セッション3

CAMPFIRE家入氏らが熱弁!宇宙産業の投資ポテンシャルとは【北海道宇宙サミット2021・カンファレンスSession3・全文掲載】

2021年11月4~5日で行われた、北海道発の宇宙ビジネスカンファレンス「北海道宇宙サミット2021」。2日目に行われたカンファレンスでは、日本で宇宙に携わるキーパーソンが一堂に会し、さまざまな熱い議論が交わされました。

今回は、Session3「宇宙産業の投資ポテンシャル」の内容をお届けします。

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登壇者:

株式会社CAMPFIRE代表取締役社長 家入一真

スパークス・イノベーション・フォー・フューチャー株式会社(SIF)代表取締役 見學信一郎

株式会社日本創生投資代表取締役社長 三戸政和

日揮株式会社 未来戦略室アシスタントマネージャーCVCフロントチームリーダー 坂本惇

宇宙エバンジェリスト/一般社団法人Space Port Japan共同創業者&理事 青木英剛(モデレーター)

登壇者紹介

司会:それではお時間となりました。次のセッションを始めます。このセッションは「地域のみなさまに寄り添う会社」宮坂建設工業株式会社の提供でお送りします。セッション3、Sponsored by 宮坂建設工業「宇宙産業の投資ポテンシャル」それではご登壇者のみな様、ステージへお進みください。どうぞよろしくお願いいたします。

青木氏

©北海道宇宙サミット2021

青木氏:セッション3、テーマが「宇宙産業の投資ポテンシャル」では、私含めて5人の投資家に集まっていただいておりますので、宇宙産業を投資家としてどう見ているのか、話していきます。

最初に、それぞれクイックに自己紹介して、セッションに入ります。私は、宇宙エバンジェリストとして宇宙ビジネスの啓蒙活動をやりながら、Space Port Japan(スペースポートジャパン)の創業者として日本にスペースポートを複数作る取り組みをやりながら、ベンチャーキャピタリストとして世界中の宇宙ベンチャーに投資をするという活動やっております。よろしくお願いします。

では順番に、登壇者の方々の自己紹介お願いしたいと思います。まずは家入さんからお願いします。

家入氏: CAMPFIREの家入と申します。よろしくお願いします。クラウドファンディングサービスを運営していまして、今現時点でも北海道スペースポートさんのクラウドファンディングをやったり、資金調達、コミュニティーづくり、といった側面から関わらせていただけたらと考えています。よろしくお願いします。

青木氏:ありがとうございます。では続きまして見學さんお願いします。

見學氏:見學と申します。スパークス・イノベーション・フォー・フューチャーという、投資運用会社であるスパークスグループの中で、昨年に宇宙フロンティアファンドというファンドを立ち上げ、その運営責任者をやっています。トヨタ自動車さんやメガ三行さん、他7社のご参画を得て、92億円で運用しています。ひたすら宇宙に投資するファンドを運営しています。どうぞよろしくお願いします。

青木氏:宇宙に投資する専門のファンドが出てきたところも、やっぱり投資の魅力が高まってきているところなのかなと思います。続きまして三戸さん、よろしくお願いします

三戸氏:三戸です。日本創生投資というファンドをやっています。それ自体は中小企業のバイアウトファンドで、宇宙とあまり関係ないんですが、一方でインターステラテクノロジズ株式会社(以下、IST)の社外取締役をしております。ファイナンスのお手伝いなんかをさせていただきながら、いろんなVCさんを回っています。前職はSBIでベンチャー投資をしていましたので、その辺の観点でお話できればと思います。よろしくお願いします。

青木氏:では最後、坂本さんお願いします。

坂本氏:日揮株式会社の坂本です。簡単に弊社のご紹介もしておくと、我々エネルギー、ケミカル、ライフサイエンス、そういった産業用のプラントを主に作っている総合エンジニア会社です。今年の4月に『日揮みらいファンド』を、ちょうどいま青木さんがいらっしゃいますが、グローバルブレイン様と日揮ホールディングス、日揮の3社でファンドを立ち上げました。

ターゲットとしては宇宙というか、持続可能で安心安全なまちづくり、社会システムの構築をするというのが我々のファンドの主旨でございます。そういったところでスタートアップさんの投資を今後増やしていきたいと思っております。私自身も元々エンジニアですが、いろいろ経営計画とかやっておりまして、今はこの『日揮みらいファンド』のCVCのフロントチームリーダーとして、実務的なところをリードしております。今日はそういった立場でお話できればと思っております。よろしく願いいたします。

青木氏:坂本さんありがとうございます。日揮さんってもう宇宙とまったく関係のない会社さんが宇宙に興味を持ってここに来ているということ自体が、画期的なことなのかなと思っています。

世界と日本の宇宙産業の投資の現状

青木氏:ここからいくつか質問をみなさんに投げながら議論していきたいと思います。なかなかみなさんからすると、投資ってピンとこない方も多いのかなと思っています。国内外の投資がどうなっているのか、世界と日本の宇宙産業の投資の現状を、私のほうから共有いたします。

昨日、Zoom越しなんですけれども、オーストラリア、シンガポール、タイ、インド、世界中の宇宙起業家の方々に講演をしました。宇宙起業家としてどうあるべきか、どうやって資金調達を進めるべきかということを話したんですが、世界中で宇宙ベンチャーがどんどん盛り上がっていて、世界中で宇宙に投資をする方が増えてきているというのを本当に実感しました。本当に他人ごとではないと。ファンドを運営している投資家のみならず、事業会社さんにとっても投資の対象になり得るので、今日は情報を集めていただければと思っています。

最初に、宇宙ベンチャーってどれくらい世界にいるのか。世界には2,000社を超える宇宙ベンチャーがあるんです。ISTもその1社なんですけど、2,000を超えているんです。アメリカはそのうち半分くらい占めているんじゃないかと言われていますし、日本は50から100くらい、続々と今年も宇宙ベンチャーが生まれていますので、もう50社は越えてきているような状況です。あとはヨーロッパや中国が、数百宇宙ベンチャーを抱えている状況です。

これらの宇宙ベンチャー2,000社が世界で資金調達をしながら、投資家が投資をしているという現状があります。実は2020年にコロナ禍にもかかわらず、歴史上過去最高のお金が宇宙ベンチャーに投資されました。その金額は6,000億円。年間に6,000億円もの巨額のお金が宇宙ベンチャーに投資されています。6,000億円というと、JAXAの年間予算の3倍。めちゃくちゃ多い金額が宇宙ベンチャーに入っていることを考えると、日本だけの予算ですけれども国家予算を上回る金額、欧州宇宙機関の予算ぐらいの金額が、ベンチャーだけに注ぎ込まれているっていう実情があります。

ちゃんと直視しないといけないような状況になってきています。日本は、このあと少し見學さんからも共有していただきますが、だいたい年間100億円いく時もあれば、いかない時もある状況で、特定の企業さんが数十億円、数億円調達するっていうのが年間数件発生しているような状況です。これからもどんどん見學さんのようなファンドができているので、増えていくのかなと思っております。見學さんからも少しだけ国内外の宇宙産業の投資の状況、ご共有いただければと思います。

見學氏

©北海道宇宙サミット2021

見學氏:若干補足させていただきますと、先ほど青木さんから日本の宇宙系ベンチャー50社から100社という話がありました。大きく分けると、「宇宙to宇宙(=宇宙の中でビジネスをするベンチャー、あるいは企業)、それから「宇宙to地球(=典型的な衛星。宇宙から地球を眺めて地球の困りごと・課題を解決していく)」の2つに分かれると思っています。私の定義でいくと100社を超えてきたかなと思っています。特にそのリモートセンシング(地球を眺めながらいろんな課題を解決していく。宇宙to地球)が既存の企業さんとのコラボレーションなんかがでてきているかなと思っています。

ベンチャーが伸びてきた大きな時代背景としては、アメリカのNASAが2000年代までひたすら自前、スペースシャトルがその典型だったんですけれども、お金がかかりすぎた大反省から、サービス調達(自分たちはプログラムを走らせるけれども、サービスなり技術そのものは民間から買ってくる)という転換をしてきたのがひとつ大きな節目になったかなと思います。日本も、JAXAがそれに続く形をとってきたのがひとつと、日本のベンチャーのなかでもうひとつの特徴は、大学発のベンチャーが多いです。宇宙工学の専攻の学生さんって地頭がすごくいいんですよね。その人たちがファーストキャリアとして、自分が好きな衛星であるとか、宇宙周りのことを自分たちの手で自ら起業する。こんな動きが出てきたのが、今日本の宇宙系ベンチャーで見える風景かなと思っています。

青木氏:もう一点だけ補足すると、投資して回収できるのかみたいなところで言うと、アメリカではもう今年すでに10社以上の宇宙ベンチャーがナスダックに上場済み、もしくは上場を予定しているということで、この流れは今後も増えていくかなと思っております。

ナスダックを見れば、みなさん一般の個人投資家の方々ももう株が買えるような状況になってきます。来年から日本の宇宙ベンチャーの上場っていうのもパラパラと出てきますので、そうすると東京証券取引所に上場している宇宙産業の企業が現れる、みたいなのも来年実際に起こるだろうと思っています。

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宇宙産業とどのように関わっているのか?

青木氏:次は、それぞれみなさん宇宙とどう関わっているのかをそれぞれ今のお立場でお話しいただきます。まず坂本さんからお聞かせください。

坂本氏

©北海道宇宙サミット2021

坂本氏:先ほど青木さんおっしゃった通り、日揮が宇宙やっているイメージはあまりないかと思うんですが、現時点で申し上げると、確かに今はあまり大きく事業をやっているわけではございません。ですが、1980年代から2000年代初頭にかけては大きな事業も終わり、主に微小重力の実験の支援など宇宙環境利用というところで、JAXA様と連携させていただきながら事業を進めていた時期がございます。

直近で申し上げますと、弊社の兄弟会社であります日揮グローバル株式会社が、JAXA様と連携協定を結ばせていただいて、月面の産業プラントを作っていくビジョンの策定において連携協定を結ばせていただいているという状況です。

今はどちらかというと「宇宙to宇宙」、宇宙での事業の話をさせていただきましたが、地上を見てもリモートセンシングや昨今の技術進歩がありますので、我々としても、リモート災害監視ですとか、いろんな事業に使えないか、水面下で議論しているといった状況でございます。

青木氏:地上でプラントを作っていれば、我々が宇宙に生活圏を広げれば自ずと月・火星にもプラントが必要ですよね。という流れの中で言うと必然的な流れかなと思って、腹落ちした感じです。

三戸氏:それちょっと私質問したいんですが、いきなり最初から月に工場ができちゃうんですかね? 人が住むんじゃなくて工場が先にできるイメージなんですかね?

坂本氏:もちろん人が先だと思うんですが、どうしてもこれから火星に行くマイルストーンがある中で、月を拠点にしてそこからエネルギーを充填していくという考え方もあります。そこでのプラント、月を利用して新しく次のところに行くというのは世界的にも大きなポイントになるんじゃないかなとは思っています。

青木氏:水資源があるのが月でわかっていますので、そこから水素を取れればロケット燃料が作れるということで、地球の重力脱出するよりも、月の重力脱出して飛んで行った方がいいということで言うとプラントがいずれ必須になるんですね。

三戸氏:さっき控え室で伺っていたら、あと10年後とかっておっしゃっていたから、すごい近い未来だなと思って、すごいなと。

青木氏:あっという間に来ると思いますね。

三戸氏:なぜ私が質問しているかというと、私自身は役員として、ISTの資金調達をずっとしています。今みたいな話がまだ投資家のみなさんもイメージが湧いてないというか。10年後に月に人がいるとか、工場があるんだとかっていうのがリアルに想像できてないので、やっぱりロケットに投資しようっていう感じにはなかなかならないのが現状なんですよね。

先ほどお話ありましたけれども、「宇宙to宇宙」みたいな感じというのはまさにそういう状態で、「宇宙to地球」とおっしゃっておられましたけど、衛星系はどっちかというと投資家のみなさんも宇宙に衛星を打ち上げれば、こういうセンシングでこういうサービスができるというのはイメージがすごくつきやすいので、投資のお金がずっと集まっていくんですよね。

グローバルブレインさんとかも、投資している先は衛星系のベンチャーが時価総額、何百億とか数千億ぐらいいっているようなベンチャーがある。だけど我々みたいなロケット、ISTで言うと、まだちょっとその辺りがイメージついておられない方がたくさんいると思います。

いかに衛星を打ち上げるインフラとしてのロケットが重要性に、ぜひみなさんが気づいていただきたいですね。やっぱりインフラとかを持つほうがプラットフォームを取れるので、ネットサービスで言うとGAFAみたいな感じだと思うんですけども、やっぱり衛星を打ち上げるためにはどうしてもロケットが必要。そこの土台とか土俵を抑えているところが強いというふうに、最終的に宇宙にビジネスが盛り上がっていくと確信しています。ロケットにいかにその投資家のみなさんが関心を持っていただくか、日本発のプラットフォーマーとしてのロケット事業に、どのくらい関心を抱いていただけるかっていうところがすごくポイントかなと思っています。

青木氏:ありがとうございます。では流れで見學さんお願いします。

見學氏:私どもと宇宙産業の関わり、宇宙専業のファンドですので、ひたすら宇宙ではありますけども、3つあるかなと思っています。

これまで、これから公表するものも含めて10社のベンチャーに投資をいたしました。まずその10社のベンチャー投資するところからスタートと思っていまして、そこの横の連携。ベンチャーの中での横の連携を強めていくことで、エコシステムを作っていきたいと思っているのがひとつです。

でもうひとつは、今までの既存の宇宙産業の方々、よくJAXAの間中から仕事をされてた方達のことを総称して「オールドスペース」という言い方があって、それに対してベンチャーは「ニュースペース」と。ただオールドスペースの方たちは「いやいやオールドじゃないんだ、エスタブリッシュメントスペースなんだ」と。そういう既存の宇宙産業の方々と、それから我々投資先をどうやって結びつけてくか。ちょうどそれが今過度期にあるのかなというところが2つ目です。

で3つ目は、これは日本の経済のひとつの特徴だと思いますが、日本のベンチャー投資、実は半分は事業会社さんが出されているんですね。直接投資もあればCVCもあるし、私どものようなファンドに投資をしていただいている間接投資もあります。日本では事業会社のベンチャー投資に関する、役割が非常に大きくて。我々としては、投資という活動だけではなくて、その事業会社と投資先を結んで新しいプロジェクトを作っていく、みなさんやはり宇宙への関心を高めておられますので、ご自身たちの本業にどう落とし込んでいくか知見をご提供しながら、新しい何かを生み出す。それが3つ目の関わりでしょうか。そんなところをやっています。

青木氏:ちなみに見學さんのその10社の宇宙ベンチャーの投資先で、イチオシはありますか 。

見學氏:ちょっとディプロマティックに言うと、大事だと思っているのは、これから日本の宇宙系ベンチャーは資本市場、いわゆるIPO、を目指しています。米国ではもちろん資本市場にデビューしたところがたくさんあるわけです。

一方で、アメリカの場合にはもうイーロン・マスクとかジェフ・ベゾスのような、ビリオネア・トリオネアがどんどんやっている、プライベートエクイティの市場がものすごく熱いんですね。

日本の宇宙系ベンチャーが、これからきちっとした長いゲーム勝負してくためには、やはりIPO等でしっかりとしたお金を手に入れて、そのゲームに戦いに挑んでいく必要があります。今私どもの10社のうち、すでに2社ほどが上場を目指して、まさに今東証と切った張ったやっているんですね。そこが資本市場にデビューできるかどうかによって、今後の宇宙系ベンチャーの将来に影響を与えだろうという意味では、私としては今着目しているといったところでしょうか。

青木氏:最初のフロントランナーがIPOすることで、次世代の宇宙ベンチャーを育てつつ、どんどんどんどんエコシステムを作っていくみたいな流れが今後起きてくるということですね。では最後に家入さんお願いします。

家入氏:そうですね。直接的に宇宙産業と関わっているのかって言われるとそうではないのかもしれないですけども、個人的には今回ふるさと納税で納税寄付したりしていますが、僕自身はこの20年、ずっとインターネットっていう産業でいろんな会社立ち上げてきました。この10年ぐらいは、先ほどお話ししたCAMPFIREというクラウドファンディングを通じた資金調達の民主化っていうものを謳ってやってきました。またBASEっていう、ショップを誰でも簡単に立ち上げられるというサービスを立ち上げて、経済活動の民主化をやってきました。

現時点では、北海道スペースポートさんのクラウドファンディングやISTさんのクラウドファンディングが、過去にもCAMPFIREで何度もサポートいただいて、合計1億円を超える金額を6,400人を超える方々に応援してもらいました。僕は、これまである意味、既得権益というか、一般の人が参加することは難しかった産業を民主化していくことが、テクノロジーの本質だとずっと思って大事にしていて。

まさに今回北海道スペースポートさんがやられようとしていることは、開かれた宇宙港っていう、一般の方が宇宙産業、宇宙港に関わることができるようにすること。例えば資金調達だけが目的ではなくて、資金調達を通じてクルーを増やしていく、そこに関わる、興味を持つ、当事者意識を持つ方をどんどん増やしていく。この熱量を高めていくことを、私たちがやっているCAMPFIREなどを通じて伴走していけたらいいなと思っています。

セッション3

©北海道宇宙サミット2021

青木氏:ありがとうございます。私も少しだけ宇宙との関わりを説明すると、私が一番長くて、もう20年以上宇宙の関係者でして。アメリカの大学、大学院で宇宙をずっと勉強して、NASAと共同研究していた時からの宇宙との関わりなので。本当に政府だけがやっていたところから今のこの宇宙ビジネスが盛り上がってくるというのは本当にずっと肌で感じながら見てきていまして。

ちょうど8年前、最初に日本で宇宙の投資家をやろうと立ち上がって、宇宙ベンチャーへの投資を始めました。先ほど坂本さんからも少しご紹介ありましたが、グローバルブレインというファンドで、1,500億円のファンドの運用総額を持っております。そのなかで宇宙だけに投資しているわけじゃないんですが、いろんなベンチャーに投資するなかで宇宙も投資しています。宇宙ベンチャーもしくは宇宙関連ベンチャーでいうと、グローバルで半分以上は海外なんですけれども、10社以上に今投資をしているという状況です。

人工衛星を作る会社からデータ解析をするような会社、あと位置情報のベンチャー、ロボットベンチャーがあります。2つほど面白いところをご紹介すると、ひとつは今NASAと火星ミッションに向けて開発をしているベンチャー。もうこれベンチャーがやっているんですよね。スマートコンタクトレンズを作っているベンチャーなんです。シリコンバレーのトップベンチャーキャピタルのコスラっていうVCと一緒に出資しているんですが、コンタクトレンズなんですけどもそこに画像が映るんですよね。で宇宙飛行士が火星で作業する、月で作業するときに、そのコンタクトレンズをはめて作業することによってタブレットを持たなくていいんですよ。そこに作業指示書が出て、いろんな指示が地上の管制官から出てくる。それを見ながら作業できる、みたいなのを今NASAと一緒に開発している会社があります。

あとは、先週ですかね、見學さんと一緒に出資発表させていただいたんですけども、ペールブルーという日本の会社で、人工衛星のエンジンを作るっていうちょっとニッチな領域なんですけども。面白いのが、燃料が水なんですよね。水ってその辺にありとあらゆる水が思いますけども、その辺の水ですくってきて入れれば、人工衛星のエンジンとして使えるみたいな。そんな面白い会社にも出資したりしているという、そういう状況で宇宙と関わっております。

他の業界と宇宙業界の違いは?

青木氏:次の質問にいきますが、そもそもみなさん他の全然関係ない業界の出身者で、今宇宙をやられているので、宇宙業界は他の業界から見た時にどういうところが違いがあるのかお話しいただければと思います。エネルギーだったりプラントであったり、いろんな業界を投資家としてみていらっしゃったり。見學さんは元々電力業界にいらっしゃったり、家入さんもネット業界で幅広く見ていらっしゃったので、どういう違いが宇宙業界にはあるのかお聞きできればと思います。

家入氏:先ほどお話したように、インターネットというテクノロジーはいろんなものを民主化するとずっと思っているんですけど。僕なんかこの20年、ずっとインターネット、一番最初起業も含めて、いまだにインターネットが大好きで、常に社員とかの前でもインターネットが好きインターネットが好きっていう話をするんですよ。

ある時、20歳のインターンの子なのかな、が話しかけてきて、「家入さんよくインターネットが好きって言うけど、なんか意味がわかんないんです。ピンとこないんです」って言われて。どういうことかって聞いたら、「なんかそれは、例えばハサミが好きでしょうがないって言っている感じがするんです」って言われたんですね。確かに、ハサミが好きでしょうがない方もいると思うんですけど、要はインターネットが好きっていうのが、彼からすると当たり前のようにインターネットが存在していて、その空気のように浸透しているものを、何かあえて好きだ、好きだって言っている感覚っていうのが、例えば、机が好きでしょうがないとか、ハサミが好きでしょうがないとか、そう言っている感覚にしか捉えられないと言われて、なるほどなって思ったんですね。

逆に言うと、インターネットがもうここまで当たり前になったんだなって感じましたし、もちろんそれを作ってきた先駆者の方々に対するリスペクトもありつつ。でももう当たり前の世界になった時には、もう若い子はそう見るんだなと思った。ということは、インターネットはもう本当に一般化して、それこそ起業もそうですけど、個人で例えばWebサービスを作るとか、昔は考えられなかったことが今ではもう当たり前にできるようになったなあ、というのも含めて一般化したんだなあと思っていて。

そう考えると宇宙業界って、もちろんこれからっていうところでもあるんでしょうし、逆に言うと、まだまだ民主化する余地がたくさんあるんだろうなと感じています。将来的に若い人が宇宙好きだ宇宙好きだって言っているのが、ハサミが好きだっていう感覚になるぐらいのところまでいくと面白いだろうなっていうのを思いました。

青木氏:たぶん今日の十勝毎日新聞の夕刊、明日の朝刊、夕方のニュースいっぱいこのイベント出ると思うんですけれども、それすら報道されなくなるっていう状況がもう本当に民主化されたというか一般化された状況なのかなと思いました。では見學さんお願いします。

見學氏:投資の側面で、他のセグメントとの違いを3つ表現させてもらっているんですが、お金の性格として、ひとつは長いお金が必要。よくベンチャーキャピタル投資のJカーブって言って、いったん技術開発や営業で赤字を掘ってくんですけど、だんだん売り上げが立っていって、それで伸びていくと。このJカーブのJがすごく長いんですよね。長いお金が必要っていうのがひとつです。

それから2つ目は大きなお金。スマホのアプリを開発するっていうのと、ロケット・衛星開発っていうのはかかるお金が変わってくるので、大きなお金が必要ですね。でこの長くて大きいんですけど、そこにけっこう「おかわり」があるわけですね。何回も資金調達が必要だと。

3つ目が、太いお金が必要だと思っていて。それが先ほど申し上げたイーロン・マスクだとかジェフ・ベソスのように、よくラスベガスで勝つ秘訣は何ですかって聞くと、勝つまでベットするんですと。つまりそれはお金持ちであればあるほど実は有利なんです、みたいなことがあって。やはりそういうコミットした人がひたすらこの事業が成功するまで、スペースXなんかもそうだったと思いますが、そういう性格なんだろうなと思っていて。こういうお金を日本でどうやって引き出すか。我々自身の課題でもあるんですけど、そういったところには違いがあるかなと思っています。

一方私は元々スタートはエネルギー業界ですけど、ある意味そこで見える共通項は、源流技術はわりとアメリカが中心ですが、それを上手に使いながらそれを改善していったり、小さなものを丁寧に作るというのは日本が得意とする分野、ここが宇宙でもきているんじゃないかなと思っています。

青木氏:今の発想面白いなと思っていまして。宇宙はやっぱり政府との連携が切っても切れない。政府そっちのけでやってしまっても全く進まないこともけっこう多いです。

それで言うとスペースXがなぜ成功したかと言うと、NASAの存在が重要です。NASAがお金をつけて、スペースXが開発を頑張りました、それを見て投資家がお金を投資しました、そして、NASAも投資家も、一回で終わらなかったんです。そのあとに何回も何回も何回も投資をして支援し続けたので、今に来ているってことで、政府のお金、民間のお金、政府のお金、民間のお金のサイクルを5回から10回ぐらい回して、今に至っています。今数兆円の時価総額ついていますけど、その結果なのかなと思っています。

見學さんありがとうございます。では三戸さんお願いします。

三戸氏

©北海道宇宙サミット2021

三戸氏:スペースX、まだファイナンスのピッチ回ってきますもんね。

青木氏:どんどん来ます。どんどん来ます。

三戸氏:まだやっている。日本にも来ますもんね。

青木氏:日本にもしょっちゅう来ますね。お金くださいみたいなの。株式市場で売ってないので、水面下で全部直接トレードされているっていう状況ですが、買いたいって人はいっぱいいるんですよね。

三戸氏:だからISTもそのくらいになりたいなと思っているんですけども。他の業界と宇宙との決定的な投資の違いは、やっぱり答えが出てない、数字が出てない業界なので、上場した会社がいくらの時価総額、株価が付くんだってことが見えないと、やっぱり上場前にベンチャー投資していくときに、投資家としてリターンがいくらになりそうだっていう想像すらできないので、全然やっぱり投資が進まないのが今の宇宙の業界かなと思っているんですよね。

我々ISTは、まあそれはそれで仕方ないなと。合理的な投資にはあまりこう今の現時点では即さない部分もあるかなと思いながら、家入さんのような起業家で、すでに自分でビジネスをゼロから作って、で実際にお金まで稼ぐことができたっていう方に投資をしていただいています。いわゆるシリアルアントレプレナーみたいな方々ですよね。

そういった方々はやっぱりギーク感があるっていうか。なんかよくわかんないけどやっていたら面白いよねと。先ほどもおっしゃっておられた、インターネットの黎明期とか初期の頃のような感じで、結果どんなサービスが生まれてくるか、リターンが生まれてくるかわかんないんだけど、なんか夢があるじゃない、面白いじゃないという方に投資をしていただいています。

それが今の、特にロケットなんかはフェーズでして。それをやっぱり最終的にみなさんが投資したいなと思うイメージを作るには、最終的には明確なサービスが出てこないとだめなので、衛星でこういうセンシングで、実際にこんなに生活環境が変わりましたよねとか、すごくこういうものに使えるようになりましたよねっていうシーンにないと、なかなか難しいのかなと思っています。

故に、今が投資チャンスだなと私は思っているんですよね。VCの業界はいろんなサービスに投資をしていくんですけど、サービスはサービス間で競争していくので、勝ち負けがけっこう生まれてくるんですね。その勝ち負けを見極めながら勝ち馬に投資するって、けっこう難しいんですよ。

だけどVCなんかは、マクロ環境にどかっと投資する方針っていうのもけっこうあるんですよね。大きく伸びていく市場にバカバカとにかく投資しておけば、なんかどれかは1個当たっていくよねと。それがほとんど失敗した投資をカバーしていくみたいな、そういうマクロ環境に投資するっていう発想があるんですけど。

昔で言うインターネット、ちょっと前で言うとiPhoneのアプリケーションを作るような会社、そういったフェーズに今宇宙があるかなと思いますね。なんとなくイメージがよくわかんないけど、マーケットとしては大きくありそうなので、そこに投資をするんだって思える人と思えない人で、たぶん10年後20年後、宇宙業界のベンチャー投資とかっていう意味で言うと差が出てくるんじゃないかなって思っています。

青木氏:最後のその、マクロトレンド見ながらっていうのは面白いと思っていまして。今ホットな領域、エネルギー、あとは気候変動、食、宇宙とこれも入ってきているわけですよね。なので期待できると思っています。では坂本さんお願いします。

坂本氏:私はグループとしては売り上げがかなり大きいオイル&ガス、元々祖業でもありますので、こちらの類似点からまずお話ししたいと思います。

見學さんおっしゃられたように、宇宙業界どちらかというと太く長い、しかもガバメントが強いというところが元々の特色かなと思っております。オイル&ガスの業界もまさに同じで、かなりの莫大なお金が長い期間投資されていて、しかもそれを主導するのは、いわゆるIOC(インターナショナルオイルカンパニー)であったり、NOC(ナショナルオイルカンパニー。国が運営しているオイルカンパニー)が主要なお客様になる業界です。

そういったところが似ているなと思いますし、あとはプラント自体が重要インフラですので、どうやってリスクを排除していくかというところで、まさに宇宙業界もどうやってリスクを排除して宇宙にモノを上げるんだ、運営していくんだっていうとこが、非常に似ているなというのは昔から感じています。

ただ大きな違いとしては、もうオイル&ガスの市場ってかなり成熟していて、逆に今脱カーボンな流れのなかでかなりアゲインストな風になっておりますので、そういったなかで宇宙はまだまだ黎明期というところで、これからお金が集まっていって、市場としては大きくなっていくのかなと思っています。

ですのでオイル&ガスに関わる投資に関しては、比較的見えやすいというとこがなんとなくあるんですが、宇宙に関してはまだまだ先が見えにくい。投資がイグジットも考えると、先が長いのかなという感触がけっこう大きな違いかなと思っています。

あとは個人的にオイル&ガス長かったので、このアゲインストな風を見ながら、宇宙の方が夢があるというか、オイルの出る、産出国はどうしても僻地にあって。私も中東にいましたし、北極圏の極地とか、あとアマゾンの奥地にオイルが出るとこがありますので、そういったことをやっていた会社としては宇宙は究極の僻地というところで、実はエンジニアとしては一番燃えるエリアかなと思っています。何か我々もこの究極の僻地に対して、なにか着手できないかなとは昔から思っています。

青木氏:喜んで出張に行く人とかも社員でいそうですよね。

坂本氏:むしろ、今私は日揮株式会社と国内のほうにいますけど、みなさんだいたい入社希望は海外のやばいとこに行きたいと、そういう人が多いです。フロンティア精神というか、外に出て行ってチャレンジしていくというところが、エンジニア業界の人は多いのかなという気がします。

青木氏:宇宙出張手当ですね。あの宇宙飛行士も危険手当が出ますけれども公務員として行った場合はあのそんな感じかなと思います。

宇宙産業の投資魅力はどこにあるか?

セッション3

©北海道宇宙サミット2021

青木氏:最後の質問です。宇宙産業の投資としての魅力をあのそれぞれ皆さんからのご意見を伺いたいです。

坂本氏:まだ弊社としては、具体的に宇宙にどれくらいの投資でいくっていう戦略までは立ってはいないですが、今まさに技術も進歩していて、今までできなかったことができる、見えなかったことが見えるという時代がすぐそこにきていると思っています。

例えば、我々の究極の目的は、地上に住んでいる人々の生活が良くなるため、ファンドの目的でもありますが、持続可能で安心安全な街づくり、社会システムの構築というのがゴールでもありますので、リモートセンシングで災害監視とか、今まで見えなかった環境の規制。宇宙に投資することによって、新しい事業を生み出せる、新しく人々の生活を良くできるというところに可能性を感じていますので、まさに夢、ロマンがありながら、課題は多いと思いますけど、そこに投資をしていって、我々も新しい道を開けるというのが大きな魅力かなと思っています。

青木氏:ありがとうございます。三戸さん、いかがでしょうか。

三戸氏:急加速できるって感じかなと思っていますね。私『MOMO』3号の時に、初めての宇宙にいったロケットなんですけども、に広告をスポンサードさせてもらって。その時はスポンサーそんなに集まる感じじゃなかったんで、私の会社名が日本で初めてスポンサー広告で宇宙に行った会社なんです。

なんかその頃って、数百万円のスポンサー広告集めようぜって言っていた頃だったんですけども、今2年経ったのか経ってないのかで、数十億集めようぜみたいな世界に変わっているんですよね。IST自体も。だから、この数年間で一気に急加速していっている産業というのは、やっぱり地道にちょっとずつ増やしていこうよっていうような業界ではなく、急加速している産業。ここに身を置くことの楽しさを強く感じていますね 。

青木氏:ありがとうございます。では見學さんがいかがでしょうか。

見學氏:この投資自体の魅力ももちろんあるんですけども、私どもは、よりそこから得られるいろんな広がり、これが魅力だと思っています。

例えば、月に行くってすごい酷環境なんですよね。温度もそうだし、放射線もそうだし、重力の話もあったりして。例えば日本の優れた産業界がお持ちの技術がそこで実証される、日本の技術が一段と磨かれる、そんな場にもなっていくと思います。

それから、今までともすると宇宙産業というのは閉ざされた世界があって、宇宙による宇宙のための技術開発やら製品開発だったんですが、気がついてみると、例えば車載製品の寒い、暑い、あるいは揺れるのような「なんだこれロケットに使えるじゃん。衛星に使えるじゃん」っていうところで、そういう協業の機会っていうのが増えてきていると思います。

それから衛生。例えば、かつてドローンが「面白いねこれ、何に使うの?」みたいなところからだいぶ市民権得られたと思うんですけど、衛星データのいろんなことにこれが使えてくると思います。その際にやはり今の既存の企業さん、いろんな業界の方とのコラボレーションというのが重要かなと。なんかそんな広がりがこの宇宙産業を発展させていけるんじゃないかという期待が非常に魅力だと思っています。

青木氏:ありがとうございます。では家入さんお願いします。

家入氏

©北海道宇宙サミット2021

家入氏:そうですね。違う視点からお話しすると、僕これまで100社以上のスタートアップにエンジェル投資をしてきました。若い子でいうと、高校生で起業している子も何社もありますし、大学生とか若い方を中心にやってきたんですけど、その時にやっぱり大事にしているのが、事業じゃなくて人に投資する観点でやるんですね。

僕自身もそうだったんですけど、その起業家に大事な資質って、例えば劣等感や生きてきた中で感じた理不尽なこと、あとはこれを変革したいという強い思い。そういったものが強ければ強いほど、初打席でホームラン打とうとしてもなかなかそんなのも大体うまくいかないわけで。何度も何度も三振しながら打席に立ち続けられるかどうか、その胆力みたいなものって、きっとそういう思いみたいなものがあるかないかでけっこう左右するなと思っていて。打席に立ち続けた人が最終的にヒット打ったり、ホームラン打ったり、もしかしたらもう三振のまま退場ってことももちろん全然あるんですけど、そういったものが起業家には求められるのかなと思っています。

やっぱり宇宙産業って、まだまだ未知数な部分だったり、お金もまだまだ必要だったり、しかもおかわりが必要だったり。かなり投資としてみた場合にもリスクがでかい、起業家としてみた場合にも未知な部分がまだまだ大きい領域ですよね。

だからこそ、そこに対して関わろうとしている起業家と話すと、めちゃめちゃ熱い方が多いんですよ。これは圧倒的な魅力だと思います。別にインターネットの産業でこれから起業しようとしている人たちが魅力ないっていうわけではないですが、圧倒的に立ち向かうことも困難なすごい大きな敵に立ち向かっているような、そういった魅力を持った起業家がめちゃめちゃ多いと思っていて。それは宇宙産業の魅力に入れてもいいんじゃないかなと思いました。

青木氏:ありがとうございます。熱量は半端ないなっていうのはおっしゃる通りかなって思いました。

今回は投資セッションなんですけども、今後みなさん株式投資個人としてもできる機会ありますし、もちろん会社として投資するチャンスもあります。もちろんふるさと納税みたいなところ、あとはクラウドファンディングみたいなところでの投資といういろんなチャンスがありますので、ぜひ個人もしくは会社でいろんな事業に関わっていただければと思います。それではこの投資セッション、こちらで終了したいと思います。みなさんどうもありがとうございました。

※本記事はカンファレンスでの発言を文字に起こしたものです。言い回し等編集の都合上変更している場合がございます。

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