旭川 にちりん

「絶対に閉店してはならない」あたたかな想いがつなぐ創業60年以上の老舗和菓子店(旭川市)

2021.12.18

JR旭川駅前から8条通までの1キロメートルをまっすぐに続く常設の歩行者天国をご存知でしょうか。1972年6月に日本初の歩行者天国として平和通買物公園が開設されました。

現在はデパート、商店、カフェなどが連なり、夏まつりのパレードや冬まつりの氷彫刻世界大会の会場になるなど、華やかな旭川の中心部です。

その平和通買物公園の8条通に、60年以上の歴史ある和菓子店「お菓子 にちりん」があります。店主の意志で一度閉店が決まったお店は、今再開し営業を続けています。そんなお店の歴史と、新しいオーナーさんにお話を伺いました。

昭和34年から続く「お菓子 にちりん」

1959年創業の「お菓子 にちりん(以下、にちりん)」は、初代オーナー山本寅二さんがオープンさせた和菓子店です。創業当初からこの場所で手作りの和菓子を販売してきました。餅菓子を中心にケーキなどの洋生菓子を作り、他店に卸していたこともあります。

平和通買物公園はJR旭川駅前、1条通から8条通まで続く日本初の歩行者天国。時間に関係なく恒久的に車は通りません。その8条通の最後にあるお店が「にちりん」でした。

大福やどらやきなど、日常的に市民がいただくおやつを丹精込めて作ってきた「にちりん」には、根強いファンが多いんです。

平和通買物公園の最後にある「にちりん」の灯を消してはならない

ところが2016年、2代目オーナーさんが80代という高齢を理由にお店を閉店することに。お店のドアに張り紙でお知らせされました。

その張り紙を見て胸を痛めたのは、同じく8条通で「NPO法人ピーシーズ」を運営する理事長の井上俊一さん。「買物公園の最後にあるこのお店は、絶対に閉店してはならない。歴史あるにちりんのお店と買物公園を守りたい一心で、オーナーさんに経営を譲ってほしいとお願いしました」と語ります。

「NPO法人ピーシーズ」とは、障害のある人が社会で働くための訓練をしたり、働く場所を探したりする就労支援事業所で、これまで職員や利用者のおやつを買うため「お菓子 にちりん」へよく来ていたのだとか。

そんな井上さんの説得に、2代目オーナーさんも納得! 「にちりん」の職人さんや看板娘さんも当時のままにお店へ戻り、翌年に営業再開。今は井上さん夫妻と共に、職人さんたちが「にちりん」を支えています。

また、「NPO法人ピーシーズ」の利用者さんも「にちりん」のお店に立って働いたり、手作りの作品を店内で展示販売したりしています。

スタッフみんなで春に摘む。「よもぎ大福」は1年中春の香り

「にちりん」の一番のおすすめは、『よもぎ大福』。

よもぎは旭川市内で自生しているものを探し、春になるとスタッフみんなで1年分を一斉に摘んでいるのだとか。やわらかな新芽だけを摘み取り、茹でてしっかりと冷凍保存。少しずつお餅に混ぜ込んで『よもぎ大福』を作っています。「よもぎ大福のお餅をつくときは、お店のなかが春の香りでいっぱいになりますよ!」

『よもぎ大福』の袋を開けると、途端によもぎのいい香りが強く伝わってきました。いただくと口のなかが春の香りでいっぱいに。

みんなでよもぎを摘むところから丹精込めて作られた『よもぎ大福』は、昔から旭川市民の変わらぬふるさとの味なのです。

期間限定の「いちご大福」、餡に合ういちごを厳選

「にちりん」のもうひとつのおすすめは、『いちご大福』。いちごのおいしい季節だけしか販売しない、限定商品です。

この日はオープン直後に取材に伺ったのでたくさん並んでいましたが、売り切れてしまうことも多い人気の商品です。

『いちご大福』に使ういちごは、「にちりん」で作られる餡に合うものを厳選。いちごの品種は『博多あまおう』です。餡の甘さに負けない、いちご独自の強い甘さは、「にちりん」の餡とのバランスがよくぴったりの相性なのだとか。

筆者も早速いただきました。大ぶりないちごが丸ごとひとつ入った『いちご大福』は、優しい甘さのこし餡と、濃厚ないちごとのコントラストがおいしい! とっても大ぶりな大福ですが、あっという間に食べ終えてしまいました。さっぱりとした和の甘さと、果物のみずみずしさは絶品です。

保存料を一切入れない「昔ながらの本物のお餅」

「にちりん」のお餅やお菓子は、お店でしか購入できません。保存料は一切使っていない“本物のお餅”だからです。「純粋なお餅は、胃もたれしないんです」と井上さん。妊婦さん、体調を崩している方、体の弱っているシニア世代にも、安心して食べていただくことができるのだとか。

「にちりん」のお菓子を楽しみにしていても買い物へ出かけるのが大変なシニア世代や交通弱者の方へ、配達もしています。お菓子を励みに、また、「にちりん」の井上さんが自宅へ来てくれることを楽しみにしている方も多いことでしょう。

 

「にちりん」は、現オーナーの井上さんをはじめスタッフのみなさんが、平和通買物公園の灯を守り、旭川の歴史をつないでいる温かなお店です。そんな温かな思いがいっぱいのお餅を、ぜひお店に行って食べてみませんか。

<店舗情報>
■店舗名:お菓子 にちりん
■住所:北海道旭川市8条通7丁目
■電話番号:0166-22-2094
■営業時間:9~16時
■定休日:土曜、日曜
■駐車場:なし

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