「かいば」じゃないよ。なんて読む?北海道で見られるとても大きな野生動物は…
北海道は雄大な自然が広がっていて、本州ではあまり見かけない野生の動物を見られることもあります。「海馬」もそのひとつ。「かいば」ではありませんよ。さて、なんと読むと思いますか?
「海馬」なんて読む?
脳で記憶を司る部位を「海馬(かいば)」といいますが、今回取り上げる野生動物とはまったく関係がありません。漢字にもあるとおり、“海”にいます。そして、“馬”のように毛が生えているのも特徴です。さて、どの動物かわかりましたか?
正解は「トド」
「海馬」は「トド」と読みます。漢字の語源についてはハッキリとしませんが、海にいる馬のように体が大きく、褐色の毛並みも似ているということなのかもしれません。
トドはアシカの一種で、海に生息する哺乳類です。オスとメスで体格が大きく違います。メスは体長が約1.7~2.5m、体重が300kg以下とはいえ、十分に大きいですよね。オスになると体長は約2~3m、体重は1,000kg以上にもなります。オスは褐色、メスは淡めの色という違いも。体は大きいですが愛くるしい見た目で、ショーをおこなっている水族館もあり、かわいい海獣としても人気です。
エサとしては北海道の海産物として有名なスケトウダラやホッケ、ホテイウオなどを食べます。またイカやタコなども食べる、グルメな動物のようです。
「トド」はほかにも漢字がある!
トドは「海馬」のほかにも「胡獱」という漢字があります。ほかにも、魚へんに毛と書く「魹」という漢字も「トド」と読みます。先ほども説明したように、たしかにトドには毛が生えているので、漢字にも“毛”が使われているのかもしれません。
礼文島から見える「海馬島」もある
北海道の最北端である稚内から、さらに離れた西側にあるのが礼文島。礼文島の北には「海馬島(海驢島)」と呼ばれる離島があります。読み方は「とどしま」。周囲約5kmほどの小さな無人島で、礼文島から見ることができます。
野生のトドが見られるのは冬の北海道沿岸
北海道で野生のトドが見られるのは冬です。とくに多いとされている場所が根室海峡や北太平洋沿岸など。日本海側に回遊することもあるようです。
北海道沿岸ではトドを観察する船やダイビングのツアーがおこなわれています。冬の観測になるので防寒はしっかりと、安全には十分に配慮して臨んでください。
トドと人の共存
20世紀初頭の日本では、資源確保のためにトドが採捕されていました。トドによる漁業への被害が相次いでいたことから、1950年代から有害動物として採捕されるように。1990年代には野生動物の保護の観点から 捕獲する数が制限されるようになりました。しかし、まだ漁業の被害が続いたため、科学的な情報に基づいて生物学的に許容される採捕量を定めて、上限を増やして採捕されるようになっています。
トドの管理をきちんとおこなうために、回遊している数を把握し、効率的な採捕方法を用いて、採捕したものは活用するなどの基本方針が定められています。海洋の環境を守りながらも、人が暮らしていけるように、トドと人が共存していくための努力が今でも続けられています。
冬の北海道を訪れたときには、ツアーなどでトドを見られるかもしれません。北海道、そして日本で暮らす一人として、共存する道も大切にしていきたいものです。
【参考】環境省、礼文町、日本哺乳類学会、農林水産省、水産庁、デジタル大辞泉
トド / いきものログ 環境省
スコトン岬 / 礼文町
10104 海驢島周辺|生物多様性の観点から重要度の高い海域 / 環境省 自然環境局 自然環境計画課
北海道沿岸におけるトド(Eumetopias jubata)の回遊に関する聞き取り調査報告 / 山中正実 哺乳類科学 第45号 121-129(1983)
トドの生態等 / 農林水産省
トド 北太平洋沿岸・オホーツク海・ベーリング海 / 水産庁 水産研究・教育機構 平成 30 年度国際漁業資源の現況
トドの資源評価と管理計画の検討 / 東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科 北門 利英 水産総合研究センター北海道区水産研究所 山村 織生
【画像】スフィア、KinkinMK、Travelgolf、ルカ、HIRO / PIXTA(ピクスタ)