意外と知らないかも!? 北海道の代名詞「試される大地。」が生まれた理由
本来の使われ方や発祥をよく知らずに使っている言葉やキャッチフレーズ。そういうものって、意外と身の回りに多くありますよね。“試される大地。”もそのひとつではないでしょうか? 北海道民ならずとも、一度は耳にしたことがあると思われるこのキャッチフレーズ。筆者も物心ついたときには知っていた気がします。
このキャッチフレーズは、いったいどのように生まれたのでしょうか?
はじまりは「北海道イメージアップキャンペーン」
時は1998年。2000年代突入を前に、新時代に北海道が目指す方向や生き方、理念を広く問いかけようということで“北海道イメージアップキャンペーン”が始まりました。このキャンペーンでは、キャッチフレーズとロゴタイプの公募が行われ、盛り上がりを見せました。“試される大地。”でピンとこない方もロゴタイプは見おぼえがあるのではないでしょうか。
赤と緑と青が文字の一部分に使われた“北海道”。以前はかなりいろんなところで見かけたように思います。
このキャッチフレーズとロゴタイプ、なんと全国から計6万件以上の応募があったそうです! そして選ばれたのはそれぞれ横浜市と京都市在住の方のものでした。京都市在住の方は北海道を訪れたことがなかったそうで、人から聞く話を参考に作成したんだとか。
賛否両論?6時間半に及んだ選考会議
今となってはすっかり定着している“試される大地。”という言葉。しかし、当時の厳しい道内経済情勢から、発表された当初はいいイメージを持たなかった人も一定数いたそう。
実際のところ“試される大地。”は異色で、最終審査に残ったほかの有力候補には“夢、放牧区”や“ここには、いろんな道がある”など夢や希望を感じられる作品が多かったそうです。
最終決定をする議論は膠着し、6時間半にまで及んだそうです。それでも、脚本家の倉本聰さんなど道内外の13人からなる審査委員会やその場にいた道職員の間で意見がまとまり、“試される大地。”は生まれました。観光のためだけのキャッチフレーズじゃない、というある種の覚悟が共通認識としてあったことも大きいのではないでしょうか。
当時の堀北海道知事は雑誌のインタビューに次のように答えています。
この「試される大地。」というキャッチフレーズの“試される”とは、決して辛い意味で「試される」というものではなく、「自らに問いかける」あるいは「世に問う」というプラス志向を示す言葉であるとともに、「try」の意味が込められているのです。
言葉ばかりが先行し、ちゃんとした背景は知りませんでしたが、このような意味が込められていたのですね。
「試される大地。」から「その先の、道へ。北海道」へ
時は流れて2021年。現在は、2016年に発表された“その先の、道へ。北海道”に変わり、一線を退いているといってよい“試される大地。”。しかしながら、今なお広くその名をとどろかせている印象を受けます。
北海道のホームページには、新しいキャッチフレーズに関し、
道民の方々、北海道を訪れる方々にとって、北海道には様々な可能性が広がっていること、そして、北海道が未来や世界に積極的に進んでいこうとする動きを感じさせる言葉です。また北海道らしい風景をイメージさせ、道外や海外の方々に対しこの魅力溢れる北海道に「ぜひ来てください」と呼びかけるフレーズでもあります。
とあります。はっきりと前を見据える意志を感じるキャッチフレーズですね!
―――“その先の、道へ”というフレーズをどこかで聞いたことがある気がしましたが、わかりました。北海道日本ハムファイターズ時代の大谷翔平選手の応援歌の最後にあるフレーズ……“夢の向こう側へ”と少し似ていますね。北海道もさらなる飛躍を遂げることを期待します!
【参考】
試される大地からの地域戦略 / 日本物流学会第19回大会 講演録
チャレンジ精神で道をPR キャッチフレーズとロゴ決まる / 朝日新聞・道内地域版(1998年9月17日朝刊)
「北海道のキャッチフレーズが決まりました」/ 北海道
「北海道のイメージアップをはかるためのロゴマーク等の使用について」/ 北海道
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