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株式会社大人代表取締役社長 五十嵐慎一郎

働き方は自分で選ぶ。ワクワクを生み出し続ける株式会社大人・代表「五十嵐慎一郎」

ちょっぴり変わった名前の会社『株式会社大人』の代表取締役社長の五十嵐慎一郎さんは、イベントやカフェ&バー、コワーキングスペースなど、人と人が出会い新たな価値が生まれる場をつくっています。

人を楽しませる斬新な企画を生み出し続ける五十嵐さんに、これからの働き方や北海道の未来について伺いました。

五十嵐慎一郎(いがらし・しんいちろう)。株式会社大人代表取締役社長。1983年北海道小樽市生まれ。東京大学建築学科卒業後、不動産ベンチャーに入社。2016年に店舗のプロデュース、デザイン、イベント企画運営、WEB制作などを行う株式会社大人を設立。2019年にはカフェ&バー『大人座』を札幌にオープン。地元の老若男女が交わる場をつくっている。『札幌移住計画』や『北海道移住ドラフト会議』『ほっとけないどう』など、道内と道外のつながりを醸成する活動も行う。

外から「北海道の今」が見えない

五十嵐慎一郎

今回の取材はオンラインで行いました

北海道Likers編集部:大学進学を機に上京。東京で就職されたと聞きました。北海道に戻ろうと思ったきっかけを教えてください。

五十嵐さん:そのうち北海道で何かしたいという想いは、漠然とあったんですよね。20代の後半ぐらいに地元のやつらと集まると大体みんな「いつかは北海道に戻りたい」「貢献したい」とか言うようになってくるんですよ。だけど本当に実行できている人はほとんどいない。

いったん離れちゃうと、北海道の今が見えなくなってしまうんですよね。なんとなく景気悪そうだし、面白い仕事できなそうだし、給料安いし……みたいな、ぼんやりとしたイメージになっちゃって。

2010年代になって、色んな生き方や働き方の選択肢がでてきた。震災があったり、パソコン一台あれば働くことができるような時代に変化してきたこともあってか、自分たちの暮らしや在り方にみんなちょっと思いを馳せているタイミングだったような気がします。

『京都移住計画』や『福岡移住計画』など、“移住”っていうムーブメントもちょうど動き出しているときだったので、北海道でもそういう形の動きをやろうぜということで、『札幌移住計画』を立ち上げたのが始まりかもしれないですね。

当時、僕はまだ東京で働いていたので、まずは北海道の今が見えるように接点をつくところから始めようと、人集めだったり企画だったりをしていました。

北海道Likers編集部:完全に拠点を北海道に移されたのは?

五十嵐さん:全部、縁とタイミングなんですよね。前職を辞めたのは5年前。そのときに自分の法人を立ち上げて、住民票と会社登記は札幌に置いたんです。北海道を拠点におもろいことを発信していきたいという想いはあったので。かといって、いきなり札幌に仕事があるわけではないので、東京以外のローカルも含めて多拠点生活から始まりました。そこから徐々に北海道での企画を増やしていって、2018年に、東京でやっていたコワーキングスペースを閉めざるを得なくなったタイミングで、ちょうど別事業が立ち上がり、完全に北海道に拠点を移しました。なので、無計画といえば無計画なんですよね(笑)

比較して初めてわかることがある

北海道Likers編集部:北海道の現状に対して感じることや、変えていきたいと考えていることはありますか。

五十嵐さん:北海道に限らずどの地域でも「今までこうやっていたから」という慣習が、判断の軸になることは多いと思います。当然、地元を思って動いている方々はたくさんいるのですが、これまで通りにやっていればいいだろうと考えてしまう現実も存在すると思っています。

それって比較対象がないから、仕方がないとも思うんです。中華を食べたり洋食を食べたりする中で、和食の良さに気づいていくというか。

だから、いったん外に出て戻って来る人がいるっていうのは、すごい意味があることだと思っています。当たり前だと思っている北海道の事柄、仕事もそうだし、食べ物だって、暮らしのひとつひとつに対して、「もっといいものもあるよ」とか「もっとこうしたらいいんじゃないか」と考えられるのは、比較できる対象があるからこそ。ずっと中にいるのが悪いっていうわけではないですけど、外の風を入れる人の存在が大切だなと思うんです。

1人との出会いで人生が変わることもある

北海道Likers編集部:カフェ&バー『大人座』も、外のことや自分と違う人のことを知るといった意味でつくられているんですか。

大人座

出典: 大人座

五十嵐さん:個人的には、札幌にいると、異業種の人、違う世代の人などバックボーンが異なるような人との、横のつながりがあまりないような気がしています。そもそも起業する人やフリーランス人口も多くないですし。だから、いろいろな人が集まり、化学反応が起こる場所をつくりたかったんです。

コロナ禍前は、週2~3くらいのペースで、イベントを開催していました。イベントごとに色んな人が出入りして、新たな出会いができるように。まだ1年たってないですけど、だんだんと面白がってくださる方々が増えてきています。

ほっとけないどう

北海道の挑戦を応援するプロジェクト「ほっとけないどう」のイベントの様子

場づくりにおいて、来る理由をつくることはすごく大事だと思っています。自分もなかなか行かないじゃないですか。なんか面白そうだなと思っても、なんか知らない店だしちょっとハードル高いなとか。

だから色んな人が来るキッカケになるようにと多種多様なイベントを開催しています。真面目なビジネス系のもあれば、猫好きが集まるイベントもあれば、合コンもあれば……もう、ぐっちゃぐちゃですからね(笑)

でも、1つの出会いで、結構変わるものってあるじゃないですか。こんなことしてる人がいるんだと知るだけでもいいですし、飲み仲間が増えたり、仕事につながったり……これはリアルだからこそできる部分かなと思っています。

「生き物らしい環境」を考え直すタイミング

北海道Likers編集部:アフターコロナの社会に、北海道ではどのようなことが起こると思いますか。

五十嵐さん:“生き物らしい環境”の意味を再び考え直すのかなと思っています。オンラインの便利さと同時に、オフラインの価値は改めてみんな感じる部分だと思うんですよね。暮らしを見つめ直すというか。家族といる時間が増えるとか、会社に行かなくてもいいかもって気づくとか。その中で、資本主義のど真ん中東京のビル街に住むことへの疑問や、改めて自分が何をやりたかったのかを考えられるタイミングではある。

僕自身は暮らす場所としては、東京じゃなくてよいと思っています。大学に行って数か月ぐらいで同級生と集まったときに、誰かが「俺、最近鼻毛が伸びるの早くてさ」と言い出して。「そうそうそう」みたいになったんですけど(笑)

やっぱり体は気づいているわけじゃないですか。たとえば、家族がいたり子どもがいたりした場合「あれ?」みたいな。「ここ(東京)どうなんだろうな」と感じたときに、自然がたくさんあって、色んな食べ物の生産地が何でも揃っている北海道は、移住先のひとつの有力な選択肢になり得るんじゃないかなと個人的には思っています。

北海道Likers編集部:そんな中で、五十嵐さんが何かチャレンジしたいことはありますか?

五十嵐さん:周りの人がハッピーに暮らせる社会を作りたいっていう漠然としてもありますけど、長期的に定めた具体的なビジョンに基づいて行動しているわけではなくて。今、目の前にあるものや人が、どうすれば面白くなるか、ハッピーになるかを日々考えて、とりあえず実行していく中で、いろいろなことが生まれている感覚です。

移住ドラフト会議

北海道に住みたい人と、人材を求める地域をマッチングさせる「北海道移住ドラフト会議」の様子

今、結構すごいスピードで、色んなこと起きているんですよね。なんでそんなに生き急いでるかのように仕掛けているんだろうなって思いつつやってますけど(笑)

でも、クリエイトする人達がもっと増えて、それに刺激を受けるさらに若いやつらがどんどん増えたらいいですよね。「あのおっさん達よりもっと面白いことやろうぜ」みたいなやつらが出てきたらいいなと思ってます。

 

北海道Likers編集部:最後に北海道への想いを聞かせてください。

五十嵐さん:大好きな地元なんですよね。ここに生まれたのは偶然かもしれないですけど、そうやって生まれた島がすごい自分にとって心地よくて好きだなって。傍目に見ても、色んな魅力がある場所だなと思いますし。「もったいない!」「もっとできる」、「こんなことやりたい」ということがたくさんある。だからこそ動かずにはいられないんです。

―――ゆるく見えて、ゆるくない。強い信念をもち、時代や環境にあわせて柔軟に進化し続ける五十嵐さんのお話から、これからの働き方の可能性を感じました。「大人になりたい。でもなりたくない」そんな矛盾とワクワクを抱えた“大人”の姿は、未来を背負う若者たちの希望になるはずです。