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塩ベースの汁は石狩汁、それとも三平汁?北海道の郷土料理を道産子が解説

2023.12.13

冬になると食べたくなる、北海道の郷土料理があります。魚が入っていて、具だくさんで、ほっと身体も心も温まる汁がたっぷりの……。そう、『三平汁』! あれ、『石狩鍋』?

たしかに似ていますが、違う食べ物です。どんな違いがあるのか、またどんな料理なのか、それぞれの料理について詳しくご紹介します。

「三平汁」は塩漬けした魚の汁物

北海道では昔、魚を塩漬けや味噌漬けにして、一年中食べられる保存食にしていました。そんな塩漬けした魚と、にんじんや大根などの野菜を一緒に煮込んだのが『三平汁』です。身体を温める料理として、寒い冬に食べられています。

北海道では200年以上も前から食べられていて、現在でも家庭料理の定番です。基本の具材や味つけは同じですが、地域や家庭ごとに異なる場合も。旬の野菜を加えて、冬以外の季節に食べる地域や家庭もあります。

使われる魚はサケが多いですが、ほかにもタラやニシンなどを使います。塩漬けだけでなく、味噌漬けやぬか漬けの魚で作ることも。煮込んだあとは塩で味を調えることが多いですが、醤油や味噌などで味つけすることもあります。

北海道生まれ、北海道育ちの筆者は給食で三平汁を何度も食べたことがあるなど、道産子にとって身近な郷土料理のひとつです。

なぜ『三平汁』というのか、名前の由来は諸説あります。

そのひとつが、“斉藤三平”という人物が関わっている“人名説”。漁師の斉藤三平が松前藩の藩主に振る舞ったとか、武士の斉藤三平が秋田名物の『しょっつる汁』をまねて藩主をもてなしたとか、同じ名前でも違う逸話がいくつもあります。

また、有田焼の始祖である“李三平”が焼いた皿に盛り付けられたからという説も。

「石狩鍋」は生サケの味噌煮込み鍋

『三平汁』と同じく、北海道の郷土料理のひとつである『石狩鍋』。ぶつ切りにした生ザケの身とあらを玉ねぎやキャベツ、大根などの野菜や豆腐と一緒に、合わせ味噌を溶かした昆布出汁で煮込む鍋です。仕上げに山椒をかけます。熱々にして食べれば身体が温まり、昔から冬に食べられています。

名前の由来は、サケがよく獲れる石狩川がある石狩町(現在の石狩市)から生まれた漁師料理であることから。江戸時代からサケ漁がさかんだった石狩町では、大漁の際、ご褒美にと味噌汁にもサケを入れて食べていたのが始まりなのだそうです。

北海道では家庭料理の定番で、野菜にはいろんな具材を入れます。いくらやバターをトッピングしたり、汁を牛乳にしたりといった北海道ならではの贅沢なアレンジも。また飲食店などでも食べられます。道産子の筆者は、『石狩鍋』も給食で食べたことがあります。

三平汁・石狩鍋の共通点と違い

『三平汁』と『石狩鍋』はどちらも北海道の郷土料理で魚を使います。サケを使うという点も同じですね。冬に食べて身体を温めるという共通点もあります。よく似ている料理だといえそうです。

『三平汁』と『石狩鍋』の違いは魚の調理法にあります。『三平汁』は塩漬けや味噌漬け、ぬか漬けなど漬け込んだ魚を使うのが特徴。一方、『石狩鍋』は生の魚を使います。また『三平汁』はサケ以外にニシンやタラなどで作られることもありますが、『石狩鍋』はサケで作られます。

味つけにも違いがあり、『三平汁』は漬け込んだ魚の塩味(えんみ)と、塩のみで味つけをするのが基本。醤油や味噌などの調味料で味つけをすることもありますが、具材を煮込んでから味を調えます。一方、『石狩鍋』は具材と一緒に味噌を溶かして煮込むのが基本です。

ルーツはアイヌ料理?

『三平汁』と『石狩鍋』が似ているのは、どうやらアイヌ料理にルーツがありそうです。

アイヌでは、肉や魚、野菜、山菜などを煮込んで作った汁物を“オハウ”といい、日常的に食べられていました。魚を使うと“チェプオハウ”、肉だと“カムオハウ”という呼び方になります。“チェプオハウ”が『三平汁』や『石狩鍋』などになったのではないか、ともいわれています。

 

似ているけれど、実は違う『三平汁』と『石狩鍋』。どちらもおいしい料理です。北海道の家庭や飲食店などで食べる機会があれば、ぜひ違いをたしかめながら味わってみてください。

【参考】農林水産省、奥尻町、石狩市、実践女子大学
三平汁 北海道 / 農林水産省 うちの郷土料理
「 三平汁 」 は郷土食 ・ 伝統食 / 奥尻町
うけつぎたい伝統食 / 農林水産省 北海道農政事務所
石狩鍋 北海道 / 農林水産省 うちの郷土料理
石狩市年表 / 石狩市
アイヌの伝統料理 / 農林水産省 北海道農政事務所
アイヌの食文化― その特徴および和食との共通点 ― / 佐藤幸子・浜守杏奈 実践女子大学 食生活科学科 調理学第二研究室 新渡戸文化短期大学 食物栄養学科 調理学第二研究室

【画像】岬太一、HAPPY SMILE、iori、プロモリンク、keiphoto、bj_sozai / PIXTA(ピクスタ)

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