大きさが普通の10倍!? 北海道で冬に活躍する「超巨大な野菜」といえば…
10月下旬~11月上旬の時期、北海道ではとある巨大な野菜がスーパーに並びます。通常のものと比べると、10倍以上の重さがあるものも。その昔、北海道の冬にはなくてはならない野菜でした。
一般的にもよく食べられている野菜ですが、規格外なほどに大きいのは北海道ならでは。さて、どの野菜なのでしょうか?
冬に活躍する「超巨大な野菜」の正体は?
北海道では冬に作物を育てるのが難しかったことから、貯蔵性の高い野菜が活躍しました。大きい分だけ食感もしっかりとしていて、食べごたえも十分。北海道の郷土料理にも活用されています。
さて、超巨大な野菜の正体は……
正解は「キャベツ」
北海道で冬の前によく見かける、とてつもなく大きな野菜の正体は“キャベツ”。北海道の伝統野菜でもある、『札幌大球』(さっぽろたいきゅう)という品種です。名前にふさわしく、本当にとても大きい!
超巨大なキャベツは「札幌大球」
『札幌大球』は、1球あたりの重さが8~20kg、大きさは球径で40~50cmほど。一般的なキャベツの重さが1.2kgほどなので、ものすごく大きいとおわかりいただけるでしょう。
肉厚の葉はしっかりとした食感で、甘みのある味が特徴です。
北海道だから巨大キャベツが必要だった!
今よりずっと以前、北海道では冬の期間に農作物を生産できず、食事で野菜不足になりやすい時期がありました。
『札幌大球』が収穫されるのは晩秋。貯蔵しても傷むのは外側だけで、内側の食べられる部分は確保されるため、冬に長期保存ができます。
昭和初期には漬物用としても栽培されていました。長期保存ができ、漬物にもなり、野菜不足の冬でもビタミン源になる『札幌大球』は、北海道で重宝されたのです。
とはいえ、現在は冬でもいろんな野菜が手に入るようにもなり、『札幌大球』の需要は減りました。重量があるため作業の負担も大きく、栽培も次第に減ってしまう事態に……。
2014年には札幌市で『札幌大球』の栽培が復活。札幌市の『札幌大球応援隊』などの活動によって栽培が続けられています。
2023年に札幌市で生産した農家は3戸だけですが、1年前から1戸増加。今でも冬直前にはスーパーの野菜コーナーや八百屋に『札幌大球』が並びます。1個を使い切るのは難しい家庭もあるので、カットされたものも販売。ずらりと並んだ巨大キャベツは、北海道で冬の始まりを告げる風物詩といえそうです。
北海道の郷土料理にも「札幌大球」を活用
北海道の郷土料理でも、『札幌大球』が活用されています。
たとえば『ニシン漬け』。明治時代、北海道でニシン漁がさかんだったころに、春に獲って保存していた身欠きニシンを、秋に『札幌大球』などの野菜と一緒に漬け込んでおいて、冬の保存食にしていました。キャベツはざく切りにして入れるほか、大根やにんじんなども入れます。昔はそれぞれの家庭で漬けられていたものが、現在はスーパーなどでも買えるため、作らない家庭も増えました。
また、北海道ではお正月に食べる『飯寿司』(いずし)にも『札幌大球』を使うことがあります。『飯寿司』は魚と野菜を米麹に漬けて、乳酸発酵させた保存食です。『ニシン漬け』と同じく、昔は各家庭で作られていましたが、現在はスーパーでも買えます。具材としてキャベツを使う場合もあれば、使わない場合も。
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現在は、北海道の郷土料理だけでなく、飲食店や家庭料理でも『札幌大球』が活用されています。
コールスローやロールキャベツ、豚バラ肉を挟んで煮込むミルフィーユ鍋などのキャベツの定番料理から、脇役としてもおいしい焼きそばやお好み焼きなど。北海道グルメでいえば、ジンギスカンや鮭のちゃんちゃん焼きにもキャベツが使われています。『札幌大球』を使えば、いつものキャベツとは違う、肉厚だからこその食感と甘みを味わえそうです。
見た目のインパクトが大きい『札幌大球』は、北海道の冬の食卓を支えてくれた食材でした。今でも『札幌大球』はあるので、見かけたらぜひ北海道の伝統野菜を味わってみてくださいね。
【参考】農林水産省、味の素株式会社、株式会社ブレナイ社
北海道の伝統野菜 / 農林水産省 北海道農政事務所
食材の目安量 / 味の素 AJINOMOTO PARK 料理の基本
札幌大球とは / 札幌ブレナイ社 札幌伝統野菜「札幌大球」応援隊
ニシン漬け / 農林水産省 北海道農政事務所
ニシン漬け 北海道 / 農林水産省 うちの郷土料理
飯ずし / 農林水産省 北海道農政事務所
飯寿司 北海道 / 農林水産省 うちの郷土料理
【画像】IYO、studio-sonic、まんぞう、ueda、臼井正芳、gontabunta、Sixcube / PIXTA(ピクスタ)
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