電子工学からばんえい競馬へ、異色の経歴を持つ新人騎手が選んだ道とは

2026.02.20

十勝地方の観光スポットとして有名な帯広市のばんえい競馬。体重が1トンあまりある大きなばん馬たちが騎手をのせた鉄のソリを曳き進み、その力強さを競い合うダイナミックなレースです。北海道遺産に認定されているばん馬たちの歴史は古く、かつては開拓時代の貴重な労働力として人と共に暮らしていました。

そんなばんえい競馬は、世界を見渡しても帯広市だけで観ることができるとても珍しいレースです。寒さの厳しい真冬でもレースは開催され、ばん馬たちの熱い戦いを観ようと、多くの地元ファンや観光客でにぎわっています。

今回お話を伺ったのは、ばんえい競馬新人騎手の臼杵龍美さん。デビューし数か月を経た現在の心境、そしてばんえい競馬への思いについて語っていただきました。

画像:ばんえい十勝

臼杵  龍美(うすき たつみ)2002年生、札幌市出身。金田勇厩舎所属。2022年よりばんえい競馬厩務員となる。2025年11月20日に地方競馬全国協会(NAR)の令和7年度騎手免許試験に合格し、同年12月よりばんえい競馬騎手としてデビュー。勝負服は胴緑・白十字たすき、袖青・白二本輪。袖は同きゅう舎の先輩で尊敬する金田利貴騎手と同柄。ばんえい競馬の次世代を担う若手騎手の一人である。

胸に秘めていた「騎手になるという夢」

画像:ばんえい十勝

騎手試験合格、そしてデビューおめでとうございます!ばんえい競馬との出会いを教えてください。

両親がばんえい競馬が好きな影響で、物心がついたときから、テレビでよく見ていていました。レースで印象に残っているのは、2019年のばんえい記念を優勝したセンゴクエースです。ただ、将来ばんえい競馬の世界に入るという事は全く考えていませんでした。子供時代は合気道、中学高校時代は野球を続けていました。

ばんえい競馬の世界に入りたいと思ったきっかけは?

高校は実家の札幌を離れ、ロボコン参加常連校で有名な、旭川工業高等専門学校で電気情報通信工学を学んでいましたが、将来を考えた2年生の秋頃に、「これを一生の仕事として考えていく事が何か違う」と感じるようになり、それと同時に、体力には自信があったので、子供の頃から憧れがあった、ばんえい競馬の騎手を目指したいと思うようになりました。

厩務員になるまでにどのような就職活動をされましたか?

まずはばんえい競馬調教師会に連絡をし、現在お世話になっている金田勇調教師のもとで3日間研修を受けることになりました。研修では、馬に触ることはありませんでしたが、馬房の掃除など厩舎まわりの仕事を体験しました。金田調教師が温かく迎えて下さったことで、自分もこの世界で頑張っていきたいと決意し、2022年4月から正式に厩務員となりました。

画像:ばんえい十勝

厩務員としてはじめてばん馬の運動をした時の印象はいかがでしたか?

近くで見るとものすごく大きくて、どうやって人馬で気持ちを合わせていけばいいのか、はじめはとても難しく感じていました。金田調教師から「ばん馬たちを競走馬として強靭な馬体に成長させていくには、一頭一頭それぞれの体力や性格に合わせた運動が必要になってくる」という事を学びました。

難関の騎手試験を一発で合格

(写真左から)阿部優哉騎手・臼杵龍美騎手・吉田理人騎手
画像:ばんえい十勝

騎手試験について、見事一発合格されましたね!おめでとうございます。合格した時はどんな気持ちでしたか?

ほっとした気持ちが一番にきました。家族はいつも自分のやりたいことを応援してくれていて、ばんえい競馬も好きでしたのでとても喜んでくれました。

厩務員として忙しい日々を送る中、試験勉強にはどうやって取り組みましたか?

毎日どんなに疲れていても、少しでも必ず勉強をする時間を作り、日々続けることを習慣づけるようにしていました。また騎手試験のための勉強会に参加していました。

確かな手応えをつかむための日々

初騎乗の様子
画像:ばんえい十勝

2025年12月6日に晴れて騎手デビューを迎え、マルホンヒュウガ号で初めてばんえい競馬のレースに騎乗し3着となりました。初騎乗の感想はいかがでしたか?

レースに出走する直前はとても緊張していましたが、同きゅう舎の金田利貴騎手からもらったアドバイスを思い出していくうちに少しずつ緊張がほぐれ、レースは集中して挑むことができました。ただ、第2障害を越えた後が思っていたような騎乗ができなかったことが反省点としてありました。

1月8日の第4レースでジェイワンダー号に騎乗し見事初勝利をあげましたね!

最後まで接戦で、勝敗は写真判定の決着となり、しばらく自分が勝ったかどうかがわかりませんでしたが、周りの騎手の先輩方が「勝ってるよ!」と教えて下さって、初めて知りました。すごくうれしかったと同時に、まずは1勝することができてホッとしました。

臼杵騎手のご家族や厩舎の皆さんの反応はいかがでしたか?

家族も友人も、金田厩舎の同僚たちもすごく喜んでくれました。友人は私が知らない時にばんえい競馬のレースを観に来てくれたりと、とても喜んでくれるのが伝わってくるので、あらためて騎手になれて良かったなと思っています。

帯広は「住みやすい街」

画像:ばんえい十勝

お休みの日はどう過ごされていますか?

雪のない時期は、金田調教師監督のばんえい野球部に参加して試合を楽しんでいます。また、帯広は身近なところに日帰り温泉やグルメがたくさんあるので、リフレッシュできています。とても住みやすいですよ。

課題を克服し、ひとつずつ大事に戦っていきたい

画像:ばんえい十勝

これからどんな騎手になりたいですか?

金田調教師から「落ち着いて乗るように」と指導を受けているように、できるだけ冷静にレースの状況を把握しながら戦っていけるようになりたいです。これからもしっかり金田調教師や金田騎手にアドバイスを頂きながら、さまざまな課題を克服していきたいと思っています。

ばんえい競馬ファンに向けてメッセージをお願いします。

常に勝つ事ができるように、また一つでも上の着順を獲る事ができるように、ひとつずつのレースを大事に戦っていきたいと思います。応援して頂けると嬉しいです。宜しくお願いします!

担当ライター
川原恵子

臼杵騎手は、レースの騎乗馬の馬券人気が下位の中、好騎乗で馬券的中圏内の3着へと導き高配当を演出するなど、着々と騎手としての成果を出されています。厩務員として学ぶことも多く多忙な中、1回で騎手試験を合格するという至難の技を成し遂げた臼杵騎手。何事もこつこつと継続し、大きなことを成し遂げる姿がとても印象的でした。

ばんえい競馬は、3月22日(日)に開催される最高峰のレース『ばんえい記念』に向け、活躍馬たちの大レースが続き、盛り上がりは最高潮に向かっています! ぜひ新人騎手3名の活躍と共にばんえい競馬を楽しんでみてはいかがでしょうか。

取材・文/川原恵子 写真提供/ばんえい十勝

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