町づくりを担う声優、八所かおり。明るく積極的な人々が、十勝・芽室町の未来をつくる
帯広市の隣に位置する芽室(めむろ)町。ここで地域おこしに励んでいるのは、芽室町に移住した、声優・ナレーターの八所かおりさんです。大企業のCMのナレーションや海外映画の吹き替えなど幅広く声のお仕事で活躍してきました。そんな八所さんは、現在北海道芽室町で町づくりに取り組んでいます。声優と町づくりを兼業する八所さんに芽室町に移住した経緯や、芽室町の魅力について詳しくお聞きしました。
八所かおり(やところ・かおり)ナレーター・声優・NPO法人 Qucurcus
大阪府枚方市出身。大阪と東京で声優・ナレーターとして活動後、2015年11月に北海道へ移住。地域おこし協力隊として北海道三笠市、芽室町で活躍。声優・ナレーターとしての仕事も継続しながら、2021年3月に『NPO法人 Qucurcus(ククルクス)』を立ち上げ、5月から移住定住のサポートや自治体のPR、ラジオ出演など幅広い事業を担当。
旅行で十勝に魅了され移住を決意
北海道Likersライターやまくらきょうか(以下、やまくら):八所さんは鹿児島県生まれの大阪育ち、その後東京を経由して北海道へ移住されたそうですね。なぜ十勝をお選びになったのですか?
八所さん:旅行が趣味で、もともと北海道が好きでした。その中でも、観光で十勝に訪れた際、十勝の人の良さに惹かれたんです。
私がスーツケースを引きながら歩いていると「スーツケースをお預かりしましょうか?」と聞いてくださる方がいたり、「このあたりにスーツケースが入るロッカーはありますか?」と聞いたときに「ありませんが、うちでお預かりしますよ」と言ってくださるバス会社の方がいたり……。
あとは、私は馬が好きなのでばんえい競馬を見ようと競馬場に行ったのですが、時間の都合で見られないことに競馬場に着いてから気づいたんです。どうしようと思っていたら、たまたまその場にいた来場者の男性が「今から獣医さんの話が聞けるけど、一緒にどうか」と連れて行ってくださったこともありました。
とにかく気さくで、困っている人がいたらためらわず声をかける人が多くて、そこに魅力を感じ、「十勝に移住したいな」と思いはじめました。
やまくら:当時は東京で声のお仕事をされていたのですよね。活動の拠点を変えるに至ったきっかけがあったのでしょうか。
八所さん:ちょうど東京でやりたかったことが全部叶ったタイミングがあり、本格的に北海道移住を考えるようになりました。タイミング良く地域おこし協力隊の記事を見て挑戦してみたいと思ったことがきっかけです。
地域おこし協力隊の求人を探していたところ、「ナレーター・声優という職業を生かせる」と三笠市を紹介していただきました。三笠市の地域おこし協力隊として2年5ヶ月活動したあと、十勝への移住を実現するために芽室町の地域おこし協力隊に応募しました。面接の日、職員の方に企画を提案したら、それを可能にしてくれるような柔軟な印象を受け、ぜひこの町に関わりたいとワクワクしたことを覚えています!
芽室の一番の魅力、それは「人」
やまくら:十勝に住む方たちの人柄に惹かれたのがきっかけだったのですね。芽室町に移住して、3年間の地域おこしで関わることで見えてきた、芽室町の魅力はどんなものですか。
八所さん:それはやっぱり“人”ですね。芽室町の人は、とにかく底抜けに明るくて積極的で失敗を恐れない人が多いと思います。住む前は、正直なところ芽室の印象は何もなかったのですが、住んでから1ヶ月も経たないうちに大好きになりました。十勝はそれぞれの町に色があると感じていますが、芽室町を色で例えるなら、お日様のような色。「十勝晴れ」という言葉がぴったりです。
やまくら:具体的なエピソードを教えてください!
八所さん:たとえば、役場の職員も芽室町を支えるために積極的に動いています。昨年はコロナ禍でも飲食店をひとつも廃業させないという目的で役場職員が有志で「1%の会」をつくりました。これはお給料の1%×12か月分を飲食店に寄付するという取り組みで、130人ほどの役場職員が参加しました。
民間でも、寄付活動を行った方たちが何人もいらっしゃいましたよ。あと、コロナ禍でも楽しめるような屋外イベントを企画運営してくれた方もいらっしゃいます。誰かに指示されるわけでもなく自分から動く人が多い。それが芽室町の魅力だと思います。
やまくら:活発な方が多いのですね。十勝のほかの町との違いを感じることはありますか?
八所さん:町によって気質は違うと感じますよ。移住者はあくまでよそ者になってしまう町もあります。芽室町に移住して感じるのは、移住者を歓迎し応援する風土があることです。
やまくら:その違いにはどういった背景があるのでしょうか?
八所さん:一概には言えないですが、芽室町は肥沃な土地が特徴なので、基幹産業を担う農家さんの心に余裕があるということも大きいかもしれませんね。芽室町では、50~60代の農家さんも新しい作物の栽培に挑戦するなど常に前向きで、それを見た若い世代が影響を受けているようです。先輩の姿から“積極的な姿勢”を学ぶことで、町全体が明るくなっているように感じます。
やまくら:八所さんは芽室町で具体的にどのような活動をされているのですか?
八所さん:2021年の4月に地域おこし協力隊の任期が終わった後も、町づくりを担う『NPO法人 Qucurcus(ククルクス)』で、シティプロモーション事業、移住定住事業、体験型観光事業などを行っています。
やることは本当にいろいろで、PRのための動画制作やSNSなどでの情報発信、パンフレットづくりでは文章を書くこともあります。イラストを描くのが趣味なので、それを活かして町のグッズや移住相談会用の椅子カバーなどもつくっています。
あとは、イベントの企画・運営や移住検討者向けのプライベートツアーですね。プライベートツアーでは、物件の内覧や保育所など町内施設の見学、先輩移住者との交流など、その人に合った内容でコーディネートしています。芽室町の“人”の魅力をしっかりと感じてほしいので、人に会ってもらうことは重要視しています。
やまくら:幅広く活動されているのですね。本職のナレーターや声優のお仕事が活かせる場面はありますか?
八所さん:芽室町の魅力を伝えるという点では、ナレーター・声優の経験も活かすことができています。「エフエムおびひろ」では芽室町を紹介するラジオコーナーをいただいていますし、町でつくる動画内でキャラクターのアテレコやナレーションをしたり、町のお祭りでMCをしたり……さまざまな活動をしています。
自宅に収録機材があるので、芽室町はもちろん、町外から声のお仕事をいただくこともあります。芽室町周辺には声の仕事をしている人はほとんどいないので、ありがたいことに重宝していただいています。
芽室は今後、良くなっていくイメージしかありません
やまくら:声のお仕事を活かす場面がたくさんあるのは、とても素敵ですね。今後ますますご活躍されることと思いますが、これからの芽室町へどのような期待をお持ちですか?
八所さん:やっぱり芽室町は明るくて積極的で前向きな人が多いので、今後もさらに良くなっていくイメージしかありません。
法人を立ち上げたことで十勝のほかの自治体とも連携しやすくなったので、これからは芽室町の方だけでなく町外の方とも一緒に十勝の魅力を発信していきたいです。その結果として、十勝を訪れる方が、訪問先のひとつとして芽室町を選んでくれると嬉しいですね。
実際、観光にも力を入れるようになったので外から人が来る仕組みがどんどん整備されていっています。驚くべきスピードで芽室町は変わっていっているんですよ。
やまくら:今回お話を伺って、前向きで明るい芽室町の魅力が伝わりました。
八所さん:芽室町の最大の武器は人だと思っています。かつての私が十勝の人柄に惹かれて「移住したい!」と思ったように、芽室町に一度訪れた人が再度「あの人に会いたいから芽室町に行く!」と思ってくれるようになればうれしいです。
———インタビュー中に何度も語られた“人”の魅力。八所さんご自身も明るく積極的な素敵な方でした。「この人に会いたいから、芽室町に来る。それが現実になる町」。芽室町の最大の武器、“人”によってこれからどのように変わっていくのか、楽しみです。
Sponsored by SMOUT