
【故郷が好きでUターン】家族3人で再スタート! 変わらず愛される宿を目指して(富良野町)
今年で創業30年を迎えられた『ふらのの丘』は、北海道上富良野町の丘の上に建ち、ご家族で大事に育まれてきた宿です。
コロナ禍での苦悩を乗り越え、2023年からは息子の芝田星一郎さんが加わり再スタート。スープカレーのランチ営業も始まり、忙しい日々が続いています。
この宿を支える芝田星一郎さんに、お話を伺いました。
離れて気付いた富良野の良さ

芝田さんは、生まれも育ちも富良野です。今でこそ、こんなにも住みやすい場所はないと語りますが、小さい頃は都会の憧れも強かったそう。高校卒業後には生まれ育った富良野を離れ、愛知県の大学に進学されました。
「最初は向こうにずっと住み着くものだと思っていたんですけど、都会の生活になかなか馴染めなくて……とはいっても6年間もいましたが、やっぱり富良野が好きで戻ってきました」
カメラが趣味だという芝田さん。富良野の風景にはどうしても惹かれてしまうそう。

「僕は富良野の生活に、不便を感じたことが一切ないんです。久しぶりに富良野に帰ってくると、なんて住みやすいところなんだろうと思いました。これだけ自然豊かな所も、日本中探してもあまりないのではと思っていて。富良野の風景は見飽きないですね」
しかし、芝田さんはまた富良野を離れざるを得ない事態に……。

「コロナ禍になり2020年頃からパタっとお客様が減りました。家族経営のため、3人分の収入を確保することが難しくなり、外で働くことを決めたんです」
他の街で会社勤めをしていた芝田さんですが、再び富良野へとUターン。このとき、本格的に自分の代としてこの宿を受け継いでいきたいと決意したそうです。
そのタイミングで屋号を『コスモスファーム』から『ふらのの丘』に変更されました。
2本の柱で新たなスタート

屋号を改めたのち、ほどなくして宿泊業に加え、飲食事業もスタート。水曜・木曜以外の週5日、ランチ営業でスープカレーを提供されています。
「宿泊のお客様から『どこかスープカレーを食べられるお店はないの?』と聞かれることが多く、需要があるのは感じていました。コロナ禍で収入がゼロになった経験から、宿泊業一本では厳しいと痛感し、もうひとつの柱としてランチ営業を始めました」
ご両親がこれまで宿泊者向けに食事を提供していたこともあり、料理には自信があったそう。
「もちろん試行錯誤しました。3人であちこち食べ歩いて研究もしましたし、今でも定期的に自分たちで味見しています。毎回、“今が一番おいしい”と思うものを出していますが、常に改良しているので、年に何度も味が変わっていると思います。他のお店にも足を運び、常に刺激を受けるようにしています」

また、10時のチェックアウト後から、12時のランチ営業までの2時間で客室の清掃を終えるため、毎日が慌ただしいといいます。ランチ営業がない日も、芝生の管理や普段手が回らない場所の整備などがあり、なかなか自分の時間が取れないのだとか。
「閑散期にはお休みを取り、車で青森から九州まで日本縦断の旅をしました。両親は別ルートで、フェリーを使っての旅でした。こういった時間があるから、夏は休みなしでも頑張れるんです」
揺るぎない想い

2024年度、富良野を訪れた外国人観光客は年間約31万人。10年前の約2.5倍に増えていますが、この宿に宿泊する外国人は、いまも全体の1割に満たないそうです。
「インバウンドに左右されない宿にしたいと考えています。夏は国内の予約サイト、冬は外国人利用が多い民泊系サイトと、使い分けています。ここを気に入ってくださる日本の方に、変わらず気持ちよく利用してもらえる宿でありたいと思っています」
今後の展望に関しても伺いました。
「ずっと3人だけで続けるのは難しいと思っていて、いずれは人を雇うか、規模を広げるか、何らかのシフトチェンジが必要になるとは感じています」
時代やニーズを冷静に捉えつつも、芝田さんの言葉には揺るぎない信念がにじみます。
「できるだけ“両親にストレスをかけない”ことを意識しています。両親はコロナ禍以前から少しずつ事業を縮小していたのですが、僕が戻ってきてランチ営業を始め、また少し広げる方向に動きました。今はだいぶ忙しくなってしまいましたけど……(笑)。30年かけて両親が築いてきたこの宿を、大切にしていきたいと思っています」

この宿の居心地のよさに惹かれ、何十年も通い続けるリピーターも少なくないといいます。
「たとえばテーブルひとつにしても、新しくて立派なものを取り入れるのではなく、これまで両親がしてきたように、できるだけ自分たちの手で手をかけていきたいんです。ここを“好き”でいてくれるお客様が、これからも変わらずそう感じてくれる場所でありたいと思っています」
詳細情報
ふらのの丘
住所:北海道空知郡上富良野町西2線北28号
電話番号:0167-45-4995
チェックイン:16:00~/チェックアウト:~10:00
料金:素泊まり 6,200円〜/朝食付き 7,200円〜
※価格は時期、部屋により異なります
北海道Likersライターのひとこと
実際に宿泊してみて、リピーターの方のお気持ちと、芝田さんご家族が大事に手をかけ育まれてきた様子が手に取るように感じることができました。
読者のみなさんにも、あたたかくて心落ちつく空間を味わってみてほしいです。
取材・撮影・文/佐藤絵理
画像提供/ふらのの丘
※この記事は取材時点の情報です。最新の情報は各店舗・施設にお問い合わせください。
※文中の価格はすべて税込みです。
