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「大自然に惹かれて移住を決めた」北海道を愛する2人のイチゴ栽培(猿払村)

2024.01.08

最近何かと耳にする機会が多くなった“地域おこし協力隊”。かくいう筆者も2023年春から宮崎県で地域おこし協力隊として活動しています。

そんな“地域おこし協力隊”ですが、各地域の実情に即し、多岐にわたる活動を展開しています。同じ協力隊という立場であっても把握しきれないほどです。

実は、北海道はこの“地域おこし協力隊”の隊員数が全国最多を誇るのです。各地の活動をつぶさに見てみると、興味深く、素敵なものがあちこちから見つかります。そうした数多の活動のなかから、今回は猿払村の地域おこし協力隊、山口さんと山田さんにお話を伺いました。

山口智代(やまぐち・ともよ)。2022年8月より猿払村地域おこし協力隊。北海道千歳市出身。SNS発信などの広報活動を中心に担当している。

山田久美子(やまだ・くみこ)。2022年7月より猿払村地域おこし協力隊。福岡県出身で、夫婦で移住し協力隊となる。イチゴ栽培における現場作業を中心に担当している。

どうして猿払村の協力隊員に?

猿払村zoom

今回はオンラインで取材しました。 出典: 北海道Likers

北海道LikersライターFujie:猿払村の協力隊になられたきっかけは何ですか?

山口さん:私は、前職で6次産業をしている養鶏場の店舗管理・運営を任されていたのですが、自分が今後もずっとこの仕事をやり続けるとすると、そんなに面白くないかもなと漠然と思っていたんです。

そのときに、道北で“地域おこし協力隊として、イチゴの栽培に携わってくださいませんか”という募集案内を見つけました。販路を広げたり、SNSの発信をしたりといった仕事内容で、これは面白そうだなと思ったのが最初のきっかけですね。

募集案内を見つけたときは、まだ地域おこし協力隊がどういう制度なのかも、いまいちよくわかっていませんでした。自分でいろいろと調べていって、最長3年間その土地で暮らしながら生活に馴染んで、その後は起業する人もいれば就職する人もいる、そういう制度なんだとわかり、やってみたいなと思ってここまで来ました。

猿払村 イチゴ

出典: 猿払村

山田さん:私の場合は、もともと夫婦で移住したいという想いがありました。移住するにあたって、場所はどこがいいかを考えたときに、以前旅行で訪ねた北海道がいいよねと、お互い直感でしかありませんでしたが、共通認識だったんです。

場所が北海道と決まれば、次は仕事です。結果としてイチゴ栽培をしていますが、当初農家をするという考えは全くなかったんです。祖父母が九州で農家をしており、その大変さをすごく聞かされていたんですね。だから、絶対やりたくないと思っていました。

ただ、あるとき参加した移住フェアで、“イチゴ農家を夫婦でやってみませんか”という募集を見つけたんです。そこからイチゴがすごく気になり出して(笑) 絶対にやりたくないと思っていたことや自分の性格も踏まえて、相当時間をかけて情報を集め、確かめました。

そしていよいよ移住しようというタイミングで再び調べてみると、北海道内でイチゴに関する協力隊の募集をしていたのが、猿払だけだったんです。ほかの地域で地域おこし協力隊ではない形式での募集もあり、それも検討しました。でも、好奇心旺盛なタイプの私には、地域おこし協力隊が合っているんじゃないかということで猿払を選びました。

簡単ではない道のりだからこそ

猿払村 イチゴ

出典: 猿払村

北海道LikersライターFujie:お二人とも、イチゴ栽培に興味を惹かれて猿払に来られたと思います。猿払村のイチゴ栽培の取り組みは、着任当時どういう段階だったのですか。

山口さん:私たちが着任するより前に、ある役場職員がイチゴ栽培をやってみたらどうだろうかと、提案したところから始まっていると聞いています。

夏にイチゴが国産で栽培されることはものすごく珍しいということで、そこに挑戦しようと動き出しました。着任時は、プロジェクトのまだかなり初期のころだったと思います。思っていたよりも、もっと根底のところからやっていかなければいけないんだなと感じていました。

山田さん:私たちの一世代上の先輩が最初から携わっているのですが、もともと酪農以外の農業が根付いていない地域ということもあり、本当にいろいろなことに関して、これから基礎を固めないといけないんだなと感じました。

猿払村 イチゴ 作業

出典: 猿払村

北海道LikersライターFujie:最終ゴールから見ると、今はどのあたりなのでしょうか。

山田さん:うーん、感覚的にはまだマイナスじゃないかと思うぐらいですけどね(苦笑)

山口さん:そうですね。こういうプロジェクトの始まりから成功するまでというのは、本当にきっと10年、20年といったロングスパンで考えなければいけないと思うんですよね。私たち協力隊のたかが3年、されど3年という期間では、土台の中の土台を作っている最中だと捉えています。

ですから、最終的なかたちを必死に考えるというよりも、今自分が持っているスキルを精一杯生かすことで、それが誰かの助けになるとか、周りにいる人にとって意味ある活動になるというところを意識しています。自分の仕事をしていくことで、最終的に地域貢献に繋がればいいなという想いです。

山田さん:先ほど「マイナス」とは言ったのですが、今できることをコツコツやるということを私個人はとても大事にしています。

興味を持ってもらうために開いているイベントなどで、村民の方に喜んでいただけたり、想像していた結果通りになったりすると、少しずつ近づいているなと思えます。そういう経験を積むことで、たとえマイナスに感じる瞬間があっても、コツコツやればしっかり繋がっていくな、見てくれている人はいるなと思えますよね。最近ではそう思える瞬間も増えてきて楽しいです。

惚れ込んだ猿払で暮らす先に

猿払村 名所

出典: 猿払村

北海道LikersライターFujie:お話を伺っていると、お二人の北海道愛・猿払愛が垣間見えます。北海道や猿払の魅力を教えてください。

山口さん:一口に北海道といっても、地域によって違うところは結構多いですよね。これまでなじみの薄かった大自然や景色も多いです。千歳に住んでいたころには、こんなに日常的に鹿が見られることはありませんでした(笑)

猿払村 名所

出典: 猿払村

山田:やはり九州出身の私としては、北海道全体の大自然は魅力です。九州とはまた違う大自然といいますか。北海道内でも、地域によって雰囲気がそれぞれ違いますよね。

食でいうとホタテと牛乳。とにかく質がいいものがとれるので最高です。あまり知られていないようですが、猿払産ホタテは『崎陽軒』さんのシュウマイにも使われています。景観では、CMにも使われたことのある『猿払村道エサヌカ線』はやはり良いですね。

北海道LikersライターFujie:お二人が感じる魅力をどのように伝え、猿払を盛り上げていきたいですか?

山口さん:私の惹かれた猿払や北海道の姿は、雄大な景色や大自然なんですね。ある意味では、人の少なさが魅力的だったんです。ですから、むやみやたらと人口を増やすような取り組みに走るのではなく、今あるこの大自然を存分に生かすかたちで、人と大自然の共存のあり方を模索しながら盛り上げていきたいですね。

山田さん:私も山口さんがおっしゃったように、自分たちの好きな部分を削ってまで行う活動は望ましくないですね。よくあるかたちで盛り上げたいというよりも、猿払ならではの良さをまた別のかたちの何かで盛り上げてPRして、こういう良いものがあるよと伝えていきたいですね。まだまだ模索しながら取り組んでいきたいと思います。

 

―――大自然とその土地に暮らす人々に惚れ込んで猿払村にやってきたお二人。その愛の強さは本物です。イチゴ栽培のプロジェクトとともに、今後の猿払村から目が離せませんね!

【画像】猿払村

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