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ばんえい競馬の「女性騎手」を目指す理由とその先にある夢とは?後藤悠乃厩務員に聞く

「ばんえい競馬の騎手ってどうすればなれるんだろう」そんな疑問を持ったことはありませんか?

ばんえい競馬の騎手になるには学校や養成所がないため、まず厩務員として1年以上の経験が必要です。その間に馬の扱いや技術を習得し、試験に合格すると騎手免許がもらえます。そのため、各厩舎に“騎手”を目指す厩務員が少なくないそう。

厩務員の後藤悠乃さんも、ばんえい競馬の騎手を目標にする一人。「馬が好き」という強い想いから、「馬の未来を失くさないためにも、ばんえいの歴史や文化を発信できるような騎手になりたい」と言います。厩務員の仕事そして、現在20歳の後藤さんの夢を伺いました。

後藤悠乃(ごとう・ゆうの)2002年生まれ。中川郡幕別町出身。2020年高校を卒業後、厩務員として服部厩舎に所属。現在は5頭を担当している。

ばんえい競馬の未来をつくる人

きっかけは「ふれあい動物園」

ばんえい競馬_後藤厩務員

今回の取材はオンラインで行いました。 出典: 北海道Likers

北海道Likersライターオオイ:厩務員の仕事を選んだ理由と経緯を教えてください。

後藤さん:一番の理由は騎手になるためですね。

昔から動物が好きでした。帯広競馬場には『ふれあい動物園』という“ばん馬”やポニーと触れ合える施設があり、小学生のころからよく訪れていたんです。今はコロナの影響でやっていませんが、『ふれあい動物園』では“乗馬体験”ができます。

『ふれあい動物園』にて(後藤さん提供) 出典: ばんえい十勝

毎週のように乗馬体験をしていたら、ある日『ふれあい動物園』の園長を兼任している服部調教師から「そんなに馬が好きなら“乗馬サークル”に入ってみないか?」と声をかけていただきました。“乗馬サークル”では土日のどちらか1日だけ馬に乗れます。そのおかげで乗馬技術もレベルアップしました。

また、サークルを通して、ばんえい競馬の歴史や馬文化など多くを学びました。ばんえい競馬は、ばん馬たちがソリを曳く姿から歴史を伝える側面もあります。大好きな馬たち、そしてばんえい競馬の未来を考えたときに、女性騎手が増えたら話題になりお客さまも増えるのではと考え、「騎手になりたい」と思うようになったんです。

そのためにはまず厩務員として基礎を学ぶ必要があるので、服部調教師に「厩舎で働かせてください」とお願いしました。

北海道Likersライターオオイ:他の厩舎で働こうとは考えなかったんですか?

後藤さん:実は厩舎を選べることを当時知らなくて。初めに服部調教師に厩務員になりたいという話をしたときに「お前はどこの厩舎に入るんだ?」と聞かれたんです。服部厩舎の女性厩務員は、長澤幸太騎手の妻・沙也佳さん一人だけ。服部調教師からは「うちは男ばっかりだぞ。他の厩舎もいろいろ見たほうがいいよ」と言われたんですけど、心の中で服部厩舎に入るんだって決めていたので(笑) 迷うことはありませんでした。馬を好きになったのも、馬に乗れるようになったのも服部調教師のおかげです。少しずつでも恩返しができたらって思っています。

憧れの先輩を目指して日々奮闘中

装鞍所にて

装鞍所にて 出典: ばんえい十勝

北海道Likersライターオオイ:厩務員のお仕事は朝が早いイメージですが、どのようなスケジュールで仕事をされていますか?

後藤さん:他の厩務員は4:30ごろから働きますが、私は少しでも早く馬の世話や手入れをしたいので4:00前には仕事を始めています。馬の運動のあとは、朝の餌やりと馬房の掃除をします。お昼、16:00、20:00の餌やり以外は休憩で、馬の餌用の草刈りがあるときは14:00から仕事をすることもあります。

北海道Likersライターオオイ:後藤さんが担当されている馬は何頭なんですか?

たてがみの飾りが可愛らしいサカノキヨマル号

たてがみの飾りが可愛らしいサカノキヨマル号 出典: ばんえい十勝

後藤さん:担当している馬は5頭ですが、餌やりも含めると7頭になります。その中で調教している馬は2頭で、サカノキヨマルとダテヒホウといいます。実は2頭とも明日(※取材日は2022年10月14日)のレースに出るんですよ。馬のたてがみや飾り付けにもこだわっているので、そこにも注目してください!

ばんえい競馬_ダテヒホウ

7番がダテヒホウ号。2022年10月15日第5レースで見事1着に! 出典: 北海道Likers

北海道Likersライターオオイ:服部厩舎はどのような雰囲気ですか?

後藤さん:みんな仲がいいですね。いろいろ教えてもらえますし、お互い助け合っています。カチッとした会社の雰囲気とは違い自由なので、気持ちに余裕があって働きやすいです。

北海道Likersライターオオイ:力仕事も多いと思います。女性として不利だと感じることはありますか?

後藤さん:男性のような力はないし、女性としても平均的な体格なので、厩務員になりたての頃は力をうまく使えず苦労しました。先輩の沙也佳さんは細い身体なのに重たいものを軽々と持っていたので「なんでだろう?」とよく観察してみると、テコの原理を利用しながら身体を上手に使うことがわかりました。

仕事の様子

厩務員は力仕事も多い 出典: ばんえい十勝

沙也佳さんは服部厩舎唯一の女性として長く働いてきた方です。私が厩舎に入ることをとても喜んでくださって。厩舎に入ってから今までずっと丁寧に詳しく教えていただいています。

北海道Likersライターオオイ:素敵な先輩ですね。

後藤さん:他の先輩ももちろん尊敬していますが、沙也佳さんは私のなかで一番理想の人です。馬に対する接し方、完璧な仕事ぶりを見ていると、私も沙也佳さんみたいに仕事ができるようになりたいと思います。

服部厩舎では馬のハミ*や手綱などの道具を作れる人が多いので、私も教わっている最中です。新しく入ってくる後輩のためにも、いろんなスキルを身につけていきたいと思っています。

*ハミ・・・騎手の操作を馬に伝えるため、馬の口に含ませる金属製の馬具

馬が好き!だから「ばんえい競馬」を守り続けたい

北海道Likersライターオオイ:後藤さんの今後の夢を教えてください。

後藤さん:厩務員にしても、騎手にしても、私が沙也佳さんに憧れているように「私みたいになりたい」と思ってもらえる先輩になりたいですね。

そして“文化を伝える騎手”になりたいです。大きなレースの勝利インタビューで歴史や文化を伝え、ばんえい競馬を盛り上げられるような騎手になれたらと考えています。

北海道Likersライターオオイ:発信することに興味があるのでしょうか?

後藤さん:発信というよりは、好きなものを守りたいという想いが強いです。ばんえい競馬は一度なくなりかけたという過去の話をよく聞いていました。「大好きな馬と一緒に仕事がしたい!」と思い、厩務員や騎手という道を選んだのに、なくなってしまっては悲しくて悔しいです。

ばんえい競馬

歴史をつなぐ唯一無二の競馬 出典: ばんえい十勝

北海道では車やトラクターがない時代に、ばん馬の活躍によって開拓した歴史があります。中央競馬の藤田菜七子騎手が注目されたように、ばんえい競馬でも女性騎手が久しぶりに誕生すれば少しでも注目を集められるはず。そこで歴史や文化、平地競馬と違うばんえい競馬ならではの魅力を少しでも伝え、広めたいです。

北海道Likersライターオオイ:若いのに、立派ですね!

後藤さん:誰かのためというよりは、「自分の大好きなものを失いたくない」って想いが強いだけです。

北海道Likersライターオオイ:来年は騎手試験を受験するんですか?

後藤さん:騎手試験には、筆記のあとに実技があります。これから筆記試験用の勉強をしていきたいですし、技術的にもまだ未熟なので厩務員の先輩方の背中を追いかけながら磨いていきたいです。来年は受験しようと思える自分でいられたらいいなと思います。

 

―――馬のことを語るとき、より輝きを増す後藤さん。騎手になる道もばんえい競馬のレース同様、決して平坦ではないはず。しかし、焦ることなくばん馬のように一歩ずつ進んでほしいです。数年後、“後藤悠乃騎手”がばんえい競馬に新しい風を吹き込んでくれることを期待しています!

連載「ばんえい競馬の未来をつくる人」では、ばんえい競馬で活躍する若者たちに迫ります。伝統文化を次の世代へつなげる彼・彼女たちの想いとは。連載記事一覧はこちらから。

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