回収作業の様子

世界自然遺産・知床の海を守る!北海道羅臼町が取り組む“海中ゴミ回収”の過酷な現実と新たな挑戦

流氷がもたらす豊かな栄養分を基礎に、多種多様な生き物が独自の生態系を築き上げている世界自然遺産・知床。

その自然の恵みと共生してきた北海道羅臼町は、2026年3月に『羅臼町ネイチャーポジティブ宣言』を発出し、豊かな自然環境を未来へ引き継ぐための決意を新たにしました。その象徴的な取り組みとして現在注目を集めているのが、官民一体となって進められている『海中ゴミ回収事業』です。

美しい海の底で、生き物たちの命を脅かしている“ゴーストフィッシング”の現実とは? そして、回収活動をダイビングツアーへと昇華させる新しい環境保全の形について、最前線で活動する人々の声とともに詳しくご紹介します。

知床の海を脅かす“ゴーストフィッシング”の悲しい現実

羅臼の海
画像:羅臼町役場

知床の海は、年間を通じて水温変化が20度以上と非常に大きく、季節ごとに多種多様な生物が姿を現します。また、シロザケやカラフトマスが川を遡上することで海から陸へと栄養が還元される、海と陸が深く繋がった奇跡のような環境です。

しかし、その豊かな海中では、時化(しけ)や流氷などの影響でやむを得ず流出してしまった漁網やロープといったゴミが大きな問題となっています。

漁網に絡まったエゾメバル
画像:羅臼町役場

これら海中に放棄された漁網は、意図せず海の生物を絡め取り、死に至らしめる“ゴーストフィッシング(幽霊漁業)”を引き起こします。実際の回収現場でも、ウニ類やカニ類、ギンポ類などが網に絡まって死んでいる姿や、さらには小魚を狙って潜ってきた鳥類が網に絡まり溺死している痛ましい状況が確認されています。海中ゴミは海草の生育を阻害し、巡り巡って漁業や私たち人間の生活にも悪影響を及ぼしているのです。

2013年から地道な活動を続ける、町内唯一のダイビング事業者

回収作業の様子
画像:羅臼町役場

こうした海中の異変にいち早く気づき、行動を起こしていたのが、羅臼町で唯一のダイビング事業者である『有限会社知床ダイビング企画』です。同社は、陸上からは見えない“海中の環境問題”への危機感から、2013年頃から業務の合間を縫ってボランティアでのゴミ回収を地道に続けてきました。

今回の羅臼町の海中ゴミ回収事業は、同社が長年培ってきた潜水技術と実績を最大限に活かし、町と強固に連携する形で実現しました。海底の状況を熟知したプロのダイバーだからこそ可能な、安全かつ効果的な回収作業が行われています。

産官連携の力!16回の潜水で1,276kgのゴミを回収

羅臼漁業協同組合の協力による回収
画像:羅臼町役場

2025年度の事業は、『エア・ウォーター北海道株式会社』の寄付事業『ふるさと応援Hプログラム』を通じた『エア・ウォーター・ライフソリューション株式会社』からの寄付金を活用して実施されました。

2025年6月から11月にかけて合計16回の回収作業が行われ、3名のダイバーが手作業で引き揚げたゴミの総重量はなんと計1,276kg! 松法漁港(934kg)をはじめ、知円別漁港、ルサ川河口、瀬石、相泊漁港など町内各地で実施され、その大部分が刺網やロープといった漁業系のゴミでした。

また、人力では引き揚げられない大型のゴミについては、羅臼漁業協同組合の指導船が協力して回収にあたるなど、まさに地域と企業が一体となった取り組みとなっています。

「また参加したい!」観光客を巻き込む新たなサステナブルツアーへ

海中ゴミの回収
画像:羅臼町役場

この事業が画期的なのは、ただ業者がゴミを拾うだけでなく、北海道内外から訪れたダイビングツアーの一般参加者にも回収作業を手伝ってもらった点にあります。

参加したダイバーからは、「普段見ることのない海中ゴミのリアルな状況を見て、環境問題への意識を改めた」「また同じような作業に参加したい」といった、意識の変化を伴う前向きな声が多く寄せられました。

羅臼町と知床ダイビング企画は今後、この回収作業を“ダイビングツアー化”することで、観光と環境保全を両立させた継続的な仕組みづくりを目指しています。

北海道Likers編集部のひとこと

私たちが美味しい海産物をいただき、美しい景色を楽しめるのは、こうした見えない場所での地道な環境保全活動があってこそ。

“自然を楽しむこと”と“自然を守ること”がひとつになった羅臼町の新しいダイビングツアーは、これからの観光のあり方を示す素晴らしいモデルケースです。

知床の海を訪れた際は、ぜひその美しい水中世界を堪能するとともに、豊かな海を守る活動にも想いを馳せてみてください。

文/北海道Likers 画像・参考/羅臼町役場
※この記事はリリース時点の情報です。最新の情報は各店舗・施設にお問い合わせください。

 

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