100年後を夢見て。まちづくりを担う私が旭川をこよなく愛する3つのこと【えびすけ株式会社・海老子川雄介】
「北海道には未来がある」そう力強く語るのは、“マーケティングとまちづくり”で社会に貢献するえびすけ株式会社の代表取締役、海老子川雄介さん。フリーペーパーの発行、カフェの経営、山林の管理など、バリエーション豊かな取り組みをされています。
そんな海老子川さんが感じる“北海道と旭川の魅力”とはどういったものなのでしょうか。
海老子川 雄介(えびしがわ・ゆうすけ) 1978年生まれ。新潟県出身。えびすけ株式会社代表取締役。父の転勤を機に北海道へ。就職を経て北海道旭川市に移住し18年。地域の食材や歴史、文化を発信する飲食店『福吉カフェ』を経営。2020年4月には、フリーペーパー『Fillmore』創刊。
私のHOKKAIDO LOVE! 1:厳しい自然環境が創意工夫を生む
北海道LikersライターTatsuya.K:旭川に住んで18年とのことですが、海老子川さんが感じる旭川の住み心地の良さはなんですか?
海老子川さん:四季の移ろいを感じながら生活できることです。日本全国どこでも住めば都だとは思いますが、旭川は自然と調和して生活するうえでとてもいい場所です。
冬になれば霜が降り、雪が降ってあたり一面真っ白な景色が広がります。除雪しなければ外へは出られないし、道内屈指の厳寒、豪雪地帯なので大変な面もありますが、DD(ディーディー。ダイヤモンドダストのこと)も見られますし。
北海道LikersライターTatsuya.K:ダイヤモンドダストを“DD”と略すんですね! 道産子の私でもダイヤモンドダストは珍しいという印象でした。旭川ではそれほど身近な現象だとは!
海老子川さん:そうですね。1~2月にはしょっちゅう見られますが、ちゃんと感動もします(笑) 自然現象の美しさはもちろん、北国の暮らしには、自然とともに暮らすからこそ味わえる魅力があります。常に“先々への備え”が求められますよね。
自然の厳しい環境下では、季節の移り変わりが激しいこともあり、先々を見据えて生活しなくてはなりません。例えば、冬の準備は秋のうちにしておかなければならないし、どうすれば冬を快適に過ごせるか、そのためにいつ何をしなければならないのかということを考えていないと生活できませんよね。そのおかげで漬物や乾物など家庭の保存食の文化も発達していると感じます。家庭でいくらの醤油漬けが作られていることなど本州では驚かれることも多いです。創意工夫して暮らすところは、北国の生活において価値のある部分だと思いますよ。
自然と対峙する生活を楽しめる一方、旭川はそこそこ都会なので食が豊富です。旭川市がある上川盆地は内陸に位置していますが、昔から物流の拠点となっているので、日本海、オホーツク海、太平洋の3つの海の幸や全道の農産物が集まります。素材だけでなく、醤油などの加工品や菓子メーカーなどの老舗が多いところも生活が楽しくなる要素ですね。
私のHOKKAIDO LOVE!2:これが旭川のすべて「雪と大雪山」
北海道LikersライターTatsuya.K:旭川の自然で遊ぶことはありますか?
海老子川さん:大地と一体になれるアクティビティが好きで山岳遊びやランニング、湖で泳いだり、SUP(サップ)などをしています。山遊びの時はたいてい大雪山エリアに出かけますね。林道でマウンテンバイクを走らせたり、写真撮ったり、絵を描いたりするのも好きです。幸せなことに、大雪山の魅力を伝える動画制作の仕事などをさせてもらっているので遊びと仕事の境目もあまりありません。どれも気持ちがよいので好きなことがどんどん増えていきます。
北海道LikersライターTatsuya.K:旭川といえば大雪山ですよね! 大雪山は海老子川さんにとってどんな存在でしょうか?
海老子川さん:このエリア最大の地域資源ですね。きれいな景色も、おいしい水も、産業もすべては“雪と大雪山”に起因していると思います。雪、そして大雪山があるから、全国のみならず世界から観光客やスキーヤー、スノーボーダーが集まるのだと確信しています。
また、良質な音楽や現代アート、カルチャーも地域資源のひとつです。旭川は“マウンテンシティリゾート”と銘打ってブランディングを進めていますが、こうした動きは山岳と都会の距離が近いからこそ、できることだと思います。
自然とカルチャーが混ざり合った旭川に惹かれて、プライベートで訪れる著名人や移住してくるアーティストや作家、クリエイターなどの文化人や学者もいますよ。
北海道LikersライターTatsuya.K:“雪と大雪山”の視点で旭川を見てみると今までは気がつかなかった魅力が見えてきそうです。旭川のなかでもとくにアツいエリアはありますか?
海老子川さん:旭川で今一番アツいのは“江丹別”ですかね。旭川の魅力である四季を一番感じられる場所だと思います。
まず、夏の気温がものすごく高いんです(2021年7月に38.4℃を記録)。しかしその一方で、冬にはマイナス30℃を下回るほど、極寒の地でもあります。寒暖差が約70℃ってすごいですよね。冬は雪が3mほど積もり、普通の道が迷路になるくらいをイメージしてもらえば伝わると思います(笑)
海老子川さん:江丹別は旭川郊外にある限界集落なのですが、10年前、江丹別出身の伊勢昇平さんが“ブルーチーズドリーマー”を名乗ってブルーチーズの製造を始めました。
伊勢さんは、“世界一のブルーチーズをつくること”と“江丹別を世界一の村にすること”を夢に掲げて本を書いたりもしていて。そんな彼の取り組みが浸透してきて、最近そこにカフェやパン屋さんなどお店が2店ほどできたんです。
北海道LikersライターTatsuya.K:限界集落に飲食店が! それってすごいことですよね。
<LOVE! 情報>
■店名:伊勢ファームショップ(カウ&カーフ)
■住所:北海道旭川市江丹別町拓北214
■電話番号:0166-73-2148
私のHOKKAIDO LOVE! 3:未来を見てワクワクできる体験
北海道LikersライターTatsuya.K:北海道ならではの体験でとくに好きなことやハマっていることはありますか?
海老子川さん:サラリーマン時代に当麻町(旭川の隣町)に3ヘクタールほどの山林を購入して山主になったんですが、これが面白くて。
初めの5年くらいは、春は山菜、秋はキノコを採って料理したり保存食を作っていました。チェンソーの扱いを覚えて間伐したりもしました。初めてトドマツを自分のチェーンソーで切り倒したときはめちゃくちゃ気持ちよかったです! 30~40年かけて成長した20~30mくらいの木に刃を入れて、倒す角度や運び出す方法などを考えながら倒していくんですが、それがとても楽しくて。木がメリメリという音を山に響かせながら倒れていく様子はスローモーションのようで、ズシーンと大地に横たわると強烈なマツの香り。自然への感謝の念を感じ、なんとも言えない感覚でした。
現在は当麻町の森林組合に加盟し、計画的に皆伐して植樹しました。30年かけて成長するトドマツ・カラマツ、成長に80~120年要するミズナラ。雑木といわれるシラカバも最近はニーズがあると知り合いの家具職人から聞き、あえて植えてみました。
植えた木を次に収穫するのは、自分の子どもか、さらにその下の代になるんです。自分の所有する山林で100年計画が立てられるって楽しいですよ(笑)
今年は植樹から7年目を迎え、成長にはまだまだ時間がかかりますが、ゆくゆくは大雪山を望む尾根にデッキを作ったり、家族と一緒にツリーハウスを作ったりしようと考えています。
北海道LikersライターTatsuya.K:今まで聞いたことのないような壮大なお話です。山林を所有し木を育て、遥か未来を夢見ることができるのは素敵ですね……!
最後に、海老子川さんが考える北海道の魅力を教えてください。
海老子川さん:北海道にはまだまだ足りないものがあって、だからこそ創意工夫が生まれる。生き残ろう、進化していこうという野心を持つ人が多くいる。それが魅力だと思います。
若い人たちを対象にした調査では「将来には希望がない」という回答が多いと報道で見ましたが、私は“北海道には未来がある”と思っています。100年後もこうして生活できる持続的な未来が見える土地。「天からの手紙」ともいわれている雪や豊富な水。ほかの場所と比べても無意味だけれど、北海道の未来は私たちの手にかかっているし、きっと明るいような気がします。
北海道はそんな夢のあふれる土地です。「道民はのんびりおとなしい」としばしばいわれますが、実は情熱家で野心家が多い、それが一番いいなと思います。
———木を育て100年後に思いをはせる。北海道に暮らし100年後を夢見る。海老子川さんが見つめるその目には、北海道の輝かしい未来が映っていました。あなたのHOKKAIDO LOVE! はどんなことですか? また、そこから見える未来はどんな景色ですか?
「HOKKAIDO LOVE! な人」とは:
日常のなかに潜んでいる“北海道が好き”という気持ちを深堀り、本当の北海道の魅力を再発見するインタビュー企画です。北海道に住む人ならきっとだれもが抱いたことがあるだろう「やっぱり北海道が好き」という感覚。きっとそこには、北海道でしか体験できないこと、北海道でしか堪能できない味、北海道でしか出会えなかった人……1人ひとりにそんな特別な存在があるはず。インタビューには北海道で活躍する“HOKKAIDO LOVE! ”な面々が揃います。あなたの“HOKKAIDO LOVE! ”はなんですか?
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