飼い猫の保護が増加…「猫たちの幸せが第一」本郷商店街の保護猫カフェの想い【札幌市白石区】
新型コロナウイルスの影響による巣ごもり需要で、ペット関連市場は大きな成長を遂げています。一般社団法人ペットフード協会が実施している「2021年(令和3年)全国犬猫飼育実態調査」によると、コロナ禍前の2019年に比べ、ここ2年間で犬・猫を飼う人は増加しているそう。その一方で安易にペットを飼う人も多く、飼育放棄が社会問題になっています。
札幌市白石区本郷にある「猫suncafe」は、行き場を失ったり追いやられたりした猫を保護しています。里親に繋いだり、終生飼育により殺処分を減らしたりなど、動物に優しい社会を目指しています。今回は、スタッフの工藤美里さんと宮本真奈美さんに、保護猫を取り巻く状況を伺いました。ちなみに宮本さんは恥ずかしがり屋さんなので写真NGです。
猫と人、両方が幸せになる拠点を作りたい
「猫suncafe」は、保護活動を行っていた看護師の齋藤歌奈子さんが「保護した猫が新しい飼い主と出会う機会を増やしたい」との想いを込めて、2016年5月25日にオープンしました。猫好きの大工さんの協力を得て、飲食店の店舗だった2階建ての建物を約130万円かけて改装。“猫と人の両方が幸せになる拠点”として多くの猫好きが訪れています。
“保護猫”は、さまざまな理由で適切な飼育がされていない猫が救助され、自治体や民間の動物保護施設、個人宅などで一時的に保護され生活している猫のこと。環境省自然環境局の発表によると、2020年度に各自治体が飼い主から引き取った猫は10,479頭、所有者不明が34,319頭いました。そのうち255頭が返還、25,130頭が譲渡されていますが、19,705頭もの猫が殺処分されています。
ペットブームの反動か?飼い猫の保護が増える!
「これまでは捨て猫の保護が多かったのですが、コロナ禍になってから飼い猫の保護が増えています」と工藤さんは言います。保護される理由は引っ越しや飼育費用の問題、飼い主の妊娠・出産やアレルギーの発症などさまざま。去勢を行っていないため猫が増えすぎる多頭飼育崩壊や、高齢者が面倒を見られなくなり、身内が保護を依頼することも少なくありません。
「現場に到着して、事前に聞いていた以上に環境が悪いこともあります」と宮本さん。猫を可愛がっていることは伝わるものの、飼育方法が間違っているため、結果として苦しめている飼い主さんもおり、傷ついた猫を見るたびに悲しくなるそうです。
里親の数より保護される猫の数が多い
保護された猫たちは、別の場所にある保護猫のシェルターに集められます。多いときで100頭もの猫が保護されており、病気を患っていたり、ケガをしていたりする猫も多いそう。看板猫の「くう」は、もとは野良猫で猫エイズウイルスを持っています。怖い病気と思われがちですが、感染力が弱いので空気感染はしないそう。元気に走り回り、お客さんに愛敬を振りまいています。
猫たちは定期的に開催される譲渡会で新しい家族のもとに引き取られますが、保護される猫の数が多く、すべてが温かく迎えられるわけではありません。また、子猫を希望する里親が多く、成長した猫や病気の猫は敬遠される傾向があります。工藤さんと宮本さんは、そんな猫を引き取って育てているのです。
ワケあってここに来た「猫すたっふ」たち
「猫suncafe」は1階が里親との出会いの場、2階は猫との交流の場になっています。カフェの猫たちは「猫すたっふ」と呼ばれ、人なれした猫が選抜されています。すべての猫が多頭飼育崩壊や動物管理センターから保護されてやってきました。なかには大きな病気を克服した猫もいます。
「しすこ・ふらん(2015年保護)」は、幼猫の90%が死に至る猫パルボに感染し、生死の境から復活しました。「こぶ(2010年保護)」は、下部尿路感染症による3回の手術を乗り越えました。「かぼす(2016年保護)」は、捨てられてしまったのか、動物管理センターの保護期間に飼い主が迎えに来ることはありませんでした。人によって傷つけられた猫たちですが、今この場所で人の優しさを感じてくれていることでしょう。
ペットを幸せにできるのは飼い主だけ!
保護猫カフェの運営は、餌代、備品、医療費など、いくらお金があっても足りません。工藤さんと宮本さんも「どれが欠けても猫たちの生活に影響する。すべてが一番の課題です」と言います。今回、筆者が保護猫カフェを記事にしたのは、「猫と触れ合うのは楽しい」だけではなく、ペットを取り巻く環境を多くの人たちに考えてほしかったから。ペットを幸せにできるのは飼い主だけです。
「猫suncafe」ではさまざまな協力を求めています。筆者は記事にすることで保護猫の現状をみなさんにお伝えする協力をさせていただきました。寄付でもボランティアでもOK。それぞれができることを持ち寄って“誰もが猫たちの幸せを考える社会”を実現しませんか。
<施設情報>
■施設名:猫suncafe
■住所:北海道札幌市白石区本郷通8丁目南2-8
■電話番号:011-598-0577
■営業時間:12~19時
■定休日:月曜
■料金:30分500円、1時間1,000円、延長10分ごとに200円、平日限定フリータイム2,500円
■HP:https://nyapan.jp/cafe/
【参考】
2021年(令和3年)全国犬猫飼育実態調査 結果 / 一般社団法人ペットフード協会
犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況 / 環境省
⇒こんな記事も読まれています
■ 北海道初の保護猫カフェ。代表が猫にかける想い
■ 病院の処置室に猫ルーム!? 「だい内科医院」