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ばんスタでおなじみ!アナウンサー・太田さんが「伝える仕事」にかける想い

2023.12.27

北海道帯広市で開催されている世界唯一の競馬・ばんえい競馬。体重1トン前後のばん馬たちが、重いソリを曳きゴールを目指します。

今回は、そんなばんえい競馬でレースの実況やレース間の番組、レースの勝利騎手インタビューなど幅広い業務に携わる、アナウンサーであり「OProject株式会社」代表の太田裕士さんにお話を伺いました。

太田裕士(おおた・ゆうじ)。1975年生まれ、帯広出身。ばんえい競馬を含む北海道内の競馬実況をはじめ、競馬の魅力を伝える多くの仕事に携わっている。「OProject株式会社」代表。

ホッカイドウ競馬からばんえい競馬のアナウンサー、そして番組制作も手掛ける会社の社長へ

太田さん

取材はオンラインで行いました。 出典: 北海道Likers

北海道Likersライターりゅうと:ばんえい競馬のアナウンサーになろうと思った経緯を教えてください。

太田さん:私はホッカイドウ競馬がキャリアの最初で、前の会社でホッカイドウ競馬の実況を担当しておりました。ばんえい競馬にかかわるきっかけは、帯広市単独開催になる前年、動画配信のGYAOの中で、『BANBA王』という番組が1年だけ行われ、スタジオのコメンテーター的な感じで出演。2007年にばんえい競馬が帯広市の単独開催となった際に主催者運営の番組がスタートし、そこでMCを担当することになったのがきっかけです。

そして2012年に、ばんえい競馬のアナウンサー・井馬博さんがご勇退されるということで、実況を担当することになりました。その2年ほどあとに当時上司だった小枝佳代アナウンサーも引退され、私が引き継ぐことになりました。

2010年からは「STVラジオ」の札幌・函館競馬場の実況にも携わっています。こう考えると、北海道の競馬全体に関わっていますね。「Aiba札幌駅前・石狩」など場外発売所での競馬関連のイベントのお仕事もいただいています。

実況1

実況中の太田さん 出典: ばんえい十勝

北海道Likersライターりゅうと:現在の仕事内容について教えてください。

太田さん:おもな仕事は実況放送です。加えて、スタジオのMCなども、ファンの方がよく知っている仕事でしょうか。

そのほか、番組『ばんスタ』やYouTube配信『ばんスタ延長戦』で、内容やテーマ決め、素材づくりや取材などの制作も行っています。普段のスタジオではレース映像などを手掛けている会社が技術(撮影や音声、照明、編集など)をしてくださるのですが、『ばんスタ延長戦』のときは自分たちで技術の仕事もします。

個人としては、事務や経理など会社に関わること全般もしています。

また、会社では、競馬だけでなく結婚式などイベントの司会をしています。ばんえい競馬の実況を始める前は、ホッカイドウ競馬の実況と結婚式の司会などをしていました。ただ、今は週末にばんえい競馬があるので、結婚式の司会はほぼしていないですね。

打ち合わせ中 出典: ばんえい十勝

北海道Likersライターりゅうと:ばんえい競馬開催日の1日の流れを教えてください。

太田さん:競馬場に行き、まず自分たちのいろいろな準備をします。例えば、出走表の色塗りや制作の打ち合わせ、全体の打ち合わせなど、準備を全て行ってから本番に入ります。

本番に入れば番組の流れの通りですね。スタジオで始まり、実況が馬紹介、スタジオに戻って予想をし、またレースの実況……という流れです。もちろんコーヒーを飲んだりもしますよ(笑)

わかりやすく面白い実況のために何ができるか

北海道Likersライターりゅうと:実況をする際にはどのようなことに気をつけていますか?

太田さん:間違わないことが前提ではありますが、人間なのでやはり間違えてしまうこともあります。そのため、確認作業に力を入れています。

あとはわかりやすく伝えることで、ばんえい競馬をより楽しんでいただけるようにしたいですね。とくに観戦しているファンの気持ちを代弁できたらいいと思っています。例えば障害で膝をついたときやゴール前で止まったときは「ああっ」と思いますよね。私もばんえい競馬のファンの一人なので、そういった気持ちを実況で伝えていけたらいいなと。

北海道Likersライターりゅうと:平地競馬の実況もされていますが、ばんえい競馬とサラブレッドの競馬、実況をするうえで違いはありますか?

太田さん:サラブレッドの競馬に比べて、ばんえい競馬は馬が止まることと、レースがゆっくりであることが大きな特徴ですね。それでも自分の実況を見返してみると、もっとゆっくり喋ったほうがいいなと感じることがあります。

北海道Likersライターりゅうと:自分の実況を見返して復習したり、アナウンスの練習などもするのですか?

太田さん:はい。基本的に発声はしますね。朝起きたときは声が出ないので、短時間ですができるだけレース前に声を出したり、滑舌の練習をしたりしています。

実況は、見返すときは細かいところももちろん見ますが、全体的にどういうレースだったかを振り返りますね。

後輩たちにも間違いなど指摘することはありますが、あまり指摘しすぎると、どう話したらいいかわからなくなる可能性もあるかなと思って……。喋りに正解はありませんから。それよりも自由に喋れるほうが良いと思います。日本語の間違いなどがあれば指摘しますが、自由に面白く、個性のある喋りをしてくれたら良いです。スタジオの学生もそうですね。

勝利ジョッキーインタビュー

勝利ジョッキーインタビュー 出典: ばんえい十勝

北海道Likersライターりゅうと:ほかのアナウンサーに比べて力を入れているところなどはありますか?

太田さん:あまりないですね(笑) 自分だけではなくスタジオ全体がレベルアップして、番組を見るみなさまに楽しんでもらうことをいつも考えています。自分がどうこうといったことはあまり考えないです。

発信者である私たちが、ファンとばんえい競馬、またそこで働く人々との窓口でありたいと思っています。“ファンの方に伝えられること”が強みなので、“ファンのみなさまにばんえい競馬を楽しんでもらえるように、どう伝えるか”を常に考えています。

アナウンサー・社長・ばんえいファンとして見てきたものと見据えるもの

雑談

後輩のアナウンサーたちと雑談 出典: ばんえい十勝

北海道Likersライターりゅうと:社長として、大滝翔さんや蛯名彩さんなど後輩アナウンサーの育成も行っていますか?

太田さん:そうですね、どうやってこの仕事を後輩たちに引き継いでいくかというところも使命だと思っています。自分も先輩方から引き継いできましたが、それをどのように後輩に引き継ぎ、その後輩たちがさらにどう引き継ぐのかということも教える必要があると思っています。

今、人手不足でアナウンサーを1人探そうと思っているのですが、なかなかいないですね。大滝を見つけるときも苦労しました。なかなか見つからないとき、ハローワークに求人を出したら応募してきて。ハローワークでアナウンサーを見つけてしまったんですよね(笑)

どこも人手不足ですが、アナウンサーもなり手が少ないといわれています。それは、競馬全体がどん底だった時期の影響が大きいのかなと……。

今は売上も回復して仕事も増え、アナウンサーが必要になっていますが、自分と後輩の間でけっこう世代の間隔が空いてしまっているんですよね。このままだとアナウンサーがいなくなってしまうので、しっかり繋いでいく必要は感じています。

北海道Likersライターりゅうと:「OProject株式会社」の代表・アナウンサーとして、ばんえい競馬のために今後どのように活動していきたいですか?

太田さん:ばんえい競馬の存廃問題のころから見ていますので、新聞の一面に「廃止」と出たときや当時の売上を見たときは、本当に潰れるのではないかと思いました。しかし、今は売上も当時では考えられなかったほど回復しました。

V字回復の背景には、関係者の努力や時代の流れもあると思いますが、なによりもファンの方が魅力を感じ、それを伝えているおかげだと思っています。自分たちも、まだまだマイナーなばんえい競馬の魅力をどのように伝え、広げていくかを考え続けていく必要があります。

もちろん、現在のばんえい競馬の魅力を伝えることも大事ですが、将来馬の頭数が減ったときにどうしていくかなども、これから考えていくべき課題だと思います。

いろいろな課題がありますが、ばんえい競馬がどういったかたちで進んでいくかはとても大事で、ばんえい競馬に関わる人全体で考えていくべきです。いろいろな人が意見を出し合えばより良いものになっていくと思いますので、自分たちの会社もその一員としてばんえい競馬の役に立てればと思います。

インタビューの準備中 出典: ばんえい十勝

北海道Likersライターりゅうと:最後に、太田さんの考えるばんえい競馬の魅力について教えてください。

太田さん:レースは非常に迫力や厳しさがあり、ゴール前で馬が止まったりするのはギャンブルとしてもほかの競馬にはない面白さがあると思います。平地競馬ではゴール近くで何馬身も離している馬がよほどのことがない限り負けることはまずありませんが、ばんえい競馬では止まると3馬身くらいあっても逆転されてしまいますよね。

それに加えて、馬たちはレースでは頑張っていますが、レースから一歩離れるととても愛らしいです。サラブレッドはかっこいい、ばん馬はかわいいというイメージですかね。ばん馬は、体は大きいですが、表情が柔らかくかわいらしいというギャップは魅力だと思います。

 

ーーーばんえい競馬の存続が危うい時期から携わり、現在はアナウンサーに加え番組制作などを行う会社の社長としてばんえい競馬に携わる太田さん。今回のお話を通して、ばんえい競馬をより良く伝えるためにどうすればいいか、そのために自分ができることは何かを考え続けていることが伝わってきました。

ばんえい競馬ではレース前の『ばんスタ』や配信での『ばんスタ延長戦』、そしてレース内での実況など多くの場面で太田さんのお仕事を見ることができます。筆者も楽しみにしている温かく面白い番組ですので、興味を持ってご覧いただけたら嬉しいです。

連載「ばんえい競馬ではたらく人」では、ばんえい競馬を支える仕事に就くさまざまな人の魅力に迫ります。お仕事と記事の一覧はこちらから。

【画像】ばんえい十勝

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