コウシュハハイジーと小野木騎手

「30歳を過ぎてからでも遅くない」最年長・39歳で騎手デビューを果たした小野木隆幸さんが目指す先

2023.01.06

北海道帯広市で開催されている世界で唯一の競馬“ばんえい競馬”に2022年12月、3人の新人騎手が誕生しました。

その中でも今回は、異業種からの転身を遂げ、史上最年長で騎手試験に合格した小野木隆幸騎手に注目。新人騎手として抱える想いを伺いました。

小野木隆幸(おのき・たかゆき)。1983年生まれ。北海道帯広市出身。大友厩舎所属。厩務員を経て史上最年長での騎手試験合格を果たした。

ばんえい競馬の未来をつくる人

小学生時代のばん馬への憧れから厩務員、そして騎手の道へ

小野木騎手

今回の取材はオンラインで行いました。 出典: 北海道Likers

北海道likersライターりゅうと:騎手になろうと思ったきっかけや、騎手になるまでのことを教えてください。

小野木騎手:地元が帯広なので小学生のときからばん馬を見ており、もともと騎手に憧れはありました。でも、騎手になるためにどうすればいいのかはわからず、飲食店やパチンコ店、自衛隊など馬とは関係のない職場で働いていました。そんなとき、たまたま厩務員の求人募集を見つけて。子どものころからの馬への憧れやソリに乗ってみたいという好奇心から厩務員として働きたいと思い応募しました。そして、面接の際に今からでも騎手試験を受けられることを知り、騎手を目指し始めました。

厩舎にてコウシュハハイジーと小野木騎手

コウシュハハイジーと厩舎にて 出典: ばんえい十勝

北海道likersライターりゅうと:厩務員として働きながら騎手を目指す中で大変なことはありましたか。

小野木騎手:騎手試験には筆記試験があるのですが、とても難しくて……4回目でやっと受かりました。内容は言えないですが覚えることが多く、厩務員として働きながら勉強するのが大変でした。なかなか勉強の時間は取れなかったですね。だから4年かかったのかもしれないです(笑)

ついに騎手デビュー。新人騎手として感じることは

初騎乗はリュウセイペガサス

初騎乗はリュウセイペガサス 出典: ばんえい十勝

北海道likersライターりゅうと:レースで実際に騎乗してみていかがでしたか。

小野木騎手:練習走路と本走路では砂の量が違うので、練習ではよく進む馬がレースでは進まず焦りますね。ただ乗っているだけではダメですから苦戦しています。

お客さまの前で騎乗するのは緊張しますが、声援が頑張る糧になっています。先日、アアモンドエーカンに乗ったときに「アアモンドがんばれ!」という声が聞こえ、スイッチが入ったように「やらなきゃ」と思いました。緊張で体が動かなくなることはなかったです。まだまだ苦労することが多いですが、馬の癖や駆け引きなどは回数をかけないとわからないことだと思うので経験を積んでいきたいです。

北海道likersライターりゅうと:お披露目会では「百折不撓」を抱負として掲げていました。初騎乗を終え、現時点で想像と違ったことや辛かったことはありますか。

お披露目会

中央が小野木騎手。左が今井騎手、右が中村騎手。 出典: ばんえい十勝

小野木騎手:今はあまりないですね。騎乗数や勝利数で同期の2人に差をつけられるのは悔しいですが、あまり気にしても仕方ないので心が折れることはないです。騎手になったからには長くやっていきたいですね。

小野木騎手が目指す騎手像

小野木騎手と阿部騎手

憧れの阿部騎手(右)と一緒に。 出典: ばんえい十勝

北海道likersライターりゅうと:憧れの騎手はいますか。

小野木騎手:阿部武臣騎手です。一番近い存在の騎手で、さまざまなことを教えてもらいました。馬を触ったり努力したりしている姿も見てきたので、自分も努力して少しでも近づきたいと思います。

北海道likersライターりゅうと:騎手としてこれだけは負けない、負けたくないというものはありますか。

小野木騎手:ありません!(笑) 新人騎手3人の中でも2人は家族などを通じた馬に関する経験があるので、自分は経験値がダントツで少ないと思っています。焦らず場数を踏んでいきたいです。ただ、やっぱりレースでは負けたくないですね。どんなレースでも勝ちたいという気持ちはあります。

北海道likersライターりゅうと:勝負服について、改めて聞かせてください。

小野木騎手:胴の部分は、子どものころ競馬場に連れて行ってくれた祖父が好きだった千葉均騎手の勝負服が白と緑の元禄柄だったのでそこから取っています。所属厩舎の大友先生の勝負服と合わせてピンクの元禄柄にしました。腕の部分は他の騎手で腕に黄色が入った騎手がいないので、自分だとわかりやすい色にしました。

北海道likersライターりゅうと:最年長での騎手デビューとなりますが、意識することはありますか。

ゴール後の様子

ゴール後の様子 出典: ばんえい十勝

小野木騎手:意識するというほどのものではありませんが、自分が活躍できれば「そういう人もいるから自分も今から騎手やばんえいの世界を目指してみよう」という人が出てくるのではないかと思うことはあります。同時に、自分が活躍できないとそういった人があきらめてしまうのではないかということも気にしています。きっかけになれれば嬉しいですが、マイナスにならないようにしたいという気持ちがあります。

北海道likersライターりゅうと:最後に、ばんえい競馬での仕事に興味を持っている方・ばんえい競馬のファンの方にメッセージをお願いします。

小野木騎手:ばんえい競馬に関わろうと考えている人に対しては、競馬場は特殊なところだったり動物に関わるところだったりで不安はあると思いますが、やってみると案外なんとかなるし楽しいところです。僕自身も馬に触ったことはなかったですがこうやって騎手になれているので、興味を持っている方には30歳を過ぎてからでも遅くないので来ていただけたら嬉しいです。ファンの方には、これから温かい目で見守ってくれたらなと思っています。

ーーーお話を通して、馬が好きな気持ちと経験を積んで騎手として成長したいという気持ちが強く伝わってきました。「百折不撓」という抱負のとおり、苦難にも立ち向かい騎手としていかに馬を勝たせるか。これからの小野木騎手の活躍が楽しみになるようなインタビューでした。

連載「ばんえい競馬の未来をつくる人」では、ばんえい競馬で活躍する若者たちに迫ります。伝統文化を次の世代へつなげる彼・彼女たちの想いとは。連載記事一覧はこちらから。

Sponsored by 楽天競馬