
沼落ち確定!? 新シーズンの勢力図から、勝負を分ける「騎手の技」まで徹底解剖【ばん馬の見方、プロが教えます。#5】
「ばんえい競馬、何度か見たことあるけど、ただ重いソリを引いているだけじゃない気がする……」「もっと馬の個性や、騎手の駆け引きを知りたい!」 そんな風に感じ始めている、”ばんえい沼”の入り口に立つ皆さんへ。
専門家がばんえい競馬の“今”を紹介する連載『ばん馬の見方、プロが教えます。』第5回目。新シーズンからは、有力馬の情報はもちろん、勝負を左右する騎手の強みや個性にも迫ります。今回は、競馬専門紙『競馬ブック』のトラックマンである定政紀宏さんに、“知れば知るほど面白い、ばんえい競馬のディープな見方”を教えていただきました!

定政 紀宏(さだまさ のりひろ)
1971年生まれ、北海道出身。競馬専門紙『競馬ブック』ばんえい競馬・本紙担当。入社以来約30年間、ばんえい競馬一筋。ばんえい競馬の特徴である障害を重視した、的中率の高い予想が人気。
新シーズン序盤戦。「馬場が重い」ってどういうこと?
今シーズンが開幕しましたが、プロの目から見て、昨シーズンとの違いやレース展開の変化はありますか?
ばんえい競馬を深く楽しむ上で、砂の重さは重要なポイントです。新シーズンに向けてコースの砂の入れ替えがあり、開幕当初は砂が落ち着かず、例年以上に重い(走りにくい)馬場状態でした。そのため、パワーの足りない2歳新馬にとっては、能力検査の合格率が下がるほど厳しい環境だったんです。

画像:ばんえい十勝
一方で、今熱いのが現在の4歳馬世代です。現在の絶対王者であるメムロボブサップらの世代(現10歳)以来、久しぶりに“黄金世代”と呼べるほど強力な世代が育ってきています。この重い砂の環境でもしっかりソリを引っ張り、レースを牽引しているので、今年は4歳馬から目が離せませんよ。
注目重賞プレビュー!「北斗賞」&「柏林賞」のツウな見方
6月14日開催の「北斗賞」。実績ある古馬勢のなかで、どう予想を組み立てれば良いでしょうか?
まず、ファンが注目する王者メムロボブサップの動向ですが、この夏の大一番『ばんえいグランプリ』で“前人未踏の6連覇”という記録がかかっていることもあり、慎重に判断すると思いますので、北斗賞への出走は現時点でまだ未定です。もし王者が不在となれば、俄然面白くなります。

画像:ばんえい十勝
注目はクリスタルコルド、コマサンエース、そしてキングフェスタの3頭。 面白いのが、コマサンエースとキングフェスタは兄弟なのですが、全くタイプが違うんです。

画像:ばんえい十勝
兄のコマサンエースは重い荷物を背負っても引っ張れるパワー型なのに対し、弟のキングフェスタはスピード勝負が得意。血統が同じでも得意戦法が違う、そんな馬の個性を知ると、予想が何倍も楽しくなりますよ。
6月28日開催の「柏林賞」はいかがですか?ハイレベルな4歳世代の戦いですね。

画像:ばんえい十勝
柏林賞は、スターイチバンがハンデ頭だとしても有力候補でしょう。彼は、王者メムロボブサップの代わりになるほどの素質を秘めています。オープンクラスに挑戦して好成績を残すなど、格上の相手や重いハンデをものともしないメンタルとパワーを持っています。彼の圧倒的なポテンシャルにぜひ注目してください。
タイムだけじゃない!未来のスターを見抜く「新馬戦」
これからデビューする2歳馬たち。タイム以外で「この馬は強い!」と見抜くプロのポイントは?
能力検査の結果を見るときは、“重い馬場(走りにくい日)で、1発で合格した馬”を高く評価してください。 軽い馬場でタイムが良かった馬よりも、条件が厳しい中でしっかり結果を出せる馬の方が、仕上がりや基礎能力の高さが顕著に表れます。タイムの数字だけでなく、どんな環境で出したタイムかまで見られるようになると、あなたも立派なばんえいツウです!

画像:ばんえい十勝
そして、初心者の方にもおすすめなのが“推し馬”を作ること。例えば、元ガールズ競輪選手が所有する2歳馬の「グランプリスラム」という馬は、「栗駁毛(くりばくげ)」というマーブル模様の珍しい毛色です。そんな感じで「顔が可愛い」「毛色が変わっていて魅力的」なんて理由で構いません。1頭でも応援する馬ができると、自然と同じレースを走っているライバル馬たちにも目が行くようになります。ばんえい競馬は馬の故障が少なく、10歳頃まで長く現役で走る馬も多いので、長く”推し活”を楽しめるのが最高の魅力です。
障害の手前で何が起きている?勝負を分ける「騎手の技」
ばんえい競馬は「途中で馬を止める」のが特徴ですが、そこに騎手のどんな技術が隠されているのでしょうか?トップを走る鈴木恵介騎手の強みとは?
鈴木騎手の最大の武器は、“息の入れ方”の圧倒的な上手さです。 ばんえい競馬は、ただ馬を止めればいいわけではありません。馬の呼吸が整っていないのに発進させてしまうのは若手によくあるミスですが、一流騎手は馬の様子を完璧に把握し、いつ、どうやって息を整えさせ、どのタイミングでハミ(馬具)をかけてGOサインを出すかという判断がずば抜けています。

画像:ばんえい十勝
彼は下積み時代に癖のある馬に乗り続け、試行錯誤して今の技術を磨き上げました。元々は負けず嫌いで感情が出やすい性格ですが、レース中は平常心を保ち、失敗を次に活かすメンタルコントロールも一流の証です。
若くして大活躍中の今井千尋騎手。彼女の強さはどこにあるのでしょう?

画像:ばんえい十勝
今井騎手は幼少期から馬と生活してきたため、馬の特徴を掴むセンスが抜群です。女性は男性に比べて腕力がないため、ソリの重量が10kg軽くなるハンデをもらっていますが、彼女の真の強みはそこではありません。腕力で無理やり馬を引っ張るのではなく、丁寧なハミ遣いと馬と呼吸を合わせる技術が並外れているんです。柔らかな手綱捌きで馬の力を自然と引き出す、彼女ならではの美しい騎乗スタイルは必見です。
最後に、ファンのみなさんにメッセージをお願いいたします。
ただ力任せにソリを引いているように見えて、実は馬場状態による有利不利、馬の性格、そして騎手の緻密な「息の入れ方」など、数え切れないほどの要素が絡み合っているのがばんえい競馬です。
これから6月に向けて、重賞レースや新馬戦が続々と開催されます。ネットで観戦するのも楽しいですが、ぜひ一度、帯広競馬場へ足を運んでみてください。馬の荒々しい息遣い、そして障害の手前で騎手たちが繰り広げる静かで熱い駆け引きを目の当たりにすれば、もう”ばんえい沼”から抜け出せなくなるはずです!

“障害前に一息入れている”と思っていた障害の手前で、騎手と馬の高度な駆け引きが行われていたなんて!
推し馬の血統や得意な戦法を知ることで、ますますばんえい競馬の奥深さにハマりそうです。次回の帯広競馬場では、騎手の手綱捌きにも注目して全力で応援したいと思います!
文・取材/北海道Likers編集部 写真/ばんえい十勝
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