transit 林さま

「地域や人とつながれた」東京から東川町へ。ベテランライターが開いたアウトドアショップ

2022.01.21

国立公園でもある大雪山系「旭岳」。標高2,291mのふもとに広がるまち・東川町は、北海道のほぼ中央に位置する旭川市の隣町です。大雪山の湧水の恵みを受け、広大な大地と豊かな自然が広がります。自然を活かしたアウトドア観光、写真、農業のまちでもあり、共存するようにおしゃれなカフェや雑貨店も軒を連ねます。

落ち着いていてのんびりとした“チルアウト”・“ヒュッゲ”な雰囲気がただよう東川町は、移住希望者も多く、近隣のまちはもちろん北海道外から移住してくる人も少なくありません。

そんな東川町には、旭岳への登山者の滞在や通過が多いため、有名なアウトドアブランドからニッチなお店までさまざまなアウトドアショップが点在しています。

今回は、東京から移住しアウトドアライターをしながらアウトドアショップを営むオーナーさんに、移住やオープンの経緯、お店の楽しさを聞いてみました。

ライター歴は30年以上、アウトドアラーのオーナー・林拓郎さん

東川町の旅とアウトドアのショップ「Transit(トランジット) 東川」。オーナーは林拓郎さんです。

林さんはバイクやスノーボードなどのアウトドアメディアで30年以上記事を執筆しているベテランライター。もちろん趣味もアウトドアです。よい雪質を求め来道し、ニセコや旭岳でスノーボードを楽しんできました。

さまざまなアウトドアギアを自分で使用しながら記事を作成するうち、「記事を執筆しているだけでは、一人ひとりが本当に求めている情報に応えることは難しい」と感じたといいます。「メールやSNSでのやり取りだけでは応えきれない、さまざまなユーザーの疑問にマッチした情報を伝えたい。そのための拠点が必要」という想いが強くなり、ショップを持つことに決めました。

「モンベル」があれば大丈夫。東川町を選んだ理由

東京から東川町へ移住しショップを開くことにした林さんは、東川町を選んだ理由についてこう語ります。「東川町には有名アウトドアショップの“mont-bell(モンベル) 大雪ひがしかわ店”がある。そういった大きなお店の近くには、必ず小さなアウトドアショップの存在があるまちが多いんです。大きなお店をアウトドアの入り口とし、そこから小さなお店で自分の目的のものを見つけていく……。そんなまちをいくつか見てきました。東川町では、モンベルの近くに開けばきっと大丈夫だと思いました」。

たしかに筆者も「モンベル 大雪ひがしかわ店」へよく買い物へ出かけますが、モンベルのスタッフから「Transit 東川」なら求めているものがあるかもしれない、と教えてもらったことが幾度もありました。

「東川町には、モンベルのほかにも小さなアウトドアショップがいくつかあります。また、隣町・旭川、道内にもたくさんあります。そのスタッフ同士がとても仲がいいんですね。自分のところへ来たお客さんに、他店を紹介することもあります。わたし自身も、“お求めのものならあのお店にありますよ!”とご紹介することも。同業者同士で暗黙の連携ができているまちってなかなかないことではないでしょうか」。

これは、ユーザー側にとっても大変喜ばしいこと。専門家からコアな情報を聞けるのは、東川町や旭川市のアウトドアショップのスタッフの気さくなお人柄と、本当にアウトドアが好きだという気持ちからなのかもしれません。

「Transit 東川」という場所があるから広がった。かけがえない「人とのつながり」

ライターでもある林さんは、お店のカウンターにノートパソコンを置き、営業しながら執筆活動をしています。

「自宅で執筆していても、人とのつながりはなかなか広がりません。お店で執筆していると、お客さんがやってきてさまざまな話ができるんです。お客さんが抱いていた疑問点やさまざまな話題を聞くことができて、思わぬ知見が広がります」と、林さん。「お店という場所があるから、地域間のつながりや人とのつながりが広がりました。お店を開いてよかったと思っています」。

商品の販売だけではなく、「“Transit”に行けば林さんがいる。ちょっと顔を見に行こうかな。相談してみよう」そんな人と人とをつなぐ大切な場所にもなっているんですね。「Transit 東川」は東川町にとっても、北海道のアウトドアショップにとってもなくてはならない存在だと感じました。

絶対に「読まさる」「触らさる」POPに注目

そして「Transit 東川」の魅力のひとつは、ライターである林さんならではの“オリジナルPOP”。

アウトドアショップには、見てすぐに用途がわかる商品もあれば、何に使うのかわからない商品もありますよね。このような専門店は、初心者はもちろんのこと経験者であっても恥ずかしくて商品についての質問をしにくいもの……。けれど「Transit 東川」では、すべての商品に楽しくわかりやすく、そして惹かれるPOPがついています。

「見た目は普通 持ってみて驚き」こんな見出しのついたPOPがあったら、持ってみたくなりますよね? 筆者ももちろん手に取ってみました。見た目はステンレス製をイメージさせますが、持ってみるとプラスチックの軽さ。そのギャップに思わず「えーっ!」と声が出ます。「あなたと同じ驚きを、その場のみんなに分けてあげてください」と、説明書きが続いていました。

このように、商品の説明を林さんに聞かなくても、その商品の詳細はもちろん、使うシーンのイメージが湧いたり、コンセプトがわかるPOPがほぼ全商品につけられているんです。POPを読むだけで楽しくワクワクした気持ちになりました。また、POPを見て触って、さらにその商品について詳しく林さんに聞きたくもなるのです。

まさに人とのコミュニケーションを気軽に楽しむアイテムのひとつ、“POP”について林さんのお話は続きます。「よいと思う商品しかお店に置きません。ストーリーのある商品やコンセプトがはっきりした商品、だからPOPが書けるんですけれどね」。

 

ライターである林さんの、アウトドアギアへの思いの深さ、お客さんへの気配り、アウトドアの楽しさなどさまざまなことを感じる「Transit 東川」。東川町へお越しの際は、アウトドアラーはもちろん、これからはじめたいと思っている人にも、必ず立ち寄ってほしいショップです。

アウトドアのことならぜひ林さんに相談してみてください。楽しく使えるオシャレなギアを紹介してくださいますよ。

<店舗情報>
■店舗名:Transit 東川
■住所:北海道上川郡東川町南町2丁目2-1
⇒営業時間など詳細はこちら

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