ヒグマ

北海道民なら知らないとまずい!? 専門家に聞いた「正しいヒグマの対処法」

2021.09.01

♪ある日森のなか クマさんに出会った 花咲く森のみち クマさんに出会った……

誰もが一度は聞いたことがあるであろう、この曲。でも、この歌詞を鵜呑みにしては大変なことに。なにもクマに出会うのは、“花咲く森のなか”に限った話ではないのですから。

たとえば2021年6月。札幌市東区の住宅街にヒグマが出没し、4人の負傷者が出る事件が起きました。札幌市の“住宅街”に出没、しかも負傷者も出たということでインパクトの大きい事件でした。このように定期的に人々を震撼させるヒグマ。近年は人との接触も増えている気がします。

今回は、日頃からヒグマへの対処法を発信しておられる「知床財団」の方に、ヒグマに遭遇したときどうすればよいのかを教えていただきました。

ヒグマ遭遇時の対処法

今回取材したのは、「公益財団法人 知床財団」。1988年に設立され、“環境教育や普及啓発、野生生物の保護管理・調査研究、森づくりなどを行ってきた”法人です。日頃からヒグマに関する情報発信をされており、ヒグマのことを聞くにはうってつけの存在です。

そんなプロがまずおっしゃったのが、そもそもヒグマに出会わないようにすることが最善の対処法だということ。ヒグマは国内最大の陸上生物で、山間部を中心に北海道全域に生息しており、大きなオスになると体重は400kgを超えるのだとか。したがって(住宅街に出てこられてはひとたまりもないですが)、安易な気持ちで山や森に入らないことが大事といえそうですね。

ヒグマ

出典: 知床財団

山や森のなかを歩くときには、声や音を出して、人の存在をヒグマに知らせるのが大事。音出しだけに頼らず、クマが草や枝を踏む音、臭いなど常に周囲に気を配ることも大切だそうです。

それでも遭遇してしまった場合は、ヒグマを刺激しないよう慌てず騒がず、ゆっくり距離をとりましょう。クマは視力があまり良くないため、こちらが人間だと気付かず近づいて来ることもあるそう。その際はこちらが人間だと知らせるために、大きく腕を振るなどして穏やかに声をかけましょう、とのこと。いざというときにこの行動を取れるようになるためにも、訓練などシミュレーションをしておきたいですね!

また、子グマに出会った場合は要注意。近くには必ず母グマがおり、子グマを守ろうと母グマが突進してくることもあるため、子グマには絶対に近づいてはいけないそうです。

ヒグマ対策はどうなっている?

ヒグマに遭遇した際にできることは限られます。事前にできるヒグマ対策にはどのようなものがあるのでしょうか?

まず、人とヒグマの生活域を分けようという取り組みがあります。生活域を分ける手段として、電気柵の設置がされています。「知床財団」では、電気柵の設置やメンテンスを行政から受託して行っているそうです。

ヒグマ 電気柵

出典: 知床財団

また、ヒグマは一度でも食べ物を食べると味をしめてしまうため、ヒグマが開けることができないヒグマ対策ゴミステーション『とれんベア』の開発・普及も進められています。見た目からもその頑丈さが伝わってきます。

とれんべあ

出典: 知床財団

さらに、ヒグマのことを正しく知ってもらうことも大事なクマ対策のひとつ。「知床財団」では、SNSでのクマ情報やマナー・ルールの普及啓発に注力したり、地元の学校でヒグマの生態や出会ったときの対処法を学んでもらうクマ授業を毎年実施したりしているそうです。

まずはヒグマを知ることから

今回「普段から心がけておくべきことは?」とお聞きしたところ、「ヒグマが暮らす森に私たち人間がお邪魔しているのだという気持ちを持ってください。近距離での遭遇を避けるために音や声で人の存在を前もってヒグマに知らせることが大事です」とお答えいただきました。とにかく事前準備が大事になってくるようです。

ヒグマ

出典: 知床財団

そんな準備の際に知っておきたいのが、ヒグマ対策グッズ。音を出すグッズとして、クマ鈴が多く携帯されているのはご存じの方も多いでしょう。また、ヒグマの人への接近がとまらず逃げ場もないという最終手段として、ヒグマ撃退スプレーが用いられることもあります。どちらも用意しておきたいところですね。

モノの準備と同時に心や知識の準備も必要です。ヒグマを知るうえで役立つ情報源をご紹介いただきました。

・知床のひぐま(https://brownbear.shiretoko.or.jp/)

・知床財団(ヒグマ対処法)(https://www.shiretoko.or.jp/library/bear/)

・絵本『しれとこのきょうだいひぐま ヌプとカナのおはなし』(現在在庫切れ中。9月下旬に改訂版が発売予定)

・札幌市ヒグマ出没情報(https://www.city.sapporo.jp/kurashi/animal/choju/kuma/syutsubotsu/index.html)こちらは筆者が選びました。札幌市近郊にお住まいの方はチェックしておいて損はないでしょう。

 

いつどこでヒグマと出会うかはわかりません。自分は大丈夫と高をくくらず、ヒグマを知ることからはじめてみませんか?

<法人情報>
■法人名:公益財団法人 知床財団
■住所:北海道斜里郡斜里町字岩宇別531番地
■電話番号:0152-24-2114
■HP:https://www.shiretoko.or.jp/

【参考・画像】公益財団法人 知床財団

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