気付けば大の馬好きに。「何も知らず、身一つで来た」ばんえい競馬・福澤厩務員が語る仕事の面白さ

2022.10.28

毎日馬の世話を行い、競走馬のパフォーマンスを支える大切な仕事、厩務員。体重が1トンを超えるばん馬たちが迫力あるレースを繰り広げるばんえい競馬でも、馬たちをサポートする厩務員が活躍しています。

今回お話を伺ったのは、ばんえい競馬西弘美厩舎の厩務員・福澤太貴さん。大きなばん馬を扱う厩務員という仕事を選んだきっかけや、その魅力を語っていただきました。

福澤太貴(ふくざわ・たいき)。1997年生まれ。北海道芽室町出身。専門学校を中退した後、2018年からばんえい競馬所属。2020年から西弘美厩舎の厩務員。

ばんえい競馬の未来をつくる人

とりあえず行ってみよう。身一つで競馬場へ

福澤さんインタビュー

今回の取材はオンラインにて行いました。 出典: 北海道Likers

北海道Likersライター早羽太:西弘美厩舎に所属したきっかけを教えてください。

福澤さん:専門学校を辞めてアルバイトをしながら、住み込みで働ける仕事を探していたところ、知人に帯広競馬場を紹介してもらいました。もともと馬を触ったことはなかったのですが「とりあえず行ってみよう」と思い、この世界に飛び込みました。初めは2020年に亡くなった西康幸調教師のもとで働いていましたが、現在は西康幸調教師の兄である西弘美調教師のもとで働いています。

北海道Likersライター早羽太:西弘美厩舎の強みや良さを感じることはありますか?

福澤さん:調教師が優しいところですかね(笑) 西弘美厩舎は厳しくも緩くもない居心地の良い厩舎です。スタッフの仲が良く、ギスギスすることはないので楽しく働いています。何も分からないまま身一つで競馬場に来た自分が今まで楽しく続けられているのは、入った厩舎や周りの方々のおかげだと強く感じます。

試行錯誤の毎日

北海道Likersライター早羽太:一日の仕事の流れを教えてください。

福澤さん:朝5時頃に外に出て、担当馬の運動に行きます。運動が終わって厩舎に戻り、掃除した馬房に馬を入れたら次の担当馬の運動に。今は4頭の馬を担当しているのですが、朝10時頃には作業が終わります。あとは15時と19時に餌やりをするだけです。最近はアルバイトの学生が馬房掃除をやってくれることがほとんどですし、自由な時間もたくさんあります。レース当日はレースの時間に合わせて馬体の手入れなどをしますが、レースに向けて朝は運動をしないことが多いので、開催日の朝はいつもよりも早く作業が終わります。

厩舎での様子

厩舎での様子 出典: ばんえい十勝

北海道Likersライター早羽太:調教で工夫していることはありますか?

福澤さん:馬が曳くソリの重さにこだわっています。例えば1着を取って次からクラスが上がるときは、相手が強くなるからといってすぐに強い負荷をかけません。改めて軽いソリから調教を始めて、馬に無理をさせないことを心がけています。調教の内容を調教師と相談することもありますが、基本的には自分で決めるため試行錯誤の毎日です。調教内容を変えた時、レースでどう動きが変わるのかを見るのが楽しみです。

北海道Likersライター早羽太:担当馬の中でファンの方々に注目してほしい馬はいますか?

福澤さん:今の担当馬は2歳馬が多く、まだ目立った成績も無いのですが、マサノスパークルという馬に注目してほしいです。

マサノスパークル

マサノスパークル 出典: ばんえい十勝

すぐに咬みついてきたり、前を通ると頭突きをしてきたり、本当にやんちゃな馬なのですがなぜか愛着が湧いてしまって……。自分でも理由は分からないけれど可愛くて仕方が無いです。癖のある馬は、逆にその癖が可愛く見えてしまって記憶に残ります。

マサノスパークルは上位5着以内に入ることが多いですし、2着になったこともあるのですが、まだ1着を取ったことはありません。これからも一緒に調教を頑張って、勝ち切ってくれることを期待しています。

第一線で活躍する馬をイチから

北海道Likersライター早羽太:帯広競馬場で叶えたい夢を教えてください。

福澤さん:2歳の頃から自分が触っていた馬が、重賞の舞台で走ることです。2歳馬の中には真っ直ぐ歩くことができない馬もいます。そんな馬たちとコツコツと調教を積み重ねる中で成長を間近で見られるところに厩務員という仕事の魅力を強く感じるので、長く同じ時間を過ごした馬がトップレベルのオープン馬として重賞レースで走る姿を見てみたいです。

北海道Likersライター早羽太:競馬場の若い方の中には騎手を目指している方が多い印象ですが、騎手について考えたことはありますか?

福澤さん:競馬場に来た頃は周りの方々にも騎手を勧められました。ただ、厩務員として働いていると「厩務員って良い仕事だな」と思うことが多く、現時点では騎手になる道は考えていないです。馬の世話は凄く手間がかかるのでペットを飼うよりも大変ですが、だからこそ愛情が湧くと思います。馬が好きでここに来たわけでは無かったのですが、気が付けば馬が大好きになっていました。今は厩務員として、可愛い馬たちをサポートしていきたいと思っています。

ーーーインタビュー中の福澤さんからは、数年前まで馬を扱ったことが無かったとは思えないほど馬への愛を感じました。重賞の口取り式で担当馬と並ぶ姿を、ファンの一人として楽しみにしています。

連載「ばんえい競馬の未来をつくる人」では、ばんえい競馬で活躍する若者たちに迫ります。伝統文化を次の世代へつなげる彼・彼女たちの想いとは。連載記事一覧はこちらから。

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