博物館正面

北海道初の監獄。建設の理由とは…リアルな囚人の生活がわかる「月形樺戸博物館」【日本遺産「炭鉄港」・月形編】

2022.04.23

『炭鉄港』は、近代の北海道を築く基となった三都(空知・室蘭・小樽)を、石炭・鉄鋼・港湾・鉄道というテーマで結んだ産業革命の物語。室蘭市、赤平市、美唄市、栗山町とご紹介してきましたが、今回ピックアップするのは、空知エリアの中西部にある月形町です。

月形町の炭鉄港構成文化財「旧樺戸集治監本庁舎」

月形町で日本遺産『炭鉄港』の構成文化財に指定されているのは、月形樺戸博物館内にある『旧樺戸集治監本庁舎』です。本庁舎は1881(明治14)年に開庁しましたが、火事で1886(明治19)年に消失。その後すぐに再建されたのが現在の建物で、位置は変わっていないそう。

樺戸集治監は国内では3番目、北海道では最初に作られた集治監です。集治監とは明治時代に設置された囚人を収容する施設のこと(集治監はのちに監獄の名称に変更)。

1919(大正8)年に監獄としての役目が終わったあと、1972(昭和47)年まで月形村・月形町役場として使われていました。長い歴史を感じられるのがこの石段。札幌軟石が使われているのですが、人の出入りによって真ん中がすり減っています。

1973(昭和48)年より『北海道行刑資料館』として一般公開が始まり、1996(平成8)年には現行の『月形樺戸博物館』に。2012(平成24)年に展示を改修してリニューアルオープンしました。

こちらの博物館は『旧樺戸集治監本庁舎』以外に、『博物館本館』、『農業研修館』の3施設で構成。月形町に集治監が作られた経緯や典獄(集治監の長)になった人物とその功績、囚人たちの生活の様子などを数多くの貴重な資料・展示品から学ぶことができます。

北海道初の集治監が月形町に建てられたわけ

明治時代初期、政府に反発する数多くの国事犯を収容する集治監が各地に作られていました。その中で、道内最初の集治監が”月形町”に作られたのはどうしてだったのでしょうか。

当時、北海道ではロシアが南下し、侵攻を行おうという動きがありました。日本の領土を守るために未開の地であった北海道を開拓し、攻撃に備えるのが急務でしたが、それには多くの人が必要となります。

そこで、囚人たちを労働者として働かせるため、北海道に集治監を建設する計画が立てられました。候補地はいくつかありましたが、石狩川が流れ地形的に脱獄が難しいという観点で、まずは樺戸集治監から建設されることになったそうです。

『旧樺戸集治監本庁舎』では、樺戸集治監が建設された当時の時代背景や集治監の様子などが紹介されています。模型でも確認できましたが、敷地内に醤油の醸造所や煉瓦工場などもあったそう。

集治監・監獄のようすがわかる展示も。こちらは札幌刑務所女区で実際に使われていた独居房。1973年に舎房が解体されることとなったため、移築して展示されています。

人気コミック『ゴールデンカムイ』に登場している一斉開房装置(非常時や災害時、20房の扉が一斉に開く装置)は、この展示物がモデルになっているそうです!

博物館本館の展示資料から学ぶ開拓の歴史

『博物館本館』では、歴代の典獄や看守、囚人たちの生活や労働の様子などが紹介されています。

初代典獄となったのは月形潔(きよし)。のちに樺戸集治監のある場所が月形村・月形町となる由来には、彼の残した大きな功績があると言われています。

樺戸集治監に収容された囚人たちは道外からやってきていたため、北海道の寒さや過酷な労働で亡くなった人が多かったそう。 そのような囚人たちを供養するため、樺戸集治監では1人ひとり戒名をつけて囚人墓地に埋葬していました。亡くなった1,046人のうち、現在も1,022人がここに眠っています(博物館敷地外)。

そんな過酷な環境のなか、囚人は道路整備や屯田兵屋の建設など、外役の仕事を行っていました(のちに外役が廃止となり、内役中心に)。

こちらのジオラマは峰延(みねのぶ)道路の建設の様子を再現したもの。樺戸集治監と空知集治監を結ぶ道路で、土地を耕し、トドマツなどの丸太を敷くなど工程がわかりやすく表されています。

現在、直線道路の距離が日本一の国道12号線も樺戸集治監や空知集治監の囚人たちによって作られた道路です。

囚人たちを別の集治監へ移す際に被る編笠や手錠など、集治監ならではの展示物もありました。

 

道内最初の集治監であり、北海道発展の礎となる道路を建設した囚人が収容されていたことから、北海道の原点ともいえる樺戸集治監。他では見ることのできない貴重な資料や今回ご紹介できなかった展示も数多くあります。ぜひ北海道開拓の歴史を『月形樺戸博物館』で学んでみてください!

<施設情報>
■施設名:月形樺戸博物館
■住所:北海道樺戸郡月形町1219番地(月形町役場敷地内)
■電話番号:0126-53-2399
■開館時間:9時30分~17時(入館受付は16時30分まで)
■定休日:12月1日~3月19日
■入館料:一般300円、高校生・大学生150円、小学生・中学生100円
■ホームページ:http://www.town.tsukigata.hokkaido.jp/5516.htm

【参考】月形樺戸博物館ホームページ/月形町公式サイト

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