夢を叶えるため帯広へ。「挑戦者を応援してくれる場所」騎手を目指す角田厩務員に聞く

2022.08.30

競走馬の世話を行う仕事、厩務員。日々の運動や餌やり、体の手入れなどを行うことで、競走馬のパフォーマンスを支えています。世界で唯一帯広市のみで開催されているばんえい競馬でも、大きなばん馬を様々な面で支える厩務員が活躍しています。

今回お話を伺ったのは、ばんえい競馬山本厩舎の厩務員・角田峻也さん。騎手や調教師と比べて知られていない部分も多い厩務員の仕事とやりがい、将来の夢を伺いました。

角田峻也(つのだ・たかや)。1995年生まれ、神奈川県出身。大井競馬場、浦和競馬場の厩務員などを経て、2021年5月からばんえい競馬所属。現在は山本厩舎の厩務員。

ばんえい競馬の未来をつくる人

夢を叶えられる場所は、ばんえい競馬だった

北海道Likersライター早羽太:厩務員としてばんえい競馬山本厩舎で働き始めたきっかけを教えてください。

角田厩務員

今回の取材はオンラインで行いました。 出典: 北海道Likers

角田さん:元々競馬が好きだったので、馬に関わりたいという思いで大井競馬場や浦和競馬場で厩務員として働いていました。一度その仕事から離れたときに、改めて馬と関わる仕事の魅力に気づき、一度も触ったことが無かったばんえい競馬に挑戦してみようと思ったのがきっかけです。最初は小林長吉調教師のもとで働いていたのですが、競馬場の食堂で山本正彦先生に直接お誘いをいただき、今は山本厩舎で働いています。

北海道Likersライター早羽太:もう一度馬の仕事を、と考えたときに、新しくばん馬に挑戦しようと思ったのはなぜですか?

角田さん:騎手になりたかったからです。高校時代は乗馬クラブに通い、卒業後は厩務員として働きながら騎手を目指していましたが、年齢制限や体重制限の壁に突き当たりました。

騎手の夢を諦めかけていた頃、偶然ばんえい競馬の谷厩舎で子馬が産まれたニュースを目にしました。何気なくばんえい競馬について調べていたら、騎手の年齢制限が無く体重制限も比較的緩やかなため、自分でも騎手試験を受けられるということを知りました。それで、帯広に来ることを決意したんです。

意外と知られていない厩務員という仕事

北海道Likersライター早羽太:厩務員としての一日の流れを教えてください。

角田さん:毎日朝3時半に起きて、4時から1頭目の運動を始めます。手入れと馬房掃除を済ませたら2頭目の運動へ。これを4頭分行っています。8時半から9時半頃に朝の作業が終わり、あとは12時頃と20時頃に餌やりがあります。レースがある日でも流れはあまり変わりませんが、装鞍所*に行く時間が指定されているので、それに合わせて軽い運動や手入れを行います。

*装鞍所(そうあんじょ)・・・出走馬の馬体や蹄鉄の検査、馬体重を測定し健康状態の確認、レースでソリを曳くための馬具を装着するところ

北海道Likersライター早羽太:厩務員として働く中で感じるやりがいや面白さはありますか?

角田さん:担当馬がレースで勝った時には、特にやりがいを感じます。無事に厩舎に帰ってくるだけでもホッとしますが、勝ってくれると喜びも倍増です。

基本的に毎日同じ馬を触りますが、日によって感覚が全然違います。これは生き物相手の仕事ならではの面白さだと思いますし、新しい発見も多くて新鮮です。たとえば今の暑い時期には馬に無理をさせないように、様子を見て曳くソリを軽くするといった調整をしています。

北海道Likersライター早羽太:担当馬の中で、ファンの方々に注目して欲しい馬を教えてください。

角田さん:担当馬4頭とも凄く頑張ってくれているので1頭というのは難しいですが……挙げるならばカイセイビクトリーという馬です。

カイセイビクトリー号

カイセイビクトリー(右) 出典: ばんえい十勝

山本厩舎での初勝利をくれた馬で、自分がケガから復帰したときも最初にコンビを組んでくれました。一緒にいた時間が一番長いと思いますし、思い入れがあります。牝馬ですが、レースでも大きく崩れることは無く、いつも頑張ってゴールまで歩いてくれるので、本当に頭が下がる思いです。

角田さんとカイセイビクトリー

角田さんとカイセイビクトリー(中央) 出典: ばんえい十勝

今も変わらぬ夢とその先

北海道Likersライター早羽太:今後やってみたいこと、夢を教えてください。

角田さん:帯広競馬場に来た理由でもある騎手になって、神奈川にいる家族を喜ばせることです。自分は来年から騎手試験の受験資格を得られるので、立派な騎手になれるように頑張りたいです。

帯広競馬場内には騎手を目指している人が何人もいるので刺激になりますし、山本先生が過去問をくれたり、松田道明騎手が毎週勉強を教えてくれたりと、たくさんの方々が色々なサポートをしてくださるので感謝しています。勉強に限らず、厩舎の垣根を越えてみんなの仲が良く、親しみやすい競馬場で良かったと感じます。

北海道Likersライター早羽太:憧れの騎手や、勝ちたいレースはありますか?

昨年度のばんえい記念優勝馬メジロゴーリキ

昨年度のばんえい記念優勝馬メジロゴーリキ 出典: ばんえい十勝

角田さん:騎手になることができた暁には、藤野俊一騎手のような騎手になりたいです。同じ厩舎なので仕事を間近で見ているのですが、1つ1つの作業が本当に丁寧ですし、レースではどの馬に乗っていても凄く格好いいです。藤野騎手のような、誰が見ても格好いいと思う騎手になりたいです。

勝ちたいレースはやはり、ばんえい競馬最高峰の『ばんえい記念』です。また以前サラブレッドに関わっていたので、ダービージョッキーへの憧れもあります。“ダービー”というタイトルも獲りたいです。

ーーーインタビュー中、丁寧に言葉を紡ぐ様子が印象的だった角田さん。「騎手になりたい」と話す口調や眼差しからは、とても熱い思いを感じました。騎手になるという夢を叶えて活躍する日を楽しみにしています。

連載「ばんえい競馬の未来をつくる人」では、ばんえい競馬で活躍する若者たちに迫ります。伝統文化を次の世代へつなげる彼・彼女たちの想いとは。連載記事一覧はこちらから。

【画像】ばんえい十勝

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