好きな仕事を好きな場所で。仕掛け続けるオホーツクの仕事人・さのかずや
学生時代から、ウェブメディア『オホーツク島』や宿泊施設『オホーツクハウス』など、さまざまな事業やプロジェクトを通じて地元・オホーツクを盛り上げるさのかずやさん。活動をはじめたきっかけや、想いを持って挑み続けることの面白さや難しさに迫ります。
さの・かずや。1991年生まれ。北海道遠軽町出身。工学部から広告代理店営業、大学院(IAMAS)を経て、現在はフリーランスのBizDev, Technologistとして活動。地域やテクノロジーにまつわる企画を行う。20年5月までローカルメディア『オホーツク島』を運営。最近では宿泊施設『オホーツクハウス』の立ち上げも。著書には『田舎の未来 手探りの7年間とその先について』がある。
都会と地方の違いを知ったからできること
北海道Likers編集部:『オホーツク島』や『オホーツクハウス』など、地元を軸にした活動を続けられています。地元を盛り上げる活動をはじめたいと思ったきっかけはありますか?
さのさん:一番最初のきっかけは、大学生の頃父に関することを書いたブログで、田舎と都会って何でこんなに違うんだろうと考えたことです。その後、就職した東京の広告会社には僕と同じような環境で生まれ育った人が全然いませんでした。その違いを目の当たりにした自分だからこそ、地元に対してやるべきことがあると感じたんです。
僕には“自分の生まれ育った環境で暮らしたい”という感覚があります。でも、それを満たすためには東京で暮らすよりも地元で暮らす方が楽しい状態にしないといけない。
それを実現するには何が必要なんだろうと考えることが、自分にとって意味があるし、何かやれそうだと思って活動を続けています。
アクションを起こした先の出会い
北海道Likers編集部:活動を続けることの難しさはありますか?
さのさん:すべてのことが積み重ねだと思います。もちろん、起こしたアクションがすべて次につながるわけではありません。でもアクションを起こした先には人との出会いがあります。
はじめは地元のために活動している人なんていないだろうと思っていました。活動を続けているうちに、場所や形は違えど、自分たちが住んでいる地域を何とかしたいと考えている人達に出会うことができたんです。
たとえば、ブログを書いてすぐ後、コメントをくれたり連絡をくれたりした人や、自分がやりたいと思うことにすでに取り組んでいる人に積極的に会いに行きました。当時のご縁には今も続いているものもあります。
僕が『オホーツク島』を立ち上げた当時は、北海道内各地に同じように活動している人が結構いて。地域をまたいで活動するときに、連絡を取ったり顔を合わせたりと、話していくうちに、それぞれの地域で似通った状況に置かれていることがわかり、だんだん協力体制ができていきました。最近だと、『ドット道東』という団体がみんなで本を作ったり、地域の垣根を超えた活動につながっています。
ローカルで好きな仕事で生きていく
北海道Likers編集部:今後は東京と地元の2拠点から、札幌との2拠点に移されるとのこと。さのさんが今後挑戦したいことを教えてください。
さのさん:“やりたいことをして、住みたいところに住む”。これを自分や周りの人たちができるようになることが大事だと思っています。北海道に限らず、全国各地のローカルもそうですよね。
北海道に住みたいのに事情があって戻ることが難しい人が、自分の望む選択ができる形にしていけたらいいなと思っています。そのためには、ローカルで経済活動ができる状況をつくる必要があるし、そうならなければ若者が暮らしたいと思える場所にはならない。もちろん自分の力だけでは難しいので、僕がこれまで関わってきた全国各地の色んな人と連携しながら挑戦していきたいです。
僕自身も小さくてもいいからオホーツクで事業をやると決めて、2019年の春に『オホーツクハウス』をはじめました。世界遺産・知床の近くの空き家や空きスペースを有効活用することを目的にした宿泊施設で、地元にあるものを外の人に利用してもらって、お金をもらう仕組みをつくれないかと思っています。コロナ禍の影響もあり時間はかかるかもしれないですが、うまく形にしていきたいです。
実は、北海道のローカルで面白いことをやっている人、めちゃくちゃいるんですよね 。でも物理的な距離があって、札幌以外の活動に光が当たりにくい。僕が札幌で活動することで、ローカルの人たちとの新たな活動につながっていくようにしたいし、札幌の人が他の地域のことに触れる機会もつくれたらと思っています。
北海道Likers:最後に地元オホーツクへの想いをお願いします。
さのさん:自分にとって切っても切り離せない場所です。僕が高校生まで暮らした場所で、両親や祖父母は今も住んでいます。このまま何もしないと衰退していくだけだと思って、『オホーツク島』や『オホーツクハウス』を立ち上げました。
ローカルでは、東京や札幌のような都会より、望むように暮らすことが難しいのは事実。そういう状況の中でも頑張っている人たちがいて、そういう人達と日々励まし合いながら、自分が関わっている範囲のことをもう少し良くするためにできることをこれからも模索していきたいです。
そして、同じ想いを持つ人が増えていくほうが全体として良くなっていくはず。札幌や東京で地元に帰りたいなと思いながら暮らしている人たちが帰れるような状況をつくったり、帰れなくても何か関われる機会を創出したり。自分の得意な事業や企画、ブランドづくりや、メディアでのコミュニケーションを通じて実現していけたらと思っています。
―――「日照時間が長く梅雨がないのでずっと晴れていたり、ジャガイモの花が咲く風景が日常の中にあったりと、どのシーズンにも気持ちよさがあっていいところです」オホーツクの魅力を語るさのさんからは、次々とプロジェクトを立ち上げ突き進む力強い姿とはまた違う、オホーツクへの優しい想いを感じました。今後も動き続けるさのさんの挑戦から目が離せません。