務める。
HOKKAIDO LOVE! なこと1:一次産業や歴史にふれるアクティビティ体験
北海道Likersライターsorakaze:流氷硝子のほかに、地域の歴史や観光地、人をつなげた旅の提案を行っている『コネクトリップ』も手掛けていらっしゃいます。具体的にどのようなことを行っているのでしょう?
軍司さん:『コネクトリップ』は、オホーツクの一次産業や歴史、観光地をconnect(コネクト)したtrip(旅)として、新しい旅のあり方をご提案する拠点施設です。オホーツクの自然や特産物を生かした体験やツアーを提供しています。
北海道Likersライターsorakaze:どんな思いで立ち上げられたのでしょうか。
軍司さん:オホーツクは漁業や農業にとって最高のフィールドですが、いいものがあり過ぎてなのか、はたまた地名がロシア語由来だからなのか、ブランド力としてはほかの地域に比べて弱いと感じています。網走=監獄というイメージが強いですよね。
オホーツクでは、農林水産省が20年以上前から推進している“グリーンツーリズム”という取り組みを農家さん自身が行っていました。グリーンツーリズムは、旅行者と一次産業をつなげる観光のあり方のこと。ですが、農家さんが繁忙期に畑を案内するのはかなり酷なことで、農作業と観光業の両立は難しかったのです。
そこで我々は、畑を案内できるようなガイドさんが別に必要だと思い立ちました。旅行者がそのまま土足で畑に入っては病害虫の原因になりますし、漁業でいえば勝手に漁場に入られるのも問題になってしまう。一次産業にも精通しているガイドを育てる必要性を感じたことが『コネクトリップ』のはじまりです。
北海道Likersライターsorakaze:『コネクトリップ』では畑散策ツアーやピザづくり体験などさまざまなアクティビティを楽しめますが、軍司さんのイチオシはなんでしょうか。
軍司さん:今一番人気なのが、“カヤック”です。
旅行者の方に、網走の一次産業の魅力をストレートに伝えようとしてもマニアックな人でない限り飛びつかない。そこで、『コネクトリップ』のカヤック体験は楽しいアクティビティをしながらも、たくさんのオホーツクの魅力を刷り込んでいくような形で展開しているんです。
たとえば、昔網走刑務所の農場だった場所を観光農園化している「大曲湖畔園地」までカヤックで乗り付けて野菜の収穫体験を行うツアーがあります。また、ツアー中に通る、網走川河口に、アイヌの人たちとは文化が異なる“オホーツク人”が昔住んでいた「モヨロ貝塚」という遺跡があるので道中で歴史の話をしたり。
カヤックを楽しんでいるうちに一次産業や歴史に触れてもらえるようにしています。
<LOVE! 情報>
■サービス名:コネクトリップ
■住所:北海道網走市字呼人812-2
■電話番号:050-1099-3708
■営業時間:9~16時
HOKKAIDO LOVE! なこと2:知る人ぞ知る!オホーツクは絶好の水遊びが楽しめるフィールド
北海道Likersライターsorakaze:軍司さんは網走でできるどんな体験がお好きなんですか?
軍司さん:サーフィンやボードに立ちパドルを漕いで水面を進んでいく、SUP(サップ)などのアクティビティはいいですよ。網走って実は水辺が多い場所です。あまりそのイメージがないかもしれませんが、湖もたくさんあるし、川も海もあって。
硝子の修行で沖縄にいたこともありますが、南の海は水温が高くて入りやすいですよね。一方で、網走の海は冷たいですし、北海道の人ですら「海は怖いもの」と思っていて、「落ちると寒くて危険だから、あまり入らないようにしよう」という感覚が根付いています。でも必要な装備と知識を持てば、沖縄の海と同じように楽しめるんです。
僕自身、沖縄でサーフィンをはじめてから、海で感じる自然の偉大さに魅了されました。海は、地球と月の引力で大きく変化します。新月や満月になると引力が強く、そのときに低気圧がくると波が大きくなる。そのバランスや地球の上に生きていることを体感する感覚にどんどんハマっていくんです。
北海道でも、もっと海の良さを知ってほしい。海の中のきれいな世界も見えるし、そこから地元の良さも感じられると思っています。
HOKKAIDO LOVE! なこと3:自然も人とのつながりも。オホーツクにはすべてが揃っている
北海道Likersライターsorakaze:オホーツクを楽しむなかで、一番おすすめの季節はいつでしょうか。
軍司さん:ベストな季節ですか……。それぞれの季節に良いところがあるので、観光客の方にはいろいろな季節に来てほしいです。
春に畑の土を起こす作業があるのですが、朝その畑から湯気が立っていてとても綺麗なんです。7~8月頃は小麦や大麦畑の黄金色とフサフサとした景色。あの景色はそこに立ってみないとわからないですよ。もちろん流氷の時期もすごく綺麗です。
北海道Likersライターsorakaze:オホーツクといえば流氷のイメージが強いですが、流氷を間近で体験することは可能なのですか?
軍司さん:今、“流氷カヤック”というものを実施しようと考えていて、漁業組合の方や漁師さんたちにもプラスになるように連携を取りながら準備を進めていますよ。実は網走の海で事故が起こると助けに行くのは漁師さんなんです。だから漁師さんたちとの関係性はすごく大切。時間はかかりますが、それが僕らのやり方です。
北海道Likersライターsorakaze:漁師さんにとって海は仕事場なので、ツアーにそういった配慮があると旅行者も気持ちいいですよね。
軍司さん:そうなんです。ただカヤックなどを楽しむだけでは味わえない感動を与えられると思っています。
先日カヌーでオホーツク海の二ツ岩の裏に行ったとき、ちょうど知り合いの漁師さんがウニ漁をしていたので、実際の漁を見せてもらいました。
すると本州から来たカヌーイストがすごく喜んで、「網走がこんなに良いフィールドとは思わなかった。道東に来ると、知床やカヌーが有名な釧路川ばかり行っていたけど、空港に降りて30分でこんなに楽しい場所があるなんて」と。そんな声を聞いたら、ますますみんなが知らない網走の魅力を伝えたくなりましたね。
人とのつながりを大事にしながらツアーをつくっていくことで漁の見学や獲れたて海産物の実食などほかの地域ではできない体験を多くの方に提供できると思っています。
北海道Likersライターsorakaze:最後に軍司さんにとってオホーツクとはどんな場所ですか?
軍司さん:オホーツクは海も畑も自然も豊かで、僕にとってはパラダイスのような場所です。この地域に住んでみたらわかる、人が暮らしていくうえで楽しめるものがたくさんあります。暑い夏も来れば、冬には流氷がきてロシアから大鷲がくる。季節によって動物も景色も食べ物も変わる。多様性にあふれた地域だと思います。
若いころは都会に憧れて、良いものは都会にあると思っていましたが、今フラットな視点で考えてみるとオホーツクこそ良いものだらけだと感じてしまいますね。
———北海道・オホーツク“LOVE! ”にあふれる軍司さん。オホーツクの歴史や一次産業と人をつなげる考えは、遊びを楽しむ観光に“学び”を取り入れたユニークなアイデアでした。筆者は軍司さんと同じ網走に在住しているので、早速カヤック体験に繰り出してみます。あなたも、自分の住んでる地域に“LOVE! ”を見つけてみませんか?
「HOKKAIDO LOVE! な人」とは:
日常のなかに潜んでいる“北海道が好き”という気持ちを深堀り、本当の北海道の魅力を再発見するインタビュー企画です。北海道に住む人ならきっとだれもが抱いたことがあるだろう「やっぱり北海道が好き」という感覚。きっとそこには、北海道でしか体験できないこと、北海道でしか堪能できない味、北海道でしか出会えなかった人……1人ひとりにそんな特別な存在があるはず。インタビューには北海道で活躍する“HOKKAIDO LOVE! ”な面々が揃います。あなたの“HOKKAIDO LOVE! ”はなんですか?
バックナンバーはこちら
Sponsored by Hokkaido Government, Hokkaido Tourism Organization, Hokkaido Airports Co.,Ltd.