萩原美緒さま

優しい想いを届けたい。食前アイスで家族をつなぐコロッケ株式会社・代表「萩原美緒」

北海道食材を使った“子どもがよろこぶ食前アイス”『pocco(ぽっこ)』をつくったのは『コロッケ株式会社』代表取締役社長の萩原美緒さん。

「北海道に来て、本当に自分のやりたいことがわかった」と話す萩原さんに、北海道移住のきっかけや、『pocco』に込めた想いを聞きました。

萩原美緒(はぎわら・みお)。1983年生まれ。青森県出身。『コロッケ株式会社』代表取締役社長。『クックパッド株式会社』で、コーポレートブランディング、採用責任者、海外事業部のオペレーション、『coockpadTV株式会社』で新規事業の責任者を歴任。2児の母。

ノリで決まった!? 北海道移住のきっかけ

北海道Likers編集部:移住前は東京の会社に勤められていて、ご出身は青森県とのこと。どうして北海道に移住することになったのですか?

萩原美緒さま

今回の取材はオンラインで行いました

萩原さん:たまたま産休中に、夫が会社を辞めたタイミングが重なり、東京にいる理由が一時的になくなったんです。だったら3ヵ月だけ住んでみたかった場所に住もうっていう話になって。『ダーツの旅』みたいな考え方で(笑) スキーが好きな夫の提案もあり「よし、北海道に行こう!」とある意味ノリで、ニセコにやってきました。

それが、3ヵ月間住んだら東京に戻るのが辛くなってしまって。とにかく食べ物がおいしいんです。野菜も、お水も、お米も、乳製品も全部美味しい。人として豊かに生活するなら北海道がいいねということで、そのまま移住しました。

北海道Likers編集部:ご自身で会社を立ち上げたのはどうしてですか?

萩原さん:北海道に来てから家族そろって晩ご飯を食べる時間が増えました。それが当たり前になると、とても幸せで。そのことがきっかけで「なんで東京では、みんなで食べられなかったんだろう」と考えるようになったんです。その中で、やっぱり私たち家族は晩ご飯を囲む時間を大事にしたいと方向が定まり、その素晴らしさを広げるために、できることをやっていこうと会社をつくりました。

たくさんの想いが詰まったアイス

北海道Likers編集部:ひとつ目に、アイス『pocco』をつくることになったのはどうしてですか?

pocco

出典: pocco

萩原さん:「晩ご飯の時間を楽しくしたい。それを阻害してるものって何だろう」といろいろ考えたときに、ひとつは満腹を招いてしまうおやつなのではないかと思ったんです。

実際、東京での生活を振り返ると、バタバタ保育園に迎えに行ったあと、近くにあるスーパーで買い物をして、家についたら3~40分ぐらいで晩ご飯をつくらないといけない。でも、その時間こそ子どもがお腹が空いているから「何か食べたい、何か出して」と、料理をしている私の足にしがみ付いてくる。私は早くご飯をつくらなくちゃいけないから「その辺にあるもの食べときなさい!」とか言って、私のおつまみとかを食べさせちゃって。

それで結局、晩ご飯ができたころには子どもはお腹いっぱいでもういらない……みたいな生活を続けていたんですよね。

だから、子どもがお腹いっぱいにならず、ごきげんに晩ご飯を待つことができる、そして親御さんが罪悪感なく与えられる、これらを満たすおやつをつくろうと考えました。

poccoを食べてごきげんな子どもたち

出典: pocco

野菜チップスなど数々の試作を重ねていく中で、親の罪悪感を消すことはできても、子どものテンションが上がりきってないことが気になっていて。子どもがごきげんに、次も食べたいと思ってくれるものは何かと考えた結果、アイスにたどり着きました。

北海道Likers編集部:素材は北海道の食材を使われていますね。

萩原さん:3ヵ月間ニセコに住んでいる間に、色んな生産者さんにお会いしました。彼らのおいしいものを届けることへの情熱の高さに圧倒されて、ものをつくる人たちへの憧れを強く抱くようになったんです。それも会社を立ち上げたきっかけのひとつ。

きっかけをくれた北海道の人たちが真剣につくっているものを、本州の人たちに届けたい気持ちがあり、北海道の食材を使うことを決めました。

『pocco』を召し上がった大人の方からは「お店で売っているアイスとは一線を画している」と言っていただけることが多いです。本当にフルーツにそのままかぶりついたような味わいなので、アイスであるということだけではなく、おいしさでも子どもがごきげんになってくれるようこだわっています。

情熱をかけてチャレンジしたいことがわかった

北海道Likers編集部:最終版のアイスにするまでに難しかったことはありますか?

萩原さん:『pocco』を購入いただくのは、忙しい方を想定しているので、受け取り時間を調整して家にいるのは難しいのではないかと思いました。再配達が増えてしまうこともいい状況ではない。

なので、常温でアイスを届けることに決めました。2019年8月にそう決めてからだんだんと形になって、2020年6月やっと販売できるようになったんです。

今後は、アイスにとどまらず、北海道の食材を使うことをベースに、さまざまなシーンで楽しめるおやつがつくりたいです。

北海道Likers編集部:最後に北海道への想いを教えてください。

萩原さん:東京にいたときは、まさか自分がイチから商品をつくれるとは思っていませんでした。組織の中で何が求められているのか、どう評価されるのかとつい考えてしまって、特に会社が大きくなってからは、新しい何かをやりたいと言い出しづらかった。でも、北海道に来て、ゼロベースで何をして生きていきたいかを考えられるようになりました。

生産者の方をはじめ、食品加工施設の方やお店の社長など、北海道で出会った方々は新しい挑戦を前向きに後押ししてくれる方ばかり。本当に優しくて、北海道を盛り上げたいという気持ちにあふれているんです。

「北海道の食材で、親子にうれしいおやつをつくりたい」そう思ってから、販売開始まで続けてこられたのは北海道という土地と、あたたかい人たちのおかげだと感じています。

―――互いに助け、みんなで盛り上げる。北海道にはそんなポジティブな循環があるのだと感じました。「たくさんの方に助けてもらって販売まで至ることができたので、今度は私ができることがあればお手伝いしたいと思っています」そう話す萩原さん。想いの輪から生まれる新たな挑戦はこれからも続きます。

photo by 佐々木 育弥(トップ画像)