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新星今井騎手×トップジョッキー鈴木騎手が対談!「勝ち」への努力と喜び

2024.01.02

十勝の観光スポットとして有名な帯広市の「帯広競馬場」。ばんえい競馬の開催がある土・日・月曜日ともなると、地元の人々や観光客で大変な賑いを見せています。

今回はばんえい競馬の騎手でリーディング争いのトップを独走する鈴木恵介さんと、新人騎手の今井千尋さんに、対談を交えながらインタビューを行いました。

鈴木恵介(すずきけいすけ)。1976年生まれ、北海道森町出身。ばんえい競馬騎手。服部義幸厩舎所属。2022年度勝利度数第1位、通算成績3,394勝(2023年12月18日現在)。ばんえい競馬を代表するトップジョッキーである。

今井千尋(いまいちひろ)。2000年生まれ、北海道新十津川町出身。ばんえい競馬騎手。今井茂雅厩舎所属。2022年12月にデビューし、2023年11月6日にばんえい史上最短で通算100勝を達成。ばんえい競馬新時代を盛り上げる騎手の一人である。

ばんえい競馬ではたらく人

新人今井騎手が「技術のすごさ」に尊敬している騎手は?

北海道LikersライターKawahara:お二人がばんえい競馬の騎手になりたいと思ったきっかけはなんですか?

鈴木騎手:子どものころ、祖父がばん馬の生産をしており、草ばん馬大会に出ている姿に憧れて自分も騎手になりたいと思いました。高校を卒業後、この世界に入りました。

今井騎手:物心がついたときから馬がいる環境で育ち、父(今井茂雅調教師)の厩舎の手伝いをするのが好きでした。実はJRAの騎手を目指していた時期がありましたが、諸事情で断念しました。父の厩舎で正式に厩務員をしていたなか、ばんえい競馬のレースで活躍する騎手の姿を見て、「すごくかっこいい! やはり私も騎手になりたい!」と思ったことがきっかけです。

今井騎手の初勝利時の騎乗の様子 出典: ばんえい十勝

北海道LikersライターKawahara:今井騎手は昨年(2022年)12月にデビューし、翌週には見事初勝利を挙げられました。そのときのことは覚えていますか?

今井騎手:初勝利の騎乗馬は、自分が厩務員としても担当していたホクセイサクラコ号(以下、サクラコ)でした。レースでサクラコに騎乗経験のある鈴木騎手から「(サクラコは)障害の登坂力がいい馬なので、サクラコを信じてどんどん進めていった方がいい」とアドバイスをいただき、勝つことができたと思います。

恥ずかしがる今井騎手と笑顔の鈴木騎手 出典: 北海道Likers

北海道LikersライターKawahara:今井騎手はさまざまなインタビューのなかで、「尊敬する騎手は?」の質問に必ず鈴木恵介騎手を挙げられています。ずばり、どういうところがすごいと思いますか?

今井騎手:“馬とのコンタクトの取り方”だと思います。ばんえい競馬のコースは2つの「障害」と呼ばれる山があり、それを乗り越えたあと、ゴールまでの最後の直線でいかにばん馬の持久力を保ちながら進ませられるかが騎手の腕の見せどころです。

鈴木騎手が馬のスタミナを見極めた騎乗で、第2障害を越えても止まらずにどんどんゴールへ進んでいく姿や、本来は障害を越えるのがあまり得意でない馬でも、鈴木騎手だと一度で越える様子を何度も見てきたので、本当にすごいです。私の感覚では真似しようと思ってもまだできない、とても細やかな技術だと思います。

ばん馬が持つ能力を最大限に生かすには

北海道LikersライターKawahara:鈴木騎手は騎乗技術をどのように磨いていかれたのですか?

鈴木騎手:馬はみなそれぞれに性格や能力や癖などが違うので、その馬に一番合った乗り方を考えています。鞭を入れて馬の気合を高めていくことも大事ですが、自分が馬とのコンタクトで一番大事にしているのは“ハミ*ざわり”です。

ハミ 出典: ばんえい十勝

鈴木騎手:レースの道中、自分の馬がほかの馬たちを気にして「一気に抜かしたい!」というテンションになり、そのまま進んでいったとしても、最終的にはゴールの前でバテてしまうのです。“1着で勝たせるために”、その馬に合ったペースを保ちつつ、なおかつ馬がレースに集中できるよう、ある程度の緊張感も持たせられるようなハミの使い方を心がけています。

北海道LikersライターKawahara:すごく貴重なお話です! 鈴木騎手は若いころ、勝利を挙げるためにどんなことに悩み、どう乗り越えて来られましたか?

鈴木騎手:デビューした1998年当時はまだ騎手が40名と多く(2023年度は21名)、“レースに勝つ”ことよりも先に“騎手としてレースに出る騎乗機会をどうやって増やしていくか”をいつも考えていました。自分から積極的に、馬主さんや調教師、先輩騎手たちに「騎乗機会をください」とお願いし、少しずつレースに出る機会を増やしていきました。

レースに出られるようになってからは、先輩のレースを見て勉強していました。とくに参考にしていたのは、義父の故・鈴木勝堤騎手、大河原和雄現調教師、藤野俊一騎手です。3人の良いところを吸収しようと見ていました。

北海道LikersライターKawahara:そうなんですね。今井騎手に質問です。鈴木騎手の先輩として普段のお人柄は?

今井騎手:たとえ忙しくされているタイミングでも、質問をすると必ず答えてくださって、いつも本当に感謝しています。優しい先輩です。

北海道LikersライターKawahara:鈴木騎手は若い騎手のみなさんの活躍をどう感じていますか?

鈴木騎手:話しをしていると「よく勉強して努力しているな」と感じることが多いですね。アドバイスしたことがすぐにはできなくても、後々彼ら自身の形として仕上がっていけばいいのかなと思っています。今井騎手もまだいろいろと悩みは多いと思うけど、相当いい成績だと思います。

*ハミ・・・騎手が持つ手綱の先についている金属製の丸みのある棒。馬の口の歯が生えていない歯槽間縁(しそうかんえん)の部分から通して舌のあたりに乗せて使う。乗馬も競馬もハミを使い、人間の手綱の持ち方やこぶしの握り方などで馬へ指示を伝えコンタクトを取っている。

ベテラン鈴木騎手が「競馬人生で一番緊張した」レースとは

北海道LikersライターKawahara:“騎手”が職業となったことで心境の変化はありましたか?

今井騎手:厩務員として競馬のレースを外から応援しながら並走していたころより、ぐっと責任感や緊張感が大きくなりました。その分、勝てると本当に嬉しいです。

鈴木騎手:“いかに勝てるレースを取りこぼさずしっかり勝ち切るか”を考えるようになりました。自分の騎乗した馬が1着で勝つか2着になるかで、馬のその後のレース選びにも影響が出るので、常に自身の騎乗技術のレベルが上がるように意識しています。

デビューして3~4年後、勝てなくて苦しい時期が続きましたが、あのころはとにかく馬主さんにも調教師さんにも納得してもらえるように、ひたすら勉強していたと思います。30代になったころ、初めて騎手のリーディングを獲得した翌年は、まぐれで獲ったと思われたくなかったので、「今年もリーディングを獲る!」と一番意識してやっていましたね(笑)

北海道LikersライターKawahara:共に戦うばん馬たちに対しては、どういう気持ちでレースに挑んでいますか。

今井騎手:レース中は馬とけんかせず、呼吸を合わせられるようにと思っています。

鈴木騎手:馬たちには“感謝”の気持ちを常に持っていて、けがや病気をすることなく元気に過ごしてほしいと思っています。レース中は馬の動きに逆らわず、できるだけ馬と会話ができるようなイメージを心がけて乗っています。

オレノココロ号と鈴木騎手 出典: ばんえい十勝

北海道LikersライターKawahara:鈴木騎手はたくさんの活躍馬の騎手を務めていますが、2017年にオレノココロ号で初めて『ばんえい記念』を優勝したときのお気持ちはいかがでしたか?

鈴木騎手:騎手になったときは「ばんえい記念に出走する10頭のなかに入れたらいいな」と思っていましたが、出られるようになってからは「『ばんえい記念』に勝ちたい、どうやったら勝てるのか」という考えに変わりました。

2017年にオレノココロ号で優勝した『ばんえい記念』は、今までの競馬人生のなかで一番緊張したレースだったと思います。オレノココロ号に勝機が十分にあったので、自分が失敗しない限り優勝できると思っていました。レース前は自分にプレッシャーをかけて追い込んでいましたね。

ナリタボブサップ号 出典: ばんえい十勝

北海道LikersライターKawahara:『ばんえい記念』といえばナリタボブサップ号も印象に残っています。

鈴木騎手:強かったですね。1トンの重量を背負って、あの厳しい第2障害を一腰で上げることができたんです。あれは自分でもびっくりしました(笑) ナリタボブサップ号は一瞬の力がすごい馬で、人馬の呼吸ががっちりかみ合った瞬間だったことを覚えています。ナリタボブサップ号引退後はその子どもたちに何度か乗りましたが、障害を越えるのが上手な馬がいますね。父親譲りかなと思います。

パドックにいる今井騎手と鈴木騎手 出典: 北海道Likers

北海道LikersライターKawahara:ばんえい競馬の騎手になりたい人へメッセージをお願いします。

今井騎手:私は騎手になるために試験に6回挑戦しました。騎手となった今、「あのとき諦めないで本当に良かったな」と思っています。興味のある人はぜひ挑戦してください!

鈴木騎手:騎手で成功するのは大変ですし、競馬は馬が中心の世界ですから、休みが少ないのが現状です。でも本当に馬が好きであれば、やりがいはとても大きい職業なので、若いうちからぜひ挑戦してほしいと思います。

北海道LikersライターKawahara:最後にばんえい競馬ファンへメッセージをお願いします。

今井騎手:ぜひ「帯広競馬場」へ見に来てくれたら嬉しいなと思っています!

鈴木騎手:いつもばんえい競馬の応援をありがとうございます。ぜひ帯広で生の迫力あるレースを見てほしいです。

 

ーーー今井騎手からは、一度決めた「騎手になる」という目標を貫いた真っ直ぐでひたむきな姿勢を、鈴木騎手からは、トップジョッキーとなった今もなお努力を惜しまず、技術を守り進化する“一所懸命”という印象を受けました。

「帯広競馬場」では両騎手の活躍を間近で見ることができます! ぜひ帯広競馬場でばんえい競馬の迫力を楽しんでみてくださいね。

連載「ばんえい競馬ではたらく人」では、ばんえい競馬を支える仕事に就くさまざまな人の魅力に迫ります。お仕事と記事の一覧はこちらから。

【画像】ばんえい十勝

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