これどこにある?バブル時代の遺構ともいえる日本海沿岸の巨大な「鳥オブジェ」
駅前や公園、観光スポットによくある“謎のオブジェ”。まるで印象派の芸術作品のような奇抜なものから、やたらと巨大化した動物オブジェまで。ここ北海道にもそういった“謎のオブジェ”がたくさん存在します。
今回は“やたらと巨大化した動物オブジェ”を羽幌町で発見!
羽幌町に現れた巨大オブジェ
1980年代後半から1990年代前半、当時の日本は“バブル経済”真っ盛り。空前の好景気に、行政も大盤振る舞いをしました。当時の内閣総理大臣竹下登氏は、全国の市町村に1億円を交付し、地方創生に役立ててもらう通称「ふるさと創生一億円事業*」を行ったのです。
なんと、交付された1億円の使い道に関しては各市町村に一任するという、まさに国からのお小遣いです!
この事業によって日本各地にさまざまな箱物、オブジェが誕生しており、『純金&純銀こけし』や『純金のカツオ』、『日本一大きい自由の女神』を作るなどバブル時代を象徴するような豪勢なお金の使い方です。
北海道でも下川町で『ミニ万里の長城』、函館市では『イカモニュメント』など奇をてらった“作品”が生み出されています。
そして日本海に面する羽幌町でも交付金を使って巨大なモニュメントを制作しました。
1,700万円の鳥!
国道沿いにそびえ立つ巨大なペンギンのようなオブジェ。台座部分を含めると高さは7.5m、その名も『オロロン鳥レプリカ』。
オロロン鳥はペンギンではなく『ウミガラス』というカモメに近い種族の海鳥で、飛ぶこともできます。名前の由来は鳴き声が“オロロン”と聞こえることからきました。
このオロロン鳥ですが、絶滅危惧種に指定されているとても貴重な鳥なんです。日本では羽幌町からほど近い天売島にしか生息していません。
オブジェでは巨大化されていますが、実際は全長40cmほど。
近年では漁で使用される網にかかってしまったり、外敵に卵やヒナを捕食されてしまったりして、数を減らしています。
ちなみに羽幌町にある『オロロン鳥レプリカ』は当初、町内(天売島、焼尻島を含む)5か所に設置されていたのですが、老朽化のためか撤去に続く撤去で現在は2体しか残っておりません。本物のオロロン鳥同様にこちらも絶滅の危機に瀕しているのです。
なんと当時の資料によると5体の建設にかかった費用は約1,700万円。
今の時代に1,700万円かけて鳥のオブジェを作るなんていったら大バッシングは避けられないでしょう。いろいろな意味で当時は良い時代だったのですね(笑)
小樽から稚内へ続く道『オロロンライン』の途中にあるので、通る際はぜひバブル時代の遺構に思いをはせてみてはいかがでしょうか。
<オブジェ情報>
■設置場所:1体目 北海道苫前郡羽幌町栄町、2体目 北海道苫前郡羽幌町汐見 どちらも国道232号(オロロンライン)沿い
【参考】
ウミガラス/環境省
日本一の自由の女神像/おいらせ町
天売島の海鳥図鑑 / 北海道海鳥センター
広報はぼろ 平成2年3月号/羽幌町
梶山静六自治大臣と「ふるさと創生一億円事業」/ 総務省
第2章 復興から成長へ / 函館市史
Google マップ
【画像】HAPPY SMILE、オモ、Steve Allen / PIXTA(ピクスタ)
*正式名称は「自ら考え自ら行う地域づくり事業」