「仲間とばんえい競馬を盛り上げたい」金田厩務員が語る仕事のやりがいと夢

2022.10.11

北海道民全体の宝物として選ばれた北海道遺産の中に、“北海道の馬文化”があります。現在帯広市で開催されているばんえい競馬のばん馬たちもそのひとつです。ばん馬たちの多くは、明治の開拓時代に労働力として活躍した農耕馬の子孫にあたります。

今回お話を伺ったのは、ばんえい競馬厩務員として活躍する金田駿人さん。家族でばんえい競馬にたずさわる金田さんに、厩務員のお仕事や将来の夢を語っていただきました。

金田駿人(かねた・はやと)2003年生まれ、帯広市出身。2020年より、ばんえい競馬厩務員となる。父は金田勇調教師で3人兄弟の三男。兄は金田利貴騎手、次男の金田武(かねた・たける)さんも昨年より厩務員としてばんえい競馬に携わっている。

ばんえい競馬の未来をつくる人

ばん馬のお世話が楽しかった子ども時代

北海道LikersライターKawahara:ばんえい競馬の厩務員となったいきさつを教えてください。

金田厩務員

今回の取材はオンラインで行いました。 出典: 北海道Likers

金田さん:父(金田勇調教師)がばんえい競馬の騎手だったので、物心がついたころから周りにばん馬がたくさんいる環境で過ごしました。馬が好きで親しんでいるうちに、「いずれ自分も大人になったらこの仕事をするのだろうな」と漠然と思うようになりました。

金田厩務員子ども時代のお写真

子どものころから馬が好きだった 出典: ばんえい十勝

中学生までは兄弟全員が少年野球をしていてとても忙しかったので、ばん馬の世話をしたかったけど“馬はおあずけ”という感じで。高校生になってからは野球よりも馬を優先することができるようになり、積極的に厩舎の手伝いをしていました。卒業後、厩務員として本格的に働いています。

北海道LikersライターKawahara:厩務員としてのお仕事内容を教えてください。

金田さん:5~6頭の担当馬を1頭ずつ調教していきます。1頭につき1時間をめどにおこなっています。朝4:30頃から始めて、調教のほかに馬房掃除や馬のケアを行い、一通りの作業が終わるのがだいたい10:00頃です。その後は馬たちに間食の餌や、夕飼い(夕食)、夜飼い(夜食)をあげています。

レース開催日は普段の作業に加えて、ナイター競馬開催中、第1レースに出走する馬がいる日は13:00頃より馬装などの準備が始まります。遅い時間のレースに出走する馬がいるときは朝から晩まで1日中外にいることもありますね。

北海道LikersライターKawahara:厩務員の仕事で大変だと感じるのはどんなことですか?

金田さん:学生から社会人になったということで、仕事に慣れるまでは大変だと感じる事もありました。でもそれはどの世界でも同じだと思います。

厩舎にて

フレイムゴールドのたてがみを結わく 出典: ばんえい十勝

現在はすっかり慣れたのであまり苦労は感じないです。厩舎で一緒に働くスタッフがみな若く同世代なので、雰囲気も良く仕事が終われば話をしたりして楽しく過ごしています。

北海道LikersライターKawahara:金田厩務員が担当している馬で、特に注目してほしい馬をあげるとしたら?

金田さん:4歳のマルホンリョウダイです。体重もばん馬にしては軽いのですが、まじめに調教もこなし能力的に伸びしろがあると思うので、しっかりと体力をつけていくことができたら強くなってくれるのではと思います。

マルホンリョウダイ

今後が期待されるマルホンリョウダイ 出典: ばんえい十勝

厩務員として初めて経験した「ばんえい記念」

北海道LikersライターKawahara:厩務員になって印象に残るエピソードはどんなことでしょうか?

金田さん:『ばんえい記念』に自厩舎の馬が出走したことです。

今年の3月、アオノブラックが出走したときにパドックで出走馬の周回を担当しました。そのときに感じた熱気に感激しました。出走する騎手たちの独特の緊張感や、競馬場内のお客さんのボルテージがどんどん上がってきていることが感じられ「みなさん『ばんえい記念』を楽しみに来てくださったのだな」と。その日の熱気は本当に特別なものだと感じました。

北海道LikersライターKawahara:ズバリ今後の夢を教えてください!

金田さん:ばんえい競馬の騎手になることです。子どもの頃からいずれ騎手になりたいと思っていました。今年の『ばんえい記念』に厩務員として携わることができ、ますますその思いは強くなっています。いずれ自分もばんえい記念に出走できる騎手になりたいです。今は騎手試験に向けて勉強を続けています。精一杯勉強して少しでも早く合格することが目標です。

「ばんえい競馬で働いてみたい」と思ってもらうために

マルホンリョウダイ号

兄の利貴騎手とゴール後のマルホンリョウダイをねぎらう 出典: ばんえい十勝

北海道LikersライターKawahara:未来のばんえい競馬をどうやって盛り上げていきたいですか?

金田さん:ばんえい競馬が長く続くためには、若い力が必要なのはもちろんだと思います。ただ馬の世話をするということは、仕事量が多かったり、動物相手なので、どうしても休みがとりづらかったりと、なかなか若い人や未経験の人が飛び込みづらい環境なのも事実です。そういう環境が少しずつでも改善されていけば、就職先として考えられるのではと思います。

そして、仕事をしていて辛いと感じるときもありますが、それを超える“ばんえい競馬”の魅力があることを伝えられたらと思っています。

北海道LikersライターKawahara:最後に、ばんえい競馬の仕事に興味があるかたへメッセージをお願いします。

金田さん:ばんえい競馬はほぼ毎週開催しており、ばん馬たちの熱い勝負が繰り広げられています。仕事の大変さはありますがそれ以上にやりがいがある仕事だと思います。

自分の担当する馬がいざレースに出走するとなると、「勝ってほしい!」と期待しますし、レース中は大声をかけていつも応援しています。一緒に戦っている気持ちです。

「何も変わったことがなく淡々と過ごす日々を変えたい!」と思う人がいたら、就職先の選択肢の一つとして考えてほしいなと思います。

 

―――ばんえい競馬の未来についてしっかりと自分の考えを持っている姿がとても印象的でした。金田厩務員の子どもの頃からの夢が叶いますように。応援しています!

連載「ばんえい競馬の未来をつくる人」では、ばんえい競馬で活躍する若者たちに迫ります。伝統文化を次の世代へつなげる彼・彼女たちの想いとは。連載記事一覧はこちらから。

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