小樽に行くなら寄らないと!鉄道好きにはたまらない、140年の歴史を伝える「小樽市総合博物館」
美しい運河が有名な小樽は、実は北海道鉄道発祥の地がある街でもあります。「小樽市総合博物館 本館」では、北海道の鉄道史や、科学に関する展示を見ることができます。とくに鉄道に関する資料が豊富で、約50両もの車両が展示されているほか、動態保存の蒸気機関車『アイアンホース号』に乗車することもできました。
学芸員の佐藤卓司さんに見どころを案内していただきました。
北海道の鉄道発祥の地にある「小樽市総合博物館」
「小樽市総合博物館」は、旧小樽交通記念館跡地に小樽市博物館・小樽市青少年科学技術館の機能を統合し、2007(平成19)年7月14日に開館しました。
博物館は北海道の鉄道発祥の地といわれる旧手宮線・手宮駅構内跡地に建設されており、明治時代に建設された機関車庫や北海道鉄道開通起点をあらわす“0マイル標”があるなど、鉄道の歴史を今に伝えています。
日本初の鉄道開業からわずか8年後に北海道に鉄道が完成
日本初の鉄道として、1872(明治5)年10月14日に、新橋駅(のちの汐留駅)~横浜駅(現:桜木町駅)が開通しました。それから8年後の1880(明治13)年11月28日に、石炭輸送を目的とした官営幌内鉄道の手宮~札幌間が開通しています。
手宮駅構内には桟橋があり、そこから本州に向けて石炭が運ばれていました。当時は重機もなければ鉄道の技術も確立されていません。生い茂る原生林を切り開いていくなど、想像を絶する大工事だったようです。
今も大切にされている手宮線跡
手宮線は1962(昭和37)年の旅客営業廃止から長らく貨物専用線として利用されていましたが、輸送量の減少によって1985(昭和60)年11月5日に廃止されました。その後も功績が称えられ、廃線跡は散策路として整備されています。
手宮から始まる小樽の鉄道は時代と共に変化しています。鉄道展示室では、プロジェクションマッピングで小樽の鉄道の移り変わりを見ることができます。
開拓時代を駆け抜けた「しづか号」
館内に入ると1885(明治18)年から北海道を走っていた『しづか号(7106号機)』に迎えられます。アメリカのH.K.ポーター社によって作られた蒸気機関車で、ダイヤモンド型の煙突や、カウキャッチャーと呼ばれる前方の障害物除けが特徴です。非力ではあるものの、小さな車体で開拓当時の鉄道を支えていました。
113年の時を超えて走る「アイアンホース号」
本館屋外展示場では『アイアンホース号(Porter4514)』が、中央駅と手宮駅の間を1日3回往復しています(4月末~10月中旬。2022年度の運行は終了、2023年4月下旬から再開予定)。
『アイアンホース号』は1909(明治42)年にH.K.ポーター社で製造され、中米のグアテマラのフルーツ農場やアメリカ各地で稼働していました。北海道最初の鉄道で輸入された『義経号』や『しづか号』と同じ製造会社の機関車が、再びアメリカから小樽港に陸揚げされ現役で活躍しています。
もともとは石炭で動いていましたが、途中で改造され重油を燃料として蒸気を作り、その力で走行します。ボイラーに点火してから蒸気圧が上がって走行できるようになるまで約2時間もかかるそう。2017(平成29)年にはボイラーが故障し、運行が危ぶまれましたが、クラウドファンディングで修理資金が集まり、翌年に復活しました。
転車台の動きに注目!
蒸気機関車が客車をけん引する場合、進行方向によって向きを変える必要があります。転車台は大友式けん引装置を使用して回転します。しゃくとり虫のようなユーモラスな動きに注目です!
汽笛が鳴り響き、力強く進んでいきます。113年も前に製造された機関車が現在も人々を楽しませていることに感動を覚えました。
バリアフリーで車椅子でも楽しめる
今回は諸事情により車椅子での取材でした。博物館内外各所に緩やかなスロープがあり、移動はとてもスムーズ。『アイアンホース号』も客車内に車椅子専用エリアがあり、気持ちよく乗車できました。
見るものすべてが重要文化財級
レンガ造りの「機関車庫第三号」は、1885(明治18)年に建造された現存する日本最古の機関車庫で、国の重要文化財です。
日本で2番目に作られた国産機関車『大勝号』(1895年製造)、ローカル線で使用されたレールバス『キハ03』(1956年製造)、『第一号除雪車』のレプリカなどが格納されていました。
『アイアンホース号』は在来線よりも狭い914mmのレール幅が採用されています。機関庫にはいずれにも対応できるよう3本の線路が敷かれていました。
機関庫には蒸気機関車の煙を外に逃がすための煙突も。展示物をていねいに見ていくことで、当時の工夫を発見する楽しみがありますよ。
ボランティアさんの手によって美しく蘇る車両たち
屋外の展示車両は雨や潮風の影響を受けて傷みやすいものですが、『C12形 6号機関車』はボランティアさんのおかげで誇らしいほどピカピカ。小樽や鉄道を愛する人たちによって、貴重な車両が保存されていることが伝わりました。
佐藤学芸員おすすめ!究極の展示室
「蒸気機関資料館」は、マニアックな鉄道ファンに立ち寄ってもらいたい場所です。危険品庫だった建物に、機関区の整備・点検で使われた工具や、蒸気機関車の部品が展示されています。
旧国鉄・苗穂工場で技術検修のために作られた『D51形』も展示しています。ホンモノと同じ機能を持ち、かつては「ミニSL」として人を乗せて走ったこともありました。整備をすれば走らせることは可能だそうですが、それには『アイアンホース号』と同じくらい手間暇がかかるそう。今はひっそりと体を休めています。
整備などに使われていた工具のほとんどがハンドメイドで、正式な名前すら付けられていません。なかには桜の模様があしらわれた芸術的な工具も! 職人の技術力と粋を感じました。
ミュージアムショップでは北海道の鉄道史と博物館の鉄道車両を解説した『小樽市総合博物館公式ガイドブック』を販売しています。入館前に購入して、ガイド片手に博物館を歩いてくださいね。
<施設情報>
■小樽市総合博物館 本館
■住所:北海道小樽市手宮1丁目3番6号
⇒開館時間など詳細はこちら
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