子どもたちの植樹

閉鎖したゴルフ場を森に戻す。人気観光地・富良野の土を触って学んだこと

2022.11.16

最近「SDGs」や「ゼロカーボン」といった言葉を耳にする機会が増えています。また、企業や団体、学校でもその取り組みを実践しているところが年々増加傾向に。言葉は知っていても、実際に何か行動ができているかと問われると、具体的にできていることは意外と少ないものです。

今回は、富良野市にあるNPO法人が植樹や地球環境に関するプログラムを行っていると聞き、どんな活動なのか取材してきました。

「NPO法人C・C・C富良野自然塾」が行っている活動

「NPO法人C・C・C富良野自然塾(以下、富良野自然塾)」は、作家・倉本聰さんが塾長を務めているNPO法人。「富良野プリンスホテル」に隣接するゴルフ場が閉鎖されたのを機に、ゴルフ場を元の森として還す「自然返還事業」、そのフィールドを使った「環境教育事業」を行っています。

こちらが当初(2005年)のゴルフ場。コースの形や池がはっきりわかります。

木が育っているのがよくわかるこちらの写真は2018年に撮影されたもの。「自然返還事業」による植樹を行って、今年で約17年。その数は年内に8万本に到達する見込みです。元の森に戻るのには100年や200年かかるとされています。

「環境教育事業」では、地球環境を楽しく学び体験するプログラムが行われています。

北海道の大自然を五感で感じつつ、演劇的な手法を用いたドラマチックな表現や仕掛けから環境について学ぶことができました。その様子をご紹介します。

ゴルフ場跡で行われる「環境教育プログラム」

今回、ご案内いただいたのは、「富良野自然塾」で統括を担当している中島吾郎さん(写真中央)。創設時からこの場所で活動を続けています。

活動が行われるのは、ゴルフ場だった18ホール中6ホール。全体の1/3ではあるものの、実際にいってみるとその広さに驚きました。

「富良野プリンスホテル」を出発し、敷地内へ。「立入禁止」と書かれたところに一歩足を踏み入れると、ゴルフ場の雰囲気がまだ残る芝生が目の前に現れます。

コースの周りにあるカラマツの木は樹齢80年ほど。この平らな土地から森へ還るには果てしない年月がかかるんだなとあらためて実感します。

体験プログラムには、倉本聰さんの演劇的手法が、各所に散りばめられています。

こちらは『裸足の道』。目隠しをして裸足になり、芝生・砂利・落ち葉・丸太などが敷かれた道を歩くというプログラム。視覚で入ってしまう情報を遮断し、風の音や森の匂い、鳥や虫の声など、ほかの感覚を使いながら大地を感じるというもの。

『46億年 地球の道』は、実際に歩きながら“46億年”を体感してもらうプログラム。46億年を460メートルの距離に置きかえた道を、インストラクターによる解説を聞きながら歩きます。過酷な環境で生命が誕生し、現在に至るまでの果てしない年数を体感できるとともに、これまで地球にあったさまざまな危機を学ぶことができるんです。

こちらは2億年前の恐竜時代。芝生をくり抜いて作られた4つの足跡から「どれくらいの大きさだったのかな」「どんな恐竜だったのかな」と想像が膨らみます。

排出した二酸化炭素をリセット!「ゼロカーボントラベラー」という取り組み

今年から新たな環境プログラムとして始まった『ゼロカーボントラベラー』。旅先で出した二酸化炭素は旅先でリセットすることを目指し、植樹を行う取り組みです。

富良野に旅行で訪れると、移動手段が車であっても飛行機であっても、かならず二酸化炭素が排出されます。東京から2泊3日で訪れた場合に排出される二酸化炭素は約19キログラム。これは、トドマツ1本が1年に吸収する二酸化炭素量とほぼ同じだそう。

この取り組みを始めたきっかけを中島さんに伺いました。

「植樹は先ほどご紹介した自然環境プログラムでも体験できますが、時間をかけずに植樹だけでもっと気軽にできないかというご依頼がありました。ただ、自然環境プログラムで学んでもらってからではないと意味がないのではと考え、お断りしていました。

しかし、この植樹がいろんなことを考えるきっかけになってくれればと。旅行やワーケーションで富良野に来てくれた方に、植樹という貴重な経験をこれから先もずっと記憶に残してもらいたい。環境問題に関心を持ち、そして何度もこの場所を訪れるようになってほしいと思い、行うことにしました」

筆者も実際に植樹をさせていただくことに。まずは植樹する場所を決め、円状に穴を掘っていきます。意外と芝生がしっかり根付いていました。

植樹1回に3本の苗木を植えます。実はこの苗木も一からこちらで栽培されたもの。木の種類にもよりますが、種や木の実からこのサイズになるのに5年ほどかかるそう。今回はハルニレなどを植樹。穴に苗木を入れたあと、土を入れていきます。

最後に、剥がした芝生を裏返して円状に並べていきます。これで植樹が完了! 希望者には植樹地点(GPS座標)を記した認定書を発行してもらえるので、成長の様子を見に再び訪れる方もいるそうです。

土を触ることも久しぶりだったのと、植樹というなかなかできないことをさせてもらえ、とってもいい経験になりました。それだけでなく、ゴルフ場を森に還すことに携われたことも嬉しく思います。

「ゴミを出さない」「紙を使わない」「車に乗らない」など環境問題に配慮すべき事項ではあるものの、ゼロにはできないことが多くあります。中島さんは「このフィールドを訪れ、プログラムを体験するなかで少しずつ意識を変えてもらい、自分にできることを継続的に行ってもらえたら」と話してくれました。

 

「今私たちが生活している地球は未来の子孫のもの。子孫から借りているという認識を持ってほしい。過去は変えられないけど、未来は変えていける。子孫のために今生きている私たちができることを行っていくべき」というお話が印象に残っています。これからの未来のために、無理なことをする必要はなく、できることを見つけて習慣としていくことが重要なんだと学ぶことができました。

※冬季(12~3月)は植樹が行えないため、雪が溶けた4月以降に行われます。詳細は「NPO法人C・C・C富良野自然塾」のホームページなどでご確認ください。

<施設情報>
■施設名:NPO法人C・C・C富良野自然塾
■住所:北海道富良野市下御料
■電話番号:0167-22-4019
■ホームページ:https://furano-shizenjuku.com/

【画像】NPO法人C・C・C富良野自然塾

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