お正月のビッグレース、帯広記念＆天馬賞を振り返って【井上オークスのばんえいレース回顧】

2022.01.13

井上オークス

こんにちは。競馬ライターの井上オークスです。お正月の帯広競馬場は、2日連続のビッグレースで盛り上がりました。パワーを競う高重量戦「帯広記念」と、明け5歳の王者決定戦「天馬賞」を振り返ります。

キタノユウジロウ、帯広記念で鮮やかに復活！

優勝馬　キタノユウジロウ　出典: ばんえい十勝

2022年1月2日（日）に行われた第44回「帯広記念」は、鍛え上げられた4歳以上のオープン馬がパワーを競う“高重量戦”。「ばんえい記念」に次いで重い900kg前後（今年は890～930kg）のソリを運ぶ10頭は、第1障害を下りてからストップ・アンド・ゴーを繰り返し、パワーを温存しながらじっくりと歩を進めます。

どの馬も満を持して第2障害を登り始めましたが、重いソリと、この年末年始ではもっとも重い馬場状態（馬場水分2.3％）が相まって、坂の上で立ち止まりつつ息を整えます。騎手の激励に応えて一歩、また一歩と前進し、キタノユウジロウ、メジロゴーリキ、アオノブラックがほぼ横並びで障害をクリア。先に抜け出したキタノユウジロウが、メジロゴーリキの猛追を振り切って1着に。2着がメジロゴーリキで、3着にアアモンドグンシンが入りました。

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優勝馬　キタノユウジロウ　出典: ばんえい十勝

キタノユウジロウを管理する村上慎一調教師、タッグを組んだ菊池一樹騎手は、共に「帯広記念」初制覇です。

村上慎一調教師によると、キタノユウジロウは秋に体調を崩していたそうです。

「まずは回復させて、あとは地道に長く調整をしてきました。これからもばんえい記念に向けて、地道に努力して頑張りたいと思います」（村上調教師）

菊池一樹騎手は、第2障害を下りたときに「勝てるかな」と感じたそう。

「メジロゴーリキが食い下がっていましたが、負けたくなかったです。最後はいっぱいになりましたが、一生懸命頑張ってくれました」（菊池騎手）

筆者は“高重量戦に強いメジロゴーリキ”で頭がいっぱいでした。メジロゴーリキは2着に来たのですが、キタノユウジロウをすっかり軽視してしまって撃沈。キタノユウジロウは昨年の「ばんえい記念」2着馬ですから、彼も高重量戦に強いのですね。病を克服しての復活劇、素晴らしかった。2022年3月20日（日）の「ばんえい記念」が楽しみです。

キョウエイリュウ、驚異の追い上げで天馬賞制覇！

優勝馬　キョウエイリュウ　出典: ばんえい十勝

2022年1月3日（月）に行われた第15回「天馬賞」は、「柏林賞」「銀河賞」に続く“4歳三冠の最終戦”です（馬齢は明け5歳）。出走した10頭は、牡馬が760kg、牝馬が740㎏のソリを運んで、世代の頂点を目指しました。

馬場水分3.4％と、かなり軽い馬場状態。各馬スタートからおよそ37秒で、第2障害前に到達します。真っ先に障害をクリアしたのは、ゴールドハンター。猛然とゴールへ突き進み、後続を突き放します。そのまま押し切るかと思われたのですが……残り20mを切ってゴールドハンターの脚色が鈍ったところを、キョウエイリュウが強襲。数十センチの差で、キョウエイリュウが1着。2着がゴールドハンターで、3着にカイセドクターが入りました。

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優勝馬　キョウエイリュウ　出典: ばんえい十勝

キョウエイリュウを管理する村上慎一調教師にとって、「天馬賞」は初制覇。前日の「帯広記念」に続いて、大一番を連勝しました。キョウエイリュウに騎乗した松田道明騎手にとっては、三度目の「天馬賞」制覇となりました。

松田道明騎手は、「良い馬に乗せていただきました」とニッコリ。村上調教師は、「最後の一冠だけは獲りたい」と思っていたそうです。

「道中は先行で行ければいいなと思っていましたが上手くいってなかったので、ゴールするまでは結果がわかりませんでした。定量戦で負けられない一戦でしたが、最後に実力を出してくれたと思います。まじめな馬なので、これからに期待しています」（村上調教師）

3歳時に「ばんえいダービー」を制したキョウエイリュウ。この世代の王者は、やはりキョウエイリュウなのですね。ちなみに筆者は推し馬・ゴールドハンターの勝利を確信し、払戻金まで皮算用しておりました。馬体はゴールドハンターのほうが、先にゴールラインに到達したんです。ところがばんえい競馬におけるゴールは、「ソリの後端がゴールラインを通過した瞬間」。ソリはキョウエイリュウのほうが、先にゴールを通過したというわけです。嗚呼、これもばんえい競馬の醍醐味。手に汗握る好レースでした。