移住コーディネーター栗原竜太郎。人と地域のつながりが伊達の未来を描き出す
住んでいる街や地域は、あなたにとってどのような場所ですか。30歳を過ぎてから、高校卒業まで育った街にUターン移住した栗原竜太郎さん。現在は移住コーディネーターとして活動する栗原さんにとって、伊達市はどのような“居場所”なのか伺いました。
栗原竜太郎(くりはら・りょうたろう)北海道室蘭市出身。幼少期をニューヨークで過ごした後、高校卒業まで伊達市で育つ。進学や就職で京都、横浜、東京で生活を送り、30歳手前でより大きなやりがいを求めて大手重工企業を退職し、ニセコのペンションスタッフなどを経験。その後地元である伊達市へUターン移住し、現在は北海道伊達市と西いぶりエリアの移住相談を行う、移住コーディネーター。
「この街にも面白い人がいる」ことが移住の決め手
北海道Likersライター快斗:これまで世界や日本各地で暮らされていましたが、大手企業を退職して、伊達市へUターン移住をされたきっかけはなんだったのでしょうか?
栗原さん:やりがいを求めて東京の仕事を辞めてから、いろんな経験をしました。ニセコで住み込みをしたり、東京でファッションの専門学校に通ったり。それを終えて、東京でやっていたことに区切りをつけて北海道に戻ってきたんです。だけどそのときは定住する気はありませんでした。久しぶりに地元に戻ってきたので、ゆっくり今後のことを考えよう、と。気づいたら3年経っていました(笑)
北海道Likersライター快斗:(笑)
栗原さん:だけどいざ住んでみると、自分の知らないことがたくさんあって。なんかここ面白いところだなと気づいてしまったんです。
するとタイミングよく、伊達市役所で新たな事業の立ち上げの採用がありました。そのひとつが移住関係だったんです。
北海道Likersライター快斗:成り行きというか、意図していたわけではなかったんですね! 地元の面白さに気づいた印象的なエピソードはありますか?
栗原さん:印象的なことが多すぎて(笑) 例えば、雑誌「BRUTUS」の表紙を、地元出身の演出家、藤田貴大さんが飾ったんです。演出家の蜷川幸雄さんが後継者と認めた、若い演出家の方です。自分の住んでいる街の出身で、さらには高校の後輩で、こんなにすごい人がいた。彼が活躍するルーツが、小さくて刺激がないと思い込んでいたこの街にあったんだ、と。それが衝撃的で。
他にも東京で活躍している伊達市出身の芸術家や映画監督がいて、さらにはこの街にも面白い人がたくさんいたんです。それに気づいたことは、転機になりましたね。
伊達市は「街が、人と人とのつながりを支える」
北海道Likersライター快斗:現在はどのような取り組みをされていますか?
栗原さん:移住と地域の市民活動の活性化の取り組みです。市民活動とは、仕事や家庭以外の、自分の好きな趣味の活動や居場所のこと。移住者が街に入るときにコミュニティが活発なほうが気の合う友達や知り合いをつくりやすい。そんな地域にしたいと思って活動しています。
伊達市には、人と人とのつながり、いわばソーシャルキャピタルのようなものが地域にとって大事だという意識があります。今は少しずつ盛り上がってきているんですが、それがもっと花開き、いろんな人たちを受け入れる器が増えたらいいですよね。
北海道Likersライター快斗:これまでの活動を振り返ってみていかがですか?
栗原さん:移住者が新しく趣味をはじめてみたい、住民の方々がサークルを立ち上げたいというときに、相談にのるなどサポートをしてきました。はじめは手探りでしたが、最近は少しずつ変化を感じています。立ち上げから関わっていたある団体は、今では多岐にわたる活動を展開していて注目されています。SNSで活動の様子を見ると精力的にいくつかプロジェクト立ちあげて本当に楽しそうに活動されているようですね。
他の人たちもその様子をみて、自分たちでもいろんな活動をはじめようという人がいるんじゃないでしょうか。まだまだこれからですが、5年目にしてようやく良かったなと感じました。
北海道Likersライター快斗:移住コーディネーターとして、大切にされていることはありますか?
栗原さん:移住相談ではリアルをお伝えするようにしています。移住を検討されている方の希望が伊達市にマッチしない場合は、ほかの地域を提案することもあります。せっかく相談をしてくれたのだから、なにか良いお返しができるように意識しています。家族で移住した人の話が聞きたい場合には境遇の近い住民の方を交えてお話をすることもありますよ。
「藍染め×害獣×ファッション」の実現へ
北海道Likersライター快斗:今後挑戦したいことはなんですか?
栗原さん:これは個人的な考えですが、藍染め・害獣・ファッションをかけ合わせた活動をしてみたいと思っています!
北海道Likersライター快斗:……それはつまり……どういうことでしょう?
栗原さん:伊達市には、藍染めの体験施設があります。個人的に訪れて、藍染めって楽しいなと思っていたところ、たまたま藍染め体験施設運営の委託の仕事が舞い込んで。自分が担当をするなら藍染めを盛り上げるようなことをしたいなと思ったことがきっかけです。
栗原さん:実は北海道の藍の収穫量は、徳島県に次ぐ2位。さらに、北海道の藍農家さんは、伊達市に1軒だけ。1軒だけでものすごい収穫量があるのですが、全国的にも地域でも藍染め関係者以外にはおそらくあまり知られていないんです。
北海道Likersライター快斗:全国2位とは知らなかったです! 害獣やファッションとの関わりについても教えてください。
栗原さん:伊達市の大滝という地区に、地域おこし協力隊の人がやってきたのですが、彼は在任中に、鹿撃ちのために狩猟の免許を取ったんです。そして、撃ったエゾシカを自分で解体して調理もして、肉加工品として提供するというビジネスをこの春から始めました。
食べられる部分はビジネスにできているのですが、革はまだ。エゾシカの革は高級なので、なにかに使えないかと考えているんです。徳島では鹿の革で藍染めをしているところがあるので、不可能ではないはず。そうなったら、幅広い人たちに受け入れてもらうためには見栄えの良さも大切で、ファッション的アプローチも必要だと思っています。自分はファッションの専門学校に通っていて当時の仲間がいるので、彼らに力を借りて面白いことができないかな、と。こうした3つを組み合わせて、なにかやりたいと思っているところです。
「地球を感じて、ひとりで感動しちゃったりする」
北海道Likersライター快斗:最後に、改めて伊達市の魅力を教えてください。
栗原さん:伊達市はよくコンパクトシティといわれるのですが、スーパーや病院、銀行など生活に必要な施設がまちなかに集約されていて、都会でもなく、ど田舎でもない、ちょうどよさがあります。と同時に、自然へのアクセスもすごく良くて。車で10分ぐらいで洞爺湖に行けるんです。自然がすごく身近なところも魅力です。
北海道Likersライター快斗:素敵なところですね。
栗原さん:港から見る夕日がすごく綺麗で僕は好きですね。漁港に行くと目の前には海が広がっていて、湾の向こう側の函館方面に駒ヶ岳が綺麗に見えます。背後に地元の山があって、さらに方向を変えると羊蹄山。1か所にいてそれぞれの地域のランドマークが見えるのはすごいな、と。
地球を感じて、ひとりで感動しちゃったりもします。都会にいるときにはビルしか見えませんでしたから、そういうところに気づけるのって、とっても幸せなことですね。
―――「人に魅せられて、地域が好きになる」。栗原さんにとっては“人”との出会いが、街を愛するかけがえのないきっかけでした。だから栗原さんも、“誰か”のために、移住コーディネーターとして走り続けているのです。その先に広がる世界が、楽しみです。
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