坂井さん

人手不足を宇宙で解決!? 札幌市が取り組む宇宙産業支援とは【札幌市経済観光局・坂井智則部長インタビュー】

北海道の未来を伝える連載「HOKKAIDO2040」。2040年には100兆円の市場規模になるといわれている宇宙産業。これまで『北海道Likers』でも取り上げてきたように、北海道では大樹町を中心に宇宙産業が盛り上がりをみせています。本連載では、北海道の宇宙産業の発展をリードする方々にインタビューを行い、宇宙産業を通して変化する未来、2040年の北海道の姿をお届けします。

今回は、札幌市経済観光局の坂井部長にお話を伺いました。

坂井智則(さかい・とものり)。1965年(昭和40年)生まれ。1988(昭和63)年に札幌市役所に入職。東京事務所のシティセールス担当課長、産業振興部経済企画課長などを経て2021(令和3)年4月より経済観光局産業振興部長に就任。

※取材はマスク着用のうえ十分な距離を確保したうえで実施しております。
※記事中の役職名は取材当時のもの

「宇宙版シリコンバレー」の実現のために必要なものとは

北海道Likersライター遠藤 嵩大@ISC(以下、遠藤):「北海道スペースポート(以下、HOSPO)」が北海道に与える影響は、どのようなものが想定されますか?

坂井部長:「HOSPO」はロケットの射場としての機能もありますが、「HOSPO」という場ができることによって産業の集積が起こることが一番大きな影響ではないでしょうか。宇宙関連の企業が集まりますし、打ち上げの際には道内外から見学の方がたくさん来ていたので、食や観光への波及効果もあると考えています。

北海道Likersライター遠藤:産業の集積と波及効果ですね。「HOSPO」や大樹町が『宇宙版シリコンバレー』を掲げていますが、その実現のために必要なことは何でしょうか?

坂井部長:まずは、人です。札幌はとくに理系人材の道外流出が多いですが、企業があれば残ってもらうことができます。当然、札幌だけでなく北海道に残りたいと思ってもらえる企業をつくれるかが重要だと考えています。

射場を拡大するのにもお金がかかりますし、資金面の問題もあります。「HOSPO」ではふるさと納税の活用などをしていますが、北海道全体で道外や海外からお金を集めてくるようにしていかなければなりません。

宇宙産業の発展による夢はありますが、人とお金がないと実現はできません。経済界の協力を仰ぎながら、実現のために動いていく必要があると思います。

北海道の宇宙産業発展のために!札幌市だから取り組むべきこと

北海道Likersライター遠藤:『宇宙版シリコンバレー』の実現のために、人とお金が必要というお話がありました。札幌市として取り組んでいくことを教えていただけますでしょうか?

坂井部長:まずは企業の誘致です。札幌は土地に限りがあるので、千歳市なども含めた“札幌広域圏”として補助金制度による誘致をしています。札幌広域圏に企業があれば、社員が札幌に住むようになるなど、商圏として札幌が成長します。

企業があれば人材がやってきます。特に理系人材がとどまりたい・戻ってきたいと思えるような企業の誘致や、スタートアップ企業の立ち上げ支援ができれば、まわりまわって北海道の宇宙産業の発展につながるのではないでしょうか。

また、大樹町長から「札幌市として、大樹町での『HOSPO』を中心とした取り組みを発信してほしい」と言われました。札幌市には北海道人口の約3分の1が住んでいます。「札幌市も一緒に取り組んでいく」と発信することが、広く道民に理解してもらうことにつながるので、情報発信にも力を入れます。

宇宙ビジネスを活用してよりよい未来へ

北海道Likersライター遠藤:今後の取り組みについてよくわかりました。今回の取材テーマは“2040年の北海道”です。2040年には北海道がどのような地域になっていてほしいとお考えですか。

坂井部長:札幌市は、2030年まで再開発に取り組んでいきます。北海道新幹線も札幌まで延伸しますし、オリンピック・パラリンピックの誘致も進めています。まずは2030年をひとつのマイルストーンにしているということです。

一方で、再開発によって札幌だけが盛り上がって北海道全体が衰退しては意味がありません。北海道は人口減少が進んでいますし、過疎化が進めば、教育・医療・仕事などさまざまな分野で問題が出てくることが考えられます。北海道は第一次産業が基幹産業ですが、現状を人手で支え続けるのは限界があります。その突破口になりうるのが宇宙産業だと思いますし、2040年以降について考えるときに宇宙ビジネスは避けては通れません。

北海道経済連合会の2050北海道ビジョン

北海道経済連合会の2050北海道ビジョン 出典: 出典:北海道経済連合会

北海道経済連合会さんが描いている2050年のビジョン*がありますが、そういったビジョン実現のために札幌市として企業の誘致、スタートアップ支援、そして情報発信を行っていきます。突然2050年はやってきませんので、まずは2030年に向けて、そして2040年、その先へと繋げていきたいと考えています。

北海道Likersライター遠藤:北海道の未来のために、札幌市としてできる支援を実施していくのですね。ありがとうございました!

*2050北海道ビジョン~『課題解決先進地域』のフロントランナーを目指して~(北海道経済連合会)

連載「HOKKAIDO 2040」では、“2040年の世界に開かれた北海道(HOKKAIDO)”をテーマとして、大樹町を中心に盛り上がりを見せている宇宙産業関係者へインタビュー。宇宙利用によって変わる北海道の未来を広く発信します。連載記事一覧はこちらから。

【参考】2050北海道ビジョン~『課題解決先進地域』のフロントランナーを目指して~/北海道経済連合会

【画像】T2 / PIXTA(ピクスタ)、北海道経済連合会